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3-10 フウコを紹介、そして“虹色の綿毛”の苦境

 ということで、覚悟を決めてフウコの事を紹介する。


 「あと、君たちには見えないと思うけど、ここに飛んでいるのが風の精霊のフウコ。僕と契約してくれている精霊だ」


 僕がそう言うと、3人がびっくりした顔をした。まあそうなるよな。ミアリーとリヨーナが反応に困ったような表情の中、いち早く立ち直ったキッカが興奮したように言った。


 「え! 師匠は精霊の姿が見えるの?」


 「師匠じゃないけど… 精霊の姿も見えるし話すこともできるよ」


 「げっ。どうやって? なんでなの?」


 「うーんと、なんでか分かんないんだけど、初めて精霊に会った時から見たり話したりできたんだよね」


 「すご… え、精霊ってさ、どんな見た目なの?」


 そこからしばらく、キッカに精霊のことを色々聞かれた。僕も隠さずに分かることはちゃんと説明した。一応、ミアリーもリヨーナも真剣に聞いてくれているみたいだし、可哀そうな人として見られるルートは回避したみたいだ。


 「はあぁー。すごいにゃ、精霊って… 村から出てきて一番衝撃だったかもしれにゃい」


 「ちょっとキッカ。私も衝撃だったけど、本題は違うでしょう」


 「あ、そうだったにゃ」


 そうキッカが言って座りなおす。別にいいんだけど、時々「にゃ」が混ざるのはなんなんだろう。獣人としてのそういうキャラ付けかとも思ったけど、むしろ油断したり構えていないときに「にゃ」が出てくる気がするけど。方言みたいなものなのかな。


 キッカが改めて、という感じで話し出した。


 「じゃあ本題なんだけど… 僕を弟子にしてください!」


 「「いや違うだろ」」


 僕とミアリーの突っ込みがかぶった。キッカ、お前はそうとうな奴だな。フウコが大笑いしながら「フウコ、キッカ好きかもー」とか言っているけど、ちょっとだけ類友の匂いがするけどね。


 その後、キッカに任せていても(らち)が明かないと考えたのか、ミアリーが“虹色の綿毛”の現状を話してくれた。そう、今日の本題はキッカの弟子入りじゃなくて、“虹色の綿毛”の相談に乗ることだ。フウコもちゃんと覚えておいてね。じゃないとキッカみたいに怒られることになるからね。


 そして、聞いてみると“虹色の綿毛”は確かに苦しい状況にあった。


 そもそも“虹色の綿毛”は2年ぐらい前に結成されたらしい。キッカとミアリーは幼馴染で、冒険者になるため一緒に生まれ故郷の村からエンガルトの街に出てきたらしい。そして、たまたま同じ日に冒険者登録をしたのがリヨーナだったそうだ。3人は同い年ということもあって意気投合し、その場でパーティを組んで結成されたのが“虹色の綿毛”だということだ。


 「出だしはすごく順調だったのですが…」


 最初はもちろん初心者のGランク。3人とも根は真面目みたいで、こつこつ依頼をこなしていったら、どんどんランクが上がっていったらしい。うん、えらいな。僕は地味な依頼は嫌だなとか毎日考えていたんだけど、全く違うな。


 「ただ、Dランクに上がってから壁に当たってしまって…」


 まあ、そもそも2年ぐらいでGランクからDランクまで上がったのがすごいんだけど。えっと、3ランクアップかな。GランクからFランクに上がるのは簡単みたいなんだけど、Fランクで足踏みするような冒険者も多いらしいし、多分、頑張っているパーティでも4,5年くらいはかかるんじゃないかな。


 ただ、そこには、“虹色の綿毛”の頑張り以外にも理由があったらしい。


 「リヨーナが、すごく強力な魔道具を持っていたんですね」


 ああ、なるほど。そういえば、冒険者登録の時だったか、強力な魔道具を所有しているとランクアップ時に優遇されるみたいな話を聞いたな。確か、その分、戦闘力があるとみなされるからだったかな。


 まあ、確かに冒険者は強ければ強いほど困難な依頼が受けられるだろう。そして、どうもこの国では、魔法の強力さは魔道具の強さに依存すると考えられているみたいだ。いや、この国だけじゃないな。シバ族のトゥハンたちも同じようなことを言っていたし、多分、世界共通の認識なんだろう。


 そんなわけで、強力な魔道具を持っているパーティは、さっさとランクを上げて難しい依頼をやらせようということになるのは、なんか不公平な気もするけど、まあ確かに無理もない話なのかもしれない。


 ただ、“虹色の綿毛”の場合、それが裏目に出てしまったようだ。


 「Dランクに上がった最初の依頼で、私が大きな怪我を負ってしまったんです」


 危険な魔物が出る地域の探索の依頼だったらしいが、怒涛の勢いでランクを駆け上がった“虹色の綿毛”の3人は迷わず依頼を引き受けたらしい。そして、意気揚々と調査地域に足を踏み入れて、最初に遭遇した予想外に強い魔物との戦闘で手も足も出ずに敗北してしまった。


 その時は3人とも死を覚悟したみたいだが、リヨーナの持っていた切り札的な使い切りタイプの魔道具を使い、何とか最悪の事態だけは避けて帰還することはできた。ただ、戦闘でミアリーが死につながりかねないほどの怪我を負ってしまったらしい。


 ミアリーは、キッカたちが手持ちのお金をかき集めて高価な治療を受けることで何とか一命をとりとめた。ただ、もちろん依頼は失敗だ。依頼失敗の場合、成功報酬に応じた違約金が取られる。まあ、こういう場合の違約金はすぐに払わなければいけないわけではないみたいだけど、要するに借金になっちゃうみたいだ。


 切り札的な高価な魔道具を失い、治療費で貯金はほとんど使い果たして、得たものは借金だけ。うーん、まさにじり貧。なんか、聞いているだけで胃が痛くなってくるな。


 もしこういう状況になったら、僕ならどうするかな。もしかしたら、冒険者を諦めて転職することを考えるかもしれないな。死の危険にさらされ続けるのなんて嫌だし。でも、“虹色の綿毛”の出した結論は、冒険者としての再起だった。


 3人で話し合い、前回の失敗は運悪く強力すぎる魔物に遭遇してしまったのが原因という風に結論付け、より慎重に行動すれば大丈夫だという楽観的な考えになったんだそうだ。


 だが、現実は甘いものではなかった。失敗した分を取り戻そうと頑張ったその後の依頼でも、成功ばかりではなかった。ミアリーによると「今度は慎重になりすぎたのかもしれないです」ということだ。でも、僕が思うに、そもそも実力がDランクに達していなかったのかもな。


 失敗が続くと借金もかさんでいく。慎重に行動しようとしたため、高価な薬草や使い切りの魔道具も補充した。そのお金も借金によって(まかな)った。


 「ところが、気付いたら、全ての借金はベーラゼ男爵が貸主になっていたんです」


 ベーラゼ男爵ってやつは、なんでも絵にかいたような悪徳貴族らしい。やりたい放題で泣かされた庶民は数知れず、妾の数も2桁に乗っているらしい。


 ベーラゼっていうのは確か、僕の事をチビと言い放ちやがった、デイビオとかいうでくの坊の雑魚でクズの冒険者野郎が口にした名前だな。あのでくの坊が「ベーラゼの旦那」とか言っていたから、あいつのバックにいるやつなんだろう。それなら、そのベーラゼっていうやつもどうしようもない奴に決まったようなものだな。


 そして、ベーラゼ男爵の狙いはミアリーだったそうだ。なんでも、以前に複数の冒険者パーティと一緒に受けたベーラゼ男爵の依頼の時に見染められていたんだじゃないかということだ。


 まあ、ミアリーが可愛いというのだけはクズ男爵と同意見だけどな。あざとい感じで裏表がありそうではあるが、顔もかわいらしいしスタイルもいい。美人ぞろいの“虹色の綿毛”だけど、スタイルならミアリーが一番かもな。なにしろ、名前が分からない時にはスレンダーな子という覚え方をしていたぐらいで一番のやせ型だが、セクハラになりそうだから頑張って見ないようにしていたけど、実は3人で一番大きいのも彼女だ。何が大きいかというと、身長の事じゃない。ええっと、あれだ、男性の目線がつい顔よりちょっと下向きになってしまう原因のあれだ。ただし、キッカとリヨーナが小さいという訳でもない。むしろ2人ともけっこう立派なものをお持ちだ。それなのに、一番のやせ型体形のミアリーのが一番大きいというのは、人体の不思議というか…


 「ケースケ? なんか急にエロい顔になったけど大丈夫? ちゃんと話に集中してる!?」


 ゴホン、フウコ、全然大丈夫だから気にしないでね。ベーラゼ男爵ってやつの思考を分析していただけだから。そうそう、ちゃんと話に集中しないとね!

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