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3-4 冒険者になります! そして、なぜか憐みの目

 僕たちは冒険者ギルドの入口の扉を開けて中に入っていった。そして僕は言った。


 「こんにちはー」


 挨拶をした後でちょっと後悔をした。冒険者ギルドに入るのに「こんにちは」とか言うかな。冒険者たるもの、もっとワイルドな感じじゃなきゃいけないんじゃないだろうか。つい、礼儀正しい日本人の習慣が出てしまった。


 そして、部屋の中にいた人間がいっせいにこちらを向く。うわ、なんか恥ずかしい。急いで部屋の様子をうかがう。部屋の奥にはカウンターがあって、そのさらに奥には職員さんらしき人たちが働いている。部屋の右手には、テーブルとか椅子が並んでいる。多分、酒場になっているんだろうな。


 うーん、これぞ冒険者ギルドという作り。心に余裕があるなら、部屋中をじっくり見てみたいところだけど、今の僕にはその余裕はないかも。とりあえず、カウンターに向かおう。酒場の方に溜まっている人たちになんとなく会釈しながら、カウンターの方に進む。


 カウンターには、これもテンプレできれいなお姉さんが座っていた。うわ、ますます緊張するな。でも、話しかけないと始まらない。「こんにちは」と声を掛けてみた。


 すると、お姉さんは笑顔で「こんにちは」と応えてくれた。そして、続けて言った。


 「冒険者ギルドは初めてでしょうか?」


 「えっと、はい、そうです」


 「それでは、こちらでご用件をお伺いしますので、そちらにお掛けください」


 僕は背もたれのないシンプルな椅子に座った。そして言った。


 「え、えっと、冒険者になりたいんですけど」


 ふう、何とか言えた。これを言うだけで、なんでこんなに緊張するんだろう。多分、日本にいるときの日常とのあまりの差のせいだよな。僕の人生で、ゲームとかじゃなくてこんな言葉が口から出るとは思わなかった。


 ん? 受付のお姉さんが一瞬「え?」みたいな顔をしなかった? 気のせいか? だけどすぐに、営業スマイルっぽい笑顔になって言った。


 「はい、承知しました。冒険者ギルドは、犯罪歴などが無ければ、登録料を払えばどなたでも受け入れます。それでは、登録作業に入りますね」


 そして、名前や年齢などを聞かれた。年齢を答えた時に、やっぱり受付嬢の顔がちょっと曇った気がした。


 だけど、それより問題になりそうなことがある。


 「それでは、次に戦闘スタイルを教えてください。例えば、武器を使う前衛ですとか、魔法で攻撃するとかですが…」


 そういうと、受付嬢は窺うように僕を見た。そう、この質問が、今の僕が答えるのに一番勇気がいる質問だ。だけど、当然聞かれるよな。僕は生唾を飲み込むと、事前にフウコに言われた通りに答えた。


 「はい。僕は、精霊魔法で戦います!」


 緊張して、変な棒読みみたいになっちゃった。そして、受付嬢も「え?」っていう感じで口も半開きになっちゃっている。でも、フウコは満足そうに「そう、ケースケはなんと、精霊魔法が使えるんだよねー」と言っている。


 受付嬢は、コホンと咳払いしてから言った。


 「失礼しました。魔法を使われるのですね。それでは、使用される魔道具についてお聞きしますね」


 「いや、魔道具はありません。精霊魔法は魔道具が必要ありませんから」


 「あ、いや、えっと…」と言ってから、受付嬢が固まった。


 いやあ、やっぱりこういう反応になるかあ。フウコやシバ族の村の長老から聞いた話からしても、精霊の存在やその魔法のことなど、今の人たちはほとんど知らないっぽいし。ちなみに、魔法というのは魔道具を使って使うものという認識になっているらしい。


 きっと、受付のお姉さんは、僕の事を夢見がちな、いや、はっきり言うとヤバい、というかつまり、ええいはっきり言っちゃうけど、頭のおかしい奴が来たと思っているんだろうな。僕は間違った事を言っていないはずだ、けど、顔が赤くなって行くのを感じる。


 だけど仕方ないよなあ。僕の思った通りに行動するなら、こんなにはっきり言わないんだけど、フウコのたっての希望だ。さっき、冒険者登録の時にどういうふうにするかを相談している時に、「ケースケは精霊魔法を使えるんだから、隠すこと無いよ! 精霊魔法のすごさを世界に知らしめるんだ!」とか、めちゃくちゃ目をキラキラさせて言われた。


 僕はできるだけ止めようとしたんだけど、最終的には僕が折れた。まあ、どうせいつかは知られることだしね。それに、フウコのお願いはできるだけかなえてあげたいという気持ちもある。


 結局、気まずい沈黙の後、受付のお姉さんと僕の間で柔らかい押し問答が行われた後、お姉さんが小さくため息を吐いて言った。


 「分かりました。冒険者ギルドは、犯罪歴など無く登録料を払えば、どなたでも受け入れるということになっており、登録を拒否することはありません」


 ということで、僕は何とか冒険者ギルドに所属できたみたいだな。ただ、受付のお姉さんは言葉を続けた。


 「ただ、ケースケさんの場合、年齢的にも若いとは言えないですし、武器の訓練もしたことが無いということですし、慎重に考えることをお勧めします。冒険者というのは文字通り、命を懸けるものです。くれぐれも、甘く見ないようにお願いいたします」


 え!? 「若いとは言えない」!? ちょっ、え、僕、まだ25才なんだけど!? まだまだ若手、え!?


 うわあ… こんなところで元の世界とこっちの世界の大きな差を感じるとは… そういえば、日本は高齢化していてとか何とか言っていたな。25才、日本だったら全然ぺーぺー扱いなんだけど、こちらの世界ではもうベテラン扱いなんだろうか…


 呆然としていると、受付のお姉さんが言った。


 「もし、少しでも自信が無いならば、冒険者にならないというのも手です。ぜひ、慎重に考えてください」


 あ、受付のお姉さんが(あわ)れんだ目で見ている。ああ、そういう扱いになるんだ… そして、その後、冒険者ランクのことやギルドのことなど説明があり、僕たちはお姉さんの可哀そうな子を見る表情から解放された。


 「なるほど、確かにケースケが恐れるだけのことはあったね。このフウコの精霊パワーが全く通じないとは、冒険者登録、恐るべき」


 いや、フウコ、僕が恐れていたのはこういう事態じゃなかったから。こうなるんだったら、馬鹿にされたり絡まれたりした方がまだましだったんじゃなかっただろうか。少なくとも、フウコの力を見せつけられるし。


 あ、酒場の方にいる冒険者の先輩方も、僕を憐れみの目で見てくる。恥ずかしいから止めて欲しい。憐みの目で見ないでくれえ。いっそへらへら笑ったりしながら僕の事を馬鹿にして「おめえなんかに冒険者が務まるかよ」とか言ってきてくれえ。

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