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3-2 魔物との戦闘、そして村長との話し合い

 「よし、あの人たちを助けよう。フウコは村人のそばの魔物をやっちゃって」


 「おっっけぃーーー」


 僕の言葉を聞くと、フウコはすぐに魔物の方に飛び出していった。そして、僕の魔力が吸われる。


 そう、契約する前は、フウコが魔力を使う前に僕に触って魔力を吸い出していたけど、契約した後は、僕に触らなくてもある程度の魔力は吸い出されるようになったのだ。要するに、今は僕とフウコが何かでつながっているようなものなんだろう。


 そして、フウコはすごい勢いで魔物の方に飛んで行くと叫んだ。


 「フウコとケースケが来たよー! えーい!」


 その声はもちろん村人には聞こえない。だけど、フウコはお構いなしに腕を振るう。すると、前衛の村人の近くにいた狼みたいなやつが3匹切り裂かれた。


 「なんだ!?」と、村人が叫ぶ。よし、今度は僕の番だ。


 魔物の方に走っていきながら、村人たちに向かって叫ぶ。


 「助力する! 俺に任せろ!」


 ちょっとカッコつけすぎか? “助力”とか“俺”とかいっちゃったし。まあでも、イメージ戦略も大事だしな。ここは、腕利きの猛者っぽい感じでいこう。


 僕はそのままでかい熊みたいなやつの方に走っていった。熊もこちらに向いて迎撃態勢だ。周りの狼たちもこちらを向いている。


 よし、今こそ旅の途中の暇な時間にやった修行の成果を見せる時だ。熊が立ち上がり腕を振りかぶった。うお、でかい。3メートルぐらいはありそうだ。だが、その身長を逆手に取る!


 「とおっ!」


 僕は叫んで走りながらジャンプした。そして、そのまま熊の頭の上を飛び越える。


 そう、僕は旅の途中の魔法の練習で、フウコの手助け無しでもちょっとした空中移動はできるようになったのだ。具体的には、無理せずに30秒ぐらい、高さにして10メートルぐらい、フウコによるともっと高いところも大丈夫みたいだけど、怖いからあんまり高い所までは飛んでいない。そして、あんまりスピードを出すと制御が難しいけど、自転車で普通に走っているぐらいのスピードでならだいぶ思ったように飛べるようになったのだ。


 どうだ熊公。その身長なら、頭上からの攻撃の経験はあるまい。僕も格闘ゲームをやっていた時、敵のジャンプ攻撃には全くと言っていいほど対応ができなかった。ふ、あの時の経験がこんなところで生きるとはな。


 そして僕は、熊を大きく飛び越えた後、振り向きながらちょっと離れたところに着地し、ちょっとバランスを崩したけど何とか踏みとどまって、腕を引いて構えた。体の中の魔力を意識し、それを放出するイメージをしながら腕を振り下ろした。


 「はあっ!」


 すると、僕の腕から刃のような風が放出され、熊みたいな魔物の方に飛んで行った。シュルシュルという空気を切る音が鳴り、熊の肩から腹にかけて袈裟斬りのように切断された。


 「よし! あとは…」


 周りにいる狼型の魔物に対処する。もう一度、魔力を放出するイメージで、今度は小分けにする感じで…


 「はあっ! はあっ! はあっ!」


 両手を振るう。小さなカマイタチのような風がいくつか僕の両手から飛び出していき、残った狼たちを切り裂いた。


 よし、全ての魔物を倒したっぽい。無駄のない動きでしっかり魔物に対処できたし、なかなかイケてたんじゃないかな。ちょっと掛け声がワンパターンだったか? でも、技の名前とかを付けて叫ぶのも恥ずかしいしな。まあでも、かなりいい感じだったな。


 「ケースケェ! ちょっとぉ、カッコいいじゃない!」


 ふ、照れるからあんまりはっきり言うなよ。そういうのは心の中で思っておけばいいんだぜ。


 「まあ、魔物を飛び越える意味は何もなかったけどね! 飛び越えて着地した時には、魔物も振り返ってケースケの攻撃に備えていたし。そもそも、最初から普通に攻撃してても倒せてただろうし」


 え、熊の頭の上を飛び越えたのは、無駄な行為だったの? じゃあ、僕がただのカッコつけみたいじゃないか。


 「でも、かっこよかったからいいんじゃないかな! “とおっ”ていう掛け声もかっこよかったよ!」


 フウコさん、もうやめて欲しいかな。考えてみると、飛び越えた後もしっかり着地できてなかったし、こっちがスキを作っただけだったのかもしれない… いい感じに出来たと思ったんだけどな。なんか恥ずかしくなってきた。


--------------------


 そんな感じで、ちょっと思っていたのとは違ったかもしれない僕の戦闘だったけど、村人の皆さんには大感謝された。やっぱり、けっこうピンチだったみたいだ。


 そして僕たちは、村長さんの家で食事をいただいている。


 「はあー、おいしかった!」


 「村の恩人に粗末なものしか出せずに申し訳ないのですが…」


 「いやいや、粗末だなんてとんでもない! このパンなんかも、久しぶりにこんなにおいしいパンを食べましたよ!」


 というか、この世界に来てから初めてのパンだ。はああ、有難い。日本にいた時には、別にパン党ってわけでもなかったんだけど、この所、肉中心で粗末な食事しか食べてなかったしな。


 そして、僕がご機嫌なもう一つの理由が、この飲み物、そう、お酒だ。これもこの世界に来て以来、初めて飲む。こちらは正直、僕の舌には合わないかな。ワインの1種だと思うんだけど、苦くてちょっと口の中がしびれる感じがある。


 まあ、もともと酒は(たしな)む程度だし、無くても困らない方だ。でも、せっかくだし1杯だけと思って飲んでいるんだけど、味はともかく気持ちは上がるよね。


 そんな風に楽しんで食事ができるのは、この村が僕を受け入れてくれたからだろう。実は、さっきまで村長さんと緊張感のある話し合いをしていた。


 魔物の群れを倒した直後は、そこにいる皆さんから大絶賛、そして大感謝だったのだが、村長の家にお招きいただいてからはちょっと風向きが変わった。


 村長さんも丁寧な話し方ではあったんだけど、どこから来たのかとか、何しにこんな辺境の村に来たのかとか、色々と遠回しに聞かれた。多分、不審者と思われているのだろう。まあ、実際、異世界から来た精霊術師とかいったら、不審者どころか頭のおかしい人と思われかねない。


 どこから来たかとかは、正直に話してもいいのかもしれないけど、それで話がこじれるのも嫌だと思って適当にごまかしておいた。シバ族の人たちに迷惑がかかるのも心配だしね。


 そんなわけで、丁寧な言葉遣いの中に緊張感の漂う嫌な雑談が続いた。フウコも固唾をのんで見守ってくれた。だけど、村長さんとしては、一応僕の事を有害な人ではないと認めてくれたのか、最後には村に泊まっていくように言ってくれた。


 多分なんだけど、僕を盗賊か何かではないかと疑っていたのかもしれない。それか、スパイとか工作員とかかな。実際、シバ族の村の長老さんの話によると、この国、ちなみにイグリナ王国という名前なんだけど、こことその東隣の国には国交は無いらしい。ただ、山脈があって、そもそも人の行き来が困難みたいだけど、東の国は色々とヤバい国っぽいので、この国を侵略することを考えていても不思議はない。


 まあでも、最終的には僕を危険な人間ではないと考えてくれたみたいだな。もしかしたら、僕を東の国からの亡命者だと思ったのかもしれない。シバ族の長老さんから貰ったお金を見せて、使えるかどうか聞いた時に、「東の国家群の共通通貨ですな」とつぶやいて、やっぱりそうかみたいな顔をしていたしね。


 そんなわけで、緊張感のある話し合いも終わり、今は1杯頂いているというわけだ。この感じ、なんかに似てるなと思ったけど、会社員時代の取引先との交渉とかの後の打ち上げの感じだ。あのころは、大変なこともたくさんあったけど、交渉とか売り込みとかがうまくいったあとの打ち上げは楽しかったもんな。


 それに、いろいろと収穫もあった。まず、ちゃんと目指していた国にたどり着けていたことが確認できたこと。シバ族の長老さんの話では、このイグリナ王国は、比較的安全で自由な国っぽい。そんなわけで、僕たちは東のややこしそうな国を避けて、この国を目指していたのだ。


 それから、この国の情報なんかも入手できた。といっても、大した情報ではないんだけど、とりあえずこの周辺の大きな街の情報とかは教えてもらった。この村に長く居ても仕方がないので、早速明日からでも大きな街に移動しようと思う。


 それ以外にも、倒した魔物の素材は、魔石以外はぜんぶ村に譲ったんだけど、その代金とかも貰った。大した額ではないんだけど、この国の通貨を持っていた方が、このあと変に疑われなくていいもんな。あと、この国の普通の服とかも譲ってもらった。シバ族の村の服装も、悪くはないんだけど、ちょっと粗末な感じでこの国では浮きそうな感じだったので、この国の服を貰えたのはありがたい。


 そんな感じで、僕たちのこの国での第1歩は、まずまず成功に終わった。少なくとも、シバ族の村とのファーストコンタクトに比べたら全然いい感じだっただろう。あの時は、けっこうひどかったもんな。


 そして、僕と村長の話し合いを見守っていたフウコだが…


 「ふうー。やっぱりいつ見ても人間の話し合いは力が入る。フウコももっと頑張らなきゃ」


 うーん、何をどう頑張るんだろう。なんか、フウコって人間の話し合いとか交渉とか大好きだよな。何がいいんだろう。あんなもの、疲れるだけなのに。

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