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3-11 状況は分かった、そして僕の提案

 ともかく、“虹色の綿毛”は借金返済を迫られた。しかし、彼女らには短期間で大金を稼ぐあては無い。そんな3人にベーラゼ男爵は「借金は棒引きにしてやる。そのかわり、ミアリーは儂の妾になってもらう」的なことを言い放ったらしい。


 いやあ、ベーラゼ男爵ってのは本物のクズだな。正直、僕はこいつが色々クズ過ぎてちょっと引いている。どこの薄い本だ。エロい気持ちだけは僕と似ていたとしても、僕にはこんな下種(げす)な言動はとてもできない。というか、したくない。


 ただ、法律的には“虹色の綿毛”は難しい立場にあるのは事実だ。このまま借金を返せなければ、奴隷落ちになってしまうらしい。やっぱりこの世界にはあるんだな、奴隷制度。


 奴隷になるか、嫌な奴の妾になるか。究極の2択って感じだ。話していたミアリーも、他人に自分の現状を話すことで、状況の大変さを自覚してきたのか、だんだんうつむいて小さな声で話すようになっていった。


 「私がちゃんと、もっとしっかり考えられていたらよかったんですが…」


 「そ、そんなことないよ。僕もこの間、ポカして怪我しちゃったし、ミアリーの責任とかじゃないから!」


 そんな2人を見て、フウコが「えらい! 困っているのに人のせいにしなくて2人ともえらいねえ!」と言った。まあ確かに、こんな状況なら、人のせいにしそうなもんだもんな。


 だけど、いい人だから全てが許されるということでもない。借金は必ず返さなければならない。それは、元の世界でもこの世界でもきっと同じだろう。そして、僕のことをチビと言うようなチンピラを手下にしているベーラゼ男爵が下種なクズであることに疑いの余地はないのだが、彼が借金の貸主である以上は返済を迫ること自体は違法なことではないはずだ。


 まあ、つまり、“虹色の綿毛”にも非はあるというか、厳しいことを言うと、冒険者になった以上、こういう事態にも本当は自分で対処できなきゃいけないんだろうな。とはいうものの、せっかく相談してくれているんだし、なんとかできるものならしてやりたいものだけどな。とりあえず、3人の考えを聞いてみようか。


 「じゃあ、状況は分かったから、何ができるか一緒に考えてみよう。最初に一応確認するんだけど、君たちには状況を打開できるアイデアは無いということでいいんだよね?」


 僕がそういうと、みんなが下を向いた。しばらくの沈黙、その後、これまで黙っていたリヨーナが、首から下げた魔道具を持って言った。


 「こうなったら、この魔道具を売って…」


 「それは駄目だよ、リヨーナちゃん!」「そうよ。私の責任なんだから、リヨーナがかぶる事じゃないのよ」「でも、私だって“虹色の綿毛”のメンバーです。お2人にはよくしてもらいましたし、助けようとするのは当然です!」


 フウコがまた感動して、「これが仲間… 大丈夫、心配しなくてもいいんだよ、ケースケがなんとかしてくれるから」と言った。


 ちょっとフウコ、僕に丸投げなの!? と思いはしたけど、実は“虹色の綿毛”の困難な状況を打開するアイデアを思いついてはいる。“虹色の綿毛”を救うというか、僕にとっても都合がいい方法だ。いわゆるWin-Winというやつだな。


 ただ、果たして“虹色の綿毛”が乗ってくるかどうか。僕にとってもある意味では局面打開になりうるアイデアだから、うまいこと言って丸め込みたいものだけどな。


 …だめだ、良い言い回しを何も思いつかない。うーん、こういう時こそ、会社員時代に身に付けた交渉術を見せつけたいものだけどなあ。まあ、たいした交渉術は身に付けていなかったということかなあ。


 ちょっとへこみながらも、直接思ったことを言いうことにした。まあ、当たって砕けろだ。


 “虹色の綿毛”の3人は、まだリヨーナの魔道具を売るかどうかを言い合っていたが、しばらくしたら3人とも辛そうに押し黙った。よし、ここが僕の発言のタイミングだな。


 「じゃあさ、1つ打開策になりそうな案があるんだけど…」


 僕がそう話し出すと、3人は藁にもすがるような思いなのだろう、真剣な顔で僕の方を見た。その3人の期待に応えられる案かはわからないけど…


 「僕とパーティを組んでみない?」


 僕がそういうと、3人はびっくりした顔をした。そして一瞬の静寂。だがすぐにキッカが言った。


 「え!? 師匠、ほんとにいいの!?」


 「ちょっとキッカ! こういうことは慎重に考えなきゃ駄目よ!」


 キッカは断然乗り気っぽいが、ミアリーがすぐにそれを押しとどめた。フウコが「えー、フウコはいい考えだと思うけどなあ」って言っているけど、僕が思うに、キッカやフウコの方がもうちょっと慎重になった方がいい気がするけどな。


 それはともかく、僕にとってもせっかくのチャンスだ。話術でうまく丸め込むのが無理なら、せめて丁寧に誠実に自分の考えを説明しよう。


 「まず、僕はキッカの師匠じゃないからね。それから、ミアリーが慎重に考えろというのはもっともなことだと思う」


 「え、そうなの?」とキッカが言った。フウコもキッカと同じ表情を浮かべている。ほんと、この2人はなんかちょっと似てるよな。


 「なにしろ、君たちを(おとし)めようって奴はいても、本気で助けようって奴はいなかったんだろうからね。でも、それも仕方のない面もある。だって、君たちは冒険者なんだから、人に助けてもらうんじゃなくて、自分たちで状況を打開しないといけないよね」


 僕がそう言うと、ミアリーとリヨーナが唇をかんだ。厳しいことを言っているようだけど、誠実に話すって言うのは多分、物事の良い面しか言わないこととは違うんだろうしね。


 「だから、僕の提案も君たちの状況に同情したからっていう理由からじゃない。むしろ、僕にとっても価値のあることだと思うから話しているんだ。だから、冒険者として慎重に冷静に考えて判断するといいと思う」


 それを聞いて、リヨーナが顔を上げて言った。


 「でも、師匠には私たちとパーティを組んでどういうメリットがあるのですか? 師匠ぐらい強ければ、私たちの力なんて必要ないと思うのですけれど…」


 えっと、なんでリヨーナまで僕の事を師匠って呼ぶんだろう? もうあだ名みたいなもんなのかな? まあ、もう面倒だし、師匠呼びを否定するのは後回しにするか。


 「いや、メリットはあるよ。“虹色の綿毛”と組んだら、高いランクの依頼が受けられるんだよね?」


 「ええっと、師匠の冒険者ランクは何ランクでしたっけ?」


 「ん? Gランクだよ」


 「えええー! あんなに強いのに!?」


 そうキッカが叫んだ。


 「いやだって、前も話したと思うけど、僕は冒険者に成り立てなんだよ。だから、ここんとこ毎日、草原で薬草採取をしていた」


 「あの強さで薬草採取って、もったいない…」


 「まあそうなんだよね。だから、何とか高ランクの依頼を受ける方法は無いかと考えていたところなんだ」


 キッカはぽかんと口を開けてで絶句してしまった。呆れられたかもしれないけど、僕にはいい方法は思いつかなかったんだよな。とりあえず、そっちはほおっておいて、ミアリーとリヨーナに向かって言った。


 「改めて整理すると、“虹色の綿毛”には戦力が足りない。それは自覚しているよね。そして、僕には戦力はあるけど冒険者ランクが足りない。僕たち2組の足りないところを補い合うわけだから、一時的にでも手を組むメリットはお互いにあるとは思うな」


 3人がちゃんと理解できるように1泊おいた後、僕は話を続けた。


 「条件なんかも詰めなきゃだけど、まあ僕は普通に報酬から経費を引いた後で人数で割った分を貰えればいい。つまり僕の報酬は利益の4分の1でいいんじゃないかな」


 あとは何を言う必要があるかな。別にないかな。まあ信頼できる人間だということをアピールしておくか。


 「返事は後日でいいから、ちゃんと相談して結論を出すといい。とにかく、僕は裏切ったりだまし討ちはしない。君たちの思い通りに動くとは限らないけれど、ちゃんと相談して合意したことには従うし、約束も守る」


 3人は真剣な表情で聞いている。僕は話を続けた。


 「つまり、お互いにしっかり交渉して、交渉で合意したことは守ればいい。それは冒険者として当然のことだと思うし、僕も当然のことをやる。逆に言うと、合意に無いことはやるとは限らない。君たちを助けてあげようというんじゃなくて、僕たちは冒険者同士の合意ができると思うんだ。ただ、パーティを組んでいる間は、パーティメンバーとして君たちを守ることは出来ると思うよ」


 僕の提案は以上のような感じだ。もっとアピールをした方がいいのかもしれないけど、思いつかないな。まあ、言いたいことはすべて言った。僕には、提案に乗ることがお互いのためになるように思うけど、さて、“虹色の綿毛”はどう判断するだろうな。

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