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3-8 冒険者の揉め事、そして止めに入ろう

 うん、間違いないな。僕が覗き込んだ路地にいたのは、あの獣人の子とスレンダーな子とフードの子の女の子3人組の冒険者パーティ、“虹色の綿毛”の3人だ。そして、その3人が人相の悪いおっさんたちと向かい合っている。


 「さあケースケ、かっこよく助け出して好感度アップだ!」


 え、フウコ、そんなこと考えていたの? いろいろ勘違いしている気がするし、そもそも何が起こっているのかわかっていないんだけど。


 とりあえず様子を見るか。そう思って路地の方に顔だけ出して見ていると、スキンヘッドのおっさんが獣人の子に向かって言った。


 「キッカ、てめえに聞いてねえんだよ。おとなしくしとけ」


 「僕は“虹色の綿毛”のリーダーだ! 話は僕が聞く!」


 「ベーラゼの旦那が会いたいっていったのは、ミアリーだけだって言ってんだろうが。お前は引っ込んでろ!」


 おっさんがそういってキッカの肩を小突いた。


 「うわっ。手を出したな!」


 キッカがのけぞった。よく見ると、キッカの左手に包帯が巻かれている。そういえば、助けた時に、骨が折れてるって言われていたよな。


 「おいおい、肩を押したぐらいで何を言ってやがる。冒険者同士、こんなものじゃれあいみたいなもんだろうがよ」


 「うるさい! ミアリーは渡さない! 僕と勝負だ!」


 「やれやれ、状況が見えてねえな。お前、冒険者に向いてねえぜ」


 「うるさい! 黙れ!」


 「そんなんだから依頼も失敗続きなんだろうが」


 「黙れって言ってるだろうが!」


 あーあ、キッカは完全に頭に血が上っちゃってるな。ハゲのおっさんはムカつくけど、なんならキッカは挑発に乗せられてる感じだ。その時、おっさんたちの真ん中にいたでかいおっさんが話し出した。


 「じゃれあうのもいい加減にしておけ。時間の無駄だ。多少の事ならベーラゼの旦那がもみ消してくれるんだ。さっさと仕事を済ますぞ」


 でかいおっさんがそう言うと、周りのおっさんたちも動き出した。あのでかいおっさんがリーダー格かな。


 それを見た“虹色の綿毛”のフードの子が言った。


 「デイビオさん、あなたはBランクの冒険者でしょう!? こんなことをして恥ずかしくないんですか?」


 「残念だが、これも仕事でな。おい、やれ」


 おっさんたちは、スレンダーな子を取り囲み、その両腕を極めるようにした。


 「ちょっと!」「やめてください!」「何するんだ!」


 “虹色の綿毛”の3人が叫ぶがおっさんたちは動きを止めない。そしておっさんたちの何人かが剣を抜いた。


 「怪我したくなけりゃ、おとなしくしていろ」


 うーん、おっさんたち、さすがにやりすぎだな。おっさんの側にも事情があるかもしれないけど、確か「金を返せ」的な感じだったし。でも、これはさすがに止めに入ってもいいだろう。


 まあでも、この国の法律がどうなっているかは知らないけど、こちらもいきなり攻撃を仕掛けるのはさすがにまずい気もする。怖いけど、まずは話してみようかな。


 「フウコ、危なくなるまでは手は出さないでね」


 「わかっているよ! ケースケ、いいとこを見せなよ!」


 …うん、フウコは全然わかってないな。まあ、フウコがやりすぎることはない感じだし、いいことにしようか。


 とりあえず、僕は路地の陰から出て行って言った。


 「すみませーん。暴力はやめませんかー」


 その場にいた全員が一斉にこっちを向く。フウコが「え、もっとかっこよくいこうよ」って言っているけど無視だ。平和的解決が一番のはずだ。


 スレンダーな子が僕を見て言った。


 「え、この間のおじさん…」


 おい。僕はおじさんじゃないって。まだ25才だぞ。僕が出て行ったのを後悔しかけたその時、ハゲのおっさんが言った。


 「なんだあ、チビ。邪魔すんじゃねえ」


 はあぁ、チビだとぉ! 僕は身長168センチだぞ! 調子がいいときは169.2センチまでいったこともある! どう考えてもチビじゃないだろうが!


 くそ、異世界に来てから、僕が人生で経験したことのない悪口を言われるんだけど。おじさんとかチビとか。これが異世界の恐ろしさか…


 だけど僕は湧き上がる怒りを押さえつけて、努めて冷静に言った。


 「事情は知らないですけど、だいの大人が大人数で女性を取り囲んで押さえつけているなんて、問題だと思いますよ」


 「はっはっは! ちっちぇえ勇者様だなあ。(いて)えめ見ねえうちに引っ込みな」


 ハゲがそういうと、脇にいたおっさんが2人、剣を向けながらこちらに歩いてきた。


 …ちっちゃいと言ったな。1度ならず2度までも僕の身長を馬鹿にしやがった。いいか、僕が小さいんじゃなくてこの世界の人たちがでかいんだ。なぜなら僕の身長は日本人の成人男性の平均身長とそれほど違わない。つまり、お前は日本の成人男性の多くを敵に回したという事だ!


 もういいや。平和に話し合いで事を収めようかと思ったけど、多少の荒事はしょうがない。おっさんたちが先に武器を抜いたし、こっちの説得にも応じないし、こっちも腕に覚えがあるところを見せてやろう。


 もちろん、殺したり再起不能にしたりはしない。さすがにそれはやりすぎだろうし、後で訴えられたりしたら怖いしね。相手に怪我をさせず“虹色の綿毛”を守ってこちらの力を示す。ならば“あの技”の出番だな。


 「とおっ!」


 僕は叫んで飛び上がる。前に熊みたいな魔物相手にこの技を使った時には、フウコに意味は無いって言われたけど、対人だったら有効なはずだ。


 僕はまずおっさんたちの頭の上に飛び上がり、そのまま空中を進んで、“虹色の綿毛”の近くに着地した。うん、みんな驚いた顔をしているな。よし、不意を衝くのは成功だろう。次に、スレンダーな子の右肩のあたりを掴んでいるおっさんの腕を握り、軽く魔力を使う。


 すると、おっさんの額から鼻のあたりが切り裂かれ、血か吹き出した。「うわっ」とおっさんが叫んでスレンダーな子の肩を離した。あ、やべ、ちょっとやりすぎたか? ちょっと風を当ててびっくりさせようとしただけだったんだけど。


 おっさんはのけ反りながら僕の手を振り払い、2,3歩後退して顔を抑えた。うん、意識はしっかりとありそうだな。よかった、やりすぎたかと思ってヒヤッとしたけど、致命傷とかじゃないみたいだ。


 それを見てデイビオとかいうでかいおっさんが言った。


 「気を付けろ、何か魔道具を持っているぞ!」


 「持っていないよ。精霊魔法は魔道具を使わない」


 僕はそう言いながら、魔力を使う。そして今度は、スレンダーな子の左側にいたおっさんの体の下から風を吹きあげる。


 「なんだっ!?」とそのおっさんが言った。風を強くすると、そっちのおっさんも後退した。よし、今度はうまくいったっぽい。だったらもう決めちゃおう。


 僕はスレンダーな子をかばうように前に出て言った。


 「フウコ、こいつらを押し込んじゃうから、制御お願い!」


 「りょーかい!」


 僕は空中を押す様に両手を前に出し、強めに魔力を使った。


 「うおーりゃー」


 そうすると、僕の前に台風みたいな風が吹き出してくる。風はおっさんたちに向かって吹いていく。そして、おっさんたちが後退して行った。あ、あのムカつくハゲは転んでそのまま転がっていったぞ。ざまあみろだ。


 おっさんたちは、元いた場所から、僕たちが来た方まで後退して言った。僕は前に出て言ってやった。


 「僕は冒険者のケースケ。精霊術師だ。これ以上やるっていうなら手加減はしない。怪我しないうちにさっさと引き上げるんだな」


 まあ、すでに約1名は怪我させちゃってるんだけどね。でも、あれは事故みたいなものと思ってもらいたい。


 リーダー格のデイビオは驚いた顔をしていたが、憎々しげにこちらを睨んだ。お、やるか? だが、デイビオはやらないことに決めたらしい。


 「おい、余計な邪魔が入った。今日は引き上げるぞ」


 そう周りに行った。僕はほっとしたけど、デイビオはミアリーを見て言った。


 「このチビが誰だか知らないがな、この街でベーラゼの旦那を敵に回して無事ではいられない。ミアリー、せっかくベーラゼの旦那が好意を持ってくれてるんだ。おとなしく助けてもらった方が利口だぜ」


 そしてデイビオは返事も聞かずに振り返るとそのまま戻っていった。他のおっさんたちも、こちらを睨んだりしながらもデイビオに付いていく。


 ふう、とりあえず、無難に切り抜けられたかな。これなら、デイビオってやつが僕にいちゃもんを付けようとしても言い訳はできるだろう。


 そう思いながらおっさんたちを見送っていると、後ろから話しかけられた。


 「す、すごいのにゃ。なんなんだ今のはぁ!」


 振り返ると、キッカという獣人の女の子が目を見開いてこちらを見ている。


 「さあケースケ、言ってやりなさい!」とフウコが言ってドヤ顔をしている。ええ、言うのお? まあ言うけどさあ。


 「今のは精霊魔法。精霊の力を借りて使う魔法だよ」


 「せ、せいれいまほおおおおー!? す、すごい。師匠! 弟子にしてください!」


 え、弟子!? 急にこの子、何を言い出すんだ?

この世界では25才はおじさんで168センチの成人男性はチビみたいです。異世界、恐ろしい所です…

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