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2-21 フウコにお礼、そして僕の寿命は?

 「ああ、はい。フウコは泣いちゃっていましたね。ちょっとびっくりしたけど、僕は大丈夫ですよ」


 「はい、フウコさんの最初の契約者がケースケさんでよかったです。精霊は人間と深い関係になることは少なく、強い契約をするほどの関係は大変珍しいことです」


 まあそうだろうな。普通、精霊のことが見えたりしないわけだもんね。


 「フウコさんも初めての契約で、不安な気持ちもあり、契約をしたせいでケースケさんが不幸になったんじゃないかと考えて自分を責める気持ちもあったみたいです。しばらくは不安定かもしれませんが、優しくしてあげてくださいね」


 「それはもちろんです」


 そっか。契約って精霊にとっても大変なことだったんだな。僕はフウコに助けてもらってばっかりだけど、何もお礼も出来ていない。こんな時ぐらいはフウコの支えになれないとな。


 そんなことを考えていたら、フウコが戻ってきた。


 「えっとねえ、海までの半分の半分ぐらいが限界だったあ」


 海まで徒歩2時間ぐらいかな。1時間に4km歩くとして、2kmぐらいは離れられる感じかな。


 そうか、フウコは今まで自由に飛び回れていたけど、これからは僕の近くしか動けないんだな。自分の事で頭がいっぱいだったけど、フウコにとっても契約はけっこう負担だったんだな。


 「フウコ、あらためてありがとうね」


 「え、急にどうしたの?」


 「いや、フウコにとって、契約って別にメリットも無いのかなって。今までみたいに自由に飛び回れなくなっちゃったし、色々不安にさせちゃったみたいだし。僕とか村の人たちを助けるために、そんな犠牲を払ってくれてたなんて知らなかったからさ」


 「ううん、フウコはケースケだったら契約してもいいかなと思ったから契約したんだから。全然オーケーだよ」


 「それでもさ。僕はたくさんフウコに助けてもらって、その分のお礼なんて全然できないけど、せめて風の大精霊さんに会うまでの間、フウコがしたいことはできるだけさせてあげようと思うから、何でも言ってね」


 「ゲースゲぇぇぇ!」


 やばい、また泣かせちゃった。しまった、そんなつもりじゃなかったのに。いい加減エインさんに呆れられて怒られるかも。


 そしてフウコは僕の胸めがけて飛んできて、僕に抱きついてきた。


 「ゲースゲぇ、ずっと一緒に居ようねえ゛」


 え、ずっと一緒にいるの? 風の大精霊さんに契約を解いてもらって離れることもできるようにするっていう話じゃないの? あ、とてもそんなことを言える雰囲気じゃないよな、これ。


 …まあでもいいか。風の大精霊さんに契約を解いてもらったとしても、フウコがいいなら別にその後も一緒にいてもいいし。というか、その方が助かるし、それに、それってなんか嬉しいかもな。


 僕はフウコの背中に両腕を回して、後頭部から背中を優しく撫でてあげた。そうしたら、僕に抱きついたフウコの両手の力も少し強くなった。なんか、恥ずかしいな。


 「あなたたち、本当に仲がいいわねえ。そういうの、確か人間の言葉でバカップルとか言うんじゃないの」


 マカナ、やめて、こっちはいろいろ必死なんだよ。僕の人生が大変な事になったと思って焦ってたら、女の子の今後も縛り付けちゃってたのが発覚したんだから。あと、この世界に“バカップル”なんて言葉があるのもびっくりなんだけど。


 「では、契約についてはこれで全てお伝えしましたね。長時間、ご苦労様でした」


 エインさんが社会人っぽくまとめてくれた。いや、ちょっとまって。まだ大切なことを1つ聞けていないぞ。


 「えーっと、もう1つだけ質問よろしいでしょうか。フウコ、ちょっと放してもらっても大丈夫?」


 さすがにフウコと抱き合ったまま真面目な質問をするほどバカップルではない。フウコはもしかしたらバカップル扱いにも抵抗は無さそうだけど、少なくとも僕は何とか抵抗したい。


 ただ、ハッピーエンド的な雰囲気の中、また空気が悪くなるようなことを聞くのは気が引けるんだけど、これはちゃんと聞いておかないと、今後の動き方も変わってくる。


 フウコも僕とくっつくのはやめて、僕の横に移動してくれた。まだ僕の腕を掴んではいるけど、シリアス質問とはいえ、まあそれは良しとしよう。僕もその方がうれしいし。


 さて、ちゃんと真面目モードで質問だ。


 「ええっと、この雰囲気の中で聞くのはちょっと気が引けるんですが、大切なことなので聞いておくべきだと思うんです。結局、僕の寿命ってどれくらい縮んだのですか?」


 僕の腕を掴んでいるフウコの手がギュッとした。エインさんも笑顔から暗い顔に変わった。あ、やっぱり事態は楽観できないんだな。大丈夫、フウコも助けてくれる。しっかり覚悟を持って現状を受け止めよう。


 エインさんが言った。


 「はい、確かにそれはまだ説明していなかったですね。まず、他の精霊の力を借りるのに十分な時間はあるので、心配しないでくださいね。希望はあるのに、自暴自棄になるのがもっとも愚かなことです」


 ふー。末期の病気の告知みたいだな。いや、告知なんてされたことないから実際は知らないけど、そういう映画のシーンを思い出しちゃった。


 「はい、エインさん、よくわかっています。フウコも手助けしてくれるし、大丈夫です。せんs…、エインさんのお考えを隠さずに教えてください」


 やばい、“先生”って言いそうになっちゃった。教師、政治家、医者、エインさんはなんか先生って呼ばれる職業が似合う気がするんだよな。


 そして、フウコは「フウコも手助けしてくれる」と言った時に、深く頷いてくれた。大丈夫、困難な状況だったとしても、きっとフウコが手伝ってくれれば解決できる。エインさん、教えてください!


 「はい、それでは、あくまでもこのまま何の処置も行わない場合はですが、ケースケさんはあと4,50年もすれば衰えてしまうでしょう」


 え? ん? えっ? 今、何年って言った?


 「エインさん、もう一度お願いします。何年で衰えるって言いました?」


 「ケースケさん、ショックを受けるのも無理はありませんが、大丈夫です」


 「いや、そうじゃなくて、40年から50年で衰えるって言いました?」


 「はい、その通りです。あまりにも短くて驚かれたかもしれませんが、心配することはありません。その間に力の強い精霊の助けが得られればいい訳ですから、十分な時間があると考えましょう!」


 えっ! どういうことだ? びっくりして頭が混乱しているのか? 僕は今25歳で、40年後に衰えるとして、つまり、65歳で衰えるっていうこと? あれ? 計算が間違っている? 65歳ってそもそもだいぶ衰えていないか? いや、65歳の人に「衰えましたね」とか言ったら怒られるだろうけど。


 ん? 何が間違っている?


 「…えっと、え? …えー、この世界の人って、何歳ぐらいまで衰えずにいられるんですか?」


 えっ、という顔をして精霊さんたちが顔を見合わせた。


 「えーっと、私は木の精霊ですので、人間の生態には詳しくないんですが… フウコさんは街にも行きますよね。分かりますか?」


 「え、そんなの知らないよー。マカナちゃんは?」


 「あなたたちが知らないものを、私が知るわけないでしょ。人間との関わりなんてほとんどないわよ」


 あ、これは絶対精霊さんたちがなにか勘違いしているパターンだ。


 「ええっと、僕の元々いた世界ではですけど、40年後50年後なら、もう普通に衰えているというか、死んじゃう人もいるぐらいですね」


 なんなら、我が母国、医療大国である日本なら男性の平均寿命は確か80歳を超えているけど、世界にはもっと平均寿命が短い国も多くあったはずだ。


 「ええー、人間ってそんなに短命なの? その辺の動物とあんまり変わらないじゃん。せっかく契約したのに、駄目だよ、そんなにすぐ死んじゃったら!」


 え、そんなこと言われても、どうしようもないよ。普通はそんくらいで死んじゃうもんなんだよ。


 「わかった、じゃあフウコはケースケが長生きできるように頑張る!」


 え、どうやって? 生活習慣の見直しとか?


 まあともかく、なんか拍子抜けみたいなことになっちゃったけど、まあ色々と分かったし良しとするか。なんか、予想外のことが進展しちゃった気もするけど、まあまあそれも含めて大きな問題は無さそうな気がしてきたかな。

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