3-3 街に到着、そして“冒険者ギルド”だ!
イグリナ王国に入った次の日、日も高くなったころ、僕たちはエンガルトという大きな街の近くまで来ていた。
「うわー、すごい城壁だなあ」「そうだねえ、シバ族の村の柵とは比べ物にならないねえ。人の住むところは色々だねえ」
そんなお上りさんみたいな会話をしているのは僕とフウコだ。まだ街まではかなり遠いと思うんだけど、そこからでも城壁や、その城壁の向こうの塔のようなものが見える。これぞ異世界だ。テンションが上がるなあ。
とはいうものの、あんまり調子に乗るのも良くない。僕としては、まずはあの街で冒険者になって成り上っていくというプランがある。
昨日の夜、あらためて今後の目標やら計画なんかを整理してみた。
まず、僕の今の目標だが、1つは元の世界に戻るための情報を集めること。はっきり言って、これは相当難しいと思う。何しろ、めちゃくちゃ長生きであろう土の大精霊さんですら心当たりは無さそうだし。まあ、焦ってもしょうがないので、これはそういうことに詳しい人を探したり、本を読んだりしてじっくり取り組むしかないと思っている。まあ、長期戦は覚悟した方がいいかな。
もう1つの目標として、僕の“精霊病”についてのもの。僕の寿命は、フウコとの契約によって短くなっている。でも、短くなっているとはいえ、木の精霊のエインさんの話だと、あと40年ぐらいは大丈夫っぽいし、そんなに焦ってはいない。
まあでも、ゆっくりでも対処する方向で動かないとな。最終的には、風の大精霊という精霊さんに会って契約を何とかしてもらう。それ以外にも、対症療法だけど、強力な力を持った精霊さんに精霊病の悪影響を取り除いてもらっていくのがいいんだよな。
そして、3つ目の目標として、シバ族の村とこっちの国とのつなぎをつけることを長老さんに頼まれている。これは、こっちの国の有力者の協力がいるよな。王様とか貴族、それか大商人とかかな。
ただ、そういうちゃんとした関係を作る前に、船を手に入れるっていうのもありかもな。フウコと海の精霊さんの協力があれば、海を比較的簡単に移動できることが分かった。だから、ある程度の大きさの船さえ手に入れたら、色んな物資を積んで僕がシバ族の村まで行ってもいい。このまま、何十年もシバ族の人たちに会えないというのも寂しいもんな。
もちろん、これは元の世界に戻れない場合だけど、どちらにしても、早めに船を手に入れるのはありかもしれない。元の世界に戻るとしても、その前に一目でもシバ族の村の人たちに会ってお礼を言いたい気持ちもある。
こうやって目標を考えると、かなりハードルの高いものばかりみたいな気もする。だけど、今の僕にはフウコの協力がある。その力を使って、うまいことのし上がっていければ、何とかなるかもしれないと思っている。
シバ族の長老さんと話しても、どうも僕はこの世界でも有数の強者らしい。まあ、僕というかフウコがすごいんだけど。その力を生かすなら、やっぱり冒険者になるのが一番いいんじゃないかということだ。
冒険者… やばいな、わくわくが止まらない。僕も、マニアとまでは言えないまでも、異世界転生系のラノベやアニメは履修済みだ。僕も、冒険者になって強大な魔物を倒したり世界を救うような大活躍をしちゃうんだろうか。
冒険者以外では、ラノベとかでは知識チートというパターンもある。異世界の知識を生かして大活躍するっていうあれだ。だけど、僕の場合、はっきり言ってたいした知識が無いんだよな… 定番パターンだと料理とかかな? 料理は全然やってなかったんだよな。やっぱり自炊しておくべきだったな…
あとは商人になるパターンとかかな。ただ、容量無限のアイテムボックス的なチートを僕は持っていないし、あんまり僕やフウコの強みが生きないかもしれない。元の世界では、むしろ営業的な部署だったんだけどな… まあ、ステップアップな転職だと前向きに考えよう。
そんなわけで、ここからは冒険者としてバリバリに活躍していって、人脈とかお金とかを手に入れて行く。そして、冒険者なら色々なところに旅もしていくだろうし、そうすれば各地の精霊さんたちとも出会うことができるだろう。
「よし、まずはあの街で頑張ってみようか!」「おー! フウコも頑張る!」
気合を入れなおして、僕たちはエンガルトの街の入口に向かった。
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街には問題なく入れた。街の入口の城門みたいなところで入場料? 入街料? を支払ったりしたけど、特に止められたりはしなかった。街の入口でトラブルに巻き込まれるとかはテンプレだし、ちょっと心配だったんだけど、大丈夫だった。もしかしたら、昨日の村で貰ったこの国のお金や服のおかげで、目立たなかったのがよかったのかもしれない。
ただ、冒険者になるためのトラブルのテンプレと言えば、むしろ次こそが王道だろう。そう、僕たちは“冒険者ギルド”の前に立っている。
「よし、フウコ、冒険者ギルドに入る前にもう一度確認しておこうか」
僕は通行人に怪しまれないように口元を隠し、小声でフウコに行った。
「分かってるよー。ケースケは心配性だなあ。要するに、ムカつくことを言われてもいきなり殺したりしたらだめってことでしょ」
うん、僕が心配していることよりもだいぶ過激な言葉が出てきたりするから、心配になるんだよ。“殺す”って、絶対だめだからね。
「フウコ、やっぱりちゃんと確認しておくけど、冒険者ギルドはトラブルの宝庫なんだ。特に、冒険者登録をするときが危ないんだ」
そう、僕のラノベ知識によると、冒険者登録をするときは必ずと言っていいほどトラブルに巻き込まれる。まず間違いなく先輩の冒険者に絡まれたり馬鹿にされたりする。そして、主人公たちは力を見せつけたりしていい感じになったり、妙な因縁が生まれたりする。
いち読者として楽しんでいた時には、興奮する展開だなあとか呑気に考えていた。だが、実際に自分が経験することになると、すごい嫌なイベントだ。特に悪いこともしてないのに、絡まれたり馬鹿にされたりとか、どういうクソイベントだ。
だからといって、フウコが暴れたりでもしたら、どんな惨事になるかわからない。
なんか、さっきまでのワクワクした気持ちもだいぶ萎んできて、不安な気持ちが強くなってくる。
「いい? さっき言った通り、変なことをいうやつがいたりするかもしれない。それに、僕がちょっと小突かれたりする可能性もある。でも、フウコはいざという時まで手を出さないでね。でも、僕が危ないときには、できるだけ人間を傷つけないように助けてくれ欲しい。できるよね?」
「全然心配すること無いって! フウコにどーんと任せておきなさい!」
フウコが自分の胸をどんと叩きながら自信満々に言った。うーん、なんだろう、フウコが自信満々な時の方が心配な気持ちになるんだよな…
とはいうものの、冒険者ギルドの建物の外で棒立ちでいても始まらない。覚悟を決めて行くしかない。慎重に、失礼のないように、だが毅然とした態度でこの困難なミッションに挑むしかない。
そんな強い気持ちで、冒険者ギルドの中に入っていく。鬼が出るか蛇が出るか。いや、そんなものは出ないな。出てくるのはきっと、ちょっと面倒な先輩冒険者とかその類のはずだ。それも十分に嫌だけど。




