3-7 評価ってどうやったら上がるの? そしてトラブルの匂い
そんな感じで、冒険者パーティ“虹色の綿毛”を助けたりはしたが、その後も僕たちの平穏でやや退屈な日常にも、冒険者としての評価にも、なにも変化はなかった。
何か評価を上げるきっかけはないか、観光を兼ねてエンガルトの街を歩き回ってみたりもしたけど、特筆すべき出来事は無かった。まあ、この街の中世ヨーロッパ風の感じは見ているだけで楽しかったし、フウコも街歩きを喜んでくれたからそれはよかったんだけど、力を示したり評価を上げたりにつながることは見当たらなかった。
ちなみに、エンガルトは海に面した港町だ。聞いたところだと、海と言っても、内海と呼ばれる大陸内部に大きく入り込んだ巨大な湖みたいな海だということだ。地球で言うと地中海的な感じかな。交易という意味ではすごく大事な海らしく、なんでも世界の貿易のうち結構な割合をこの海の交易が占めるらしい。
港町ということは船がある。船があるということはきっと船大工とかもいたりするのかもしれない。船を手に入れるというのは、一応、僕の計画のうちに入っている。シバ族の村に行くために欲しいからね。一体、いくらぐらいあれば船を作ってくれるのかなあ。日本円で1億円くらいかなあ。もしかしたら、もっと必要なのかなあ。
この街に着いた時には、冒険者ギルドで魔石を売って予想以上の大金を手に入れ、ウハウハな気持ちになっていたけど、船を買うことを考えると全然足りてないよなあ。まあ、頑張ってデカい魔物を狩っていけば、何とか稼げるかもしれない。でも、デカい魔物と戦うような依頼は僕の冒険者ランクでは受けられないんだよなあ。
そういうわけで、街に定着はできたし大きな問題は起こっていないんだけど、なんとなく前に進めてないというもどかしい感じで日々が過ぎて言っている。うーん、これでいいのかなあ。
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そういう風にちょっとモヤモヤしながら過ごしていたある日、僕たちは冒険者ギルドに来ていた。
冒険者ギルドには毎日のように顔を出している。なにしろ、依頼は一応受け続けているし、依頼完了の報告もしないといけないし。
なお、冒険者ギルドでの僕の扱いはあんまり変わっていない。まあ、毎日ちゃんと依頼をこなしているので、ただの冷やかしとかではないことは示せたと思うけど、受付のお姉さんと話すたびに、危険を避けるように用心深く動くことを忠告される。
お姉さんは、わざわざ何度も忠告してくれるんだからきっといい人なんだろうけどなあ。でも、何度精霊魔法の強力さを力説しても全然理解を示してくれない。まあ、今のところ魔物を倒したのは、“虹色の綿毛”を助けた時だけだし、それは冒険者ギルドに報告していないし、力は示せていないからなあ。
ちなみに、“虹色の綿毛”を助けた後も、特に何の反応もない。“虹色の綿毛”が僕の精霊魔法の強力さを広めてくれるということも無かったし、立ち入り禁止の場所でナンパされたみたいな悪い評判が広がるということも無かった。
まあ、これに関しては悪い評判が広がらなくてよかったかもな。もうこれ以上イメージダウンしてほしくないしな。
そんなことを考えながら、もう日課になった依頼完了の報告をして、報酬を受け取りギルドを出る。ちなみに報酬は、最低限の宿になら泊まれて最低限の食事なら食べることが出来るという世知辛い値段だ。まあ最低ランクのGランクの依頼だし、生きていけるだけいいのかもしれない。僕は申し訳ないけど、魔石を売って手に入れた貯金があるから、割といい宿に泊まらせてもらっているけどね。
でもまあ、日々貯金を切り崩してはいるんだよなあ。なんだか、宿への帰り道の風景もわびしく見える。フウコなんかは、「ケースケは落ち着かないなあ。もっと、どーんと構えていた方がモテると思うよ。人生なんて、今日も明日も風任せでいいんだよ」とか、風の精霊らしいことを言っていた。
モテるかどうかは余計なお世話だけど、まあ確かに焦らなくてもいいのかもしれないな。どうせそのうち、力を示すチャンスはくるだろう。それが何か月後か何年先かは分からないけど。そんな感じでどーんと構える方がかえってチャンスに恵まれたりもするかもな。
よし、もうちょっとどーんと構えることにしようか。あせらずさわがず、日々のんびり薬草採取に励む。人生、そういう時期もあってもいいじゃないか。どーんと構えて、とりあえず今日の夕御飯の事でも考えようかな。今日も自炊にしようかな…
「ねえねえケースケ」
フウコ、どうかした? 人通りもあったし変に注目も浴びたくないので、目線を向けて返事の代わりにする。
「あそこに路地があるじゃん。あそこに入ってみなよ。そしたら、また好感度があがるかもよ」
ん? どういうこと? “また好感度があがる”って、フウコの好感度があがるってこと? 言っている意味が分からないし、フウコのいたずらっぽい笑顔が気になるけど、暇だし別に行かない理由もない。まあ、路地は治安があんまりよくないらしいけど、フウコもいるし大丈夫だろう。なんなら、強盗でも襲ってきてもらった方が力を示せていいぐらいだし。
そんなわけで、大通りから路地に入ってみる。入ってみたけど、特に何もないけど? このまま進めばいいのかな?
そして、そのまま路地を歩いていると、女の人の怒ったような声が聞こえた。
「だから、お金はちゃんと返すって言ってるだろ!」
お、トラブルっぽいな。これがフウコの感知したことかな? フウコの方を伺うと、ワクワクといった感じで僕を見て「さあ、どうするどうする!?」と言った。
どうするもなにも、事態がまったく分かっていないんだけど。とりあえず、声のした方に歩いていく。お、あの脇道の方から声が聞こえるみたいだな。
おそるおそる、声が聞こえた狭い道をのぞき込んでみる。ん? あれって山で助けた冒険者パーティ“虹色の綿毛”じゃないか?




