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2-23 シバ族の村のみんなとの約束、そして出発

 そして、僕たちは海辺に来た。“僕たち”というのは、僕とフウコ、そして村の皆さんだ。


 村人が総出で海まで見送りをしてくれるという話になったとき、一度は固辞した。海までは2時間以上は掛かるし、その間に村を留守にするのも心配だと思ったしね。でも、みんなに押し切られた。その気持ちはすごく嬉しいんだけど、ちょっとお祭りみたいな雰囲気なのが気になる。


 まさか、僕たちが出て行くのが嬉しいとかじゃないよな。まあ、みんなでお出かけというレアなイベントでテンションが上がっているんだろう。土の大精霊さんに会いに行った時を思い出す。


 もう舟のスタンバイはOKだ。ちなみに舟は、ヨットぐらいの大きさに帆がついている。作ってくれた村人の自信作で、テスト航行も無事に済んでいる。まあ、屋根もないし舟の中で寝転がることもできないし、欲を言えばきりがないけど、人のいるところまでの乗り捨てのつもりだし、これだけ立派なものなら上々だろう。


 そして、荷物も舟に積み終わって、あとは出発するだけという状況で、もう30分は経過してしまった。肝心の水の精霊であるマカナが来てくれないんだよね。


 実際、水の精霊の協力がなければ海の航行は無理だと思っている。なにしろ、海中の魔物への対処が困難だ。戦闘も面倒だけど、それ以上にフウコでも索敵が難しいのが問題で、不意打ちされたらかなりの確率で舟が沈められるだろう。


 それから、飲用水の問題もある。食べ物は魔物を狩ることで得ることができると思っている。解体や料理の仕方もトゥハンたちに習ったしね。でも、この荒野で飲用水を手に入れるのは通常の手段では不可能に近い。


 でも、水の精霊の協力があれば、その魔法で飲み水が手に入る。他には、魔物の血を飲むという最後の手段があるけど、もうこうなったらそれは絶対にやりたくない。


 なので、この航海は海に住む水の精霊の協力が不可避だ。そして、マカナがその精霊さんを紹介してくれる手筈(てはず)になっている。


 でも、海辺への到着時間は伝えてあるんだけど、マカナが来てくれない。まあ、精霊のことだからなんかのんびりしているとかだろうと思うし、30分は誤差範囲なんだろうけど、時間の正確さには定評がある日本生まれ日本育ちの人間としては、ちょっと不安になってくる。


 あと、間が持たないんだよね。もう、全ての村人とあいさつは済ませた。話すことも無くなって、僕は海を見ながらぼーっとしている。あー、マカナ早く来てくれないかな。


 村人たちもせっかく来てくれているのに無駄な時間を使わせて申し訳ないな。そして、そんな風に気を遣っちゃう感じもいやだ。スマートに挨拶を済ませて出発するイメージだったんだけどなあ。まあでも、実は村人の皆さんはおしゃべりしたりその辺で遊んでたり、別に苦になっている感じはない。


 フウコも楽しそうに海の上を飛び回っているし、僕だけこの待ち時間の長さを気にしているのかもしれない。だって仕方ないじゃないか、時間の正確さには定評がある日本で生まれ育ったんだから。まさか日本人の異世界転移にこのような困難があろうとは、僕が読んだラノベとかには出てこなかった展開だ。


 そんな感じで手持ち無沙汰のせいでよくわからないことを考えていた時に、マラマちゃんに話しかけられた。


 「あの…」


 緊張しているのか耳がピンと立ってほっぺが少し赤くなっている。前もこんな感じで話しかけられて勘違いしたんだよな。いや、ほんのちょっと勘違いしただけだけどね。


 僕もちょっと緊張がうつっちゃったかもだけど、大人として僕がしっかりしなきゃ。安心させるように笑顔を作る。さて、マラマちゃんはどうしたのかな。


 「ケースケ、また村に戻って来てほしい」


 うわ、もう、今すぐ村に戻ろうかな。そして、いつまでもマラマちゃんと一緒に過ごしましたとさ、めでたしめでたし。いや違う。マラマちゃんは真剣に言ってくれているんだから、ちゃんと答えなきゃ。


 「うん、いつになるか分からないけど、必ず戻ってくるよ」


 「マラマ、ケースケは門出の日だ。ケースケにはなさなければならないことがある。お前が言うことはその言葉で合っているか?」


 トゥハンが横から口を挟んだ。マラマちゃんはトゥハンの方を向いて頷き、僕に言った。


 「ケースケ、村に来てくれてありがとう。次に村に来てくれる時までには、エイン様ともっと仲良くなっているから」


 「うん、楽しみにしているよ」


 「ふふ、マラマはずいぶんケースケになついてしまったな」


 そうトゥハンが言ったけど、そうなのかな? あんまり実感が無いんだけど…


 トゥハンが言葉を続けた。


 「マラマがわがままを言ってしまい、済まんな。だが、俺も正直に言えばまたお前に会いたいと思っている」


 「もちろん、僕もトゥハンにもマラマちゃんにも、村のみんなにもまた会いたいと思っている。約束するよ、絶対に村に戻ってくる」


 「そうか… 本当にありがとう」


 トゥハン、こちらこそ本当にありがとう。そんな風に思ってくれる友達が出来たことが一番の幸せだ。


 言葉にはしないけどね。さすがにちょっと照れちゃうし。なんなら言葉にしなくても照れるな。


 その時、海の上に浮かんでいたフウコが叫んだ。


 「ケースケー、マカナちゃんが来たよー」


 お、今回はベストタイミングかも。トゥハンたちに「来たみたい」と伝えて、海を見渡したら、こちらに向かって直立で高速移動してくる2つの上半身が波間に見えた。怖っ。そういえば、マカナの水中移動は初めて見たかも。水の精霊の移動スタイル、すごいな。


 「フウコ、ケースケ、紹介するわ。この辺りを縄張りにしているやつ」


 「どうも初めまして。こちらの人間の方が精霊が見える方かな?」


 お、なんか普通のおっさん感のある精霊さんだな。ちょっとふくよかで親しみやすい雰囲気だ。


 「ケースケと言います。どうぞよろしくお願いします」


 「私はフウコ! おじさん、よろしくねー」


 「おお、本当に精霊と話せるのですな。これは驚きだ。短い間となりますが、よろしくお願いします」


 短い間というのは、この精霊さんは縄張りの間だけついて来てくれるからだ。縄張りを超えるときには、別の精霊さんに引継ぎをしてくれるらしい。精霊さんリレーといった感じだな。


 「じゃあ、出発しましょうか!」


 僕が村人たちの方に向けて言うと、みんなが手際よく動き出した。舟を海に浮かべてもらったので、僕は乗り込む。フウコに目をやると、フウコがこちらを見て言った。


 「いつでも行けるよー」


 よし、出発だ。この異世界転移が物語なら、これからケースケの冒険の第2幕の幕開けだな。不安も寂しい気持ちもあるけど、元気を出していこう!


 「それでは、シバ族の村の皆さん、本当にお世話になりました! 必ず戻ってきますので、またお会いしましょう! 行ってきます!」


 僕がそう言ったら、みんなが拍手してくれた。フウコの力で風が吹きだし、舟が動き出す。


 「ケースケ、ありがとうー」「また会おうねー」「元気でなー」


 みんなが声を掛けてくれる。トゥハンもマラマちゃんも手を振ってくれている。長老も長老の奥さんも笑顔だ。


 フウコも「みんなあー、楽しかったよおー、ありがとー」って叫んでいる。みんなには聞こえてないけど、きっと気持ちは伝わっているだろう。マカナはサムズアップをしている。そのポーズ、この世界にあったんだ。


 そして僕も、手を振りながらみんなに向かって叫んだ。


 「皆さん、お元気で! 行ってきまーす!」

なんだか打ち切りマンガの最終回みたいになってしまいましたが、「もうちっとだけ続くんじゃ」ということで、今回の投稿は2章の終わりです。


そして、明日に閑話を挟んだ後で、明後日から3章を投稿します…と言いたいところなのですが、年末年始にあまり執筆ができなかったもので、ちょっとストックが切れかけてしまっています。なので、もしかしたら3章の開始を数日遅らせるかもしれません。


もしその場合は、のんびり再開を待っていていただけると幸いです。


ひとまず、2章の終わりまで読んでいただきありがとうございます。これからもどうぞよろしくお願いします!


(あと、もしここまで読んで面白いと思っていただけたなら、評価とかリアクション、感想などをいただけたら今後のはげみになります! お願いできればありがたいです!)

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