2-17 みんなのお礼、そして化け物は何者?
うわああああーーー! 化け物の口に飲み込まれたあああ! もう駄目だああああ! 助けてくれえええええ!
はっ! …夢?
ここは? あ、いつもの部屋か。
「おはよー。ご機嫌いかが?」
声の方を見ると、フウコが正坐みたいな姿勢で浮かんでいる。
「あ、フウコ、おはよう。あー、なんか変な夢を見ちゃってさ、うん?」
うん? 夢っていうか、えーっと。だんだん目が覚めてきたぞ。
「あ! みんなは大丈夫だった?」
「うん。マラマちゃんたちも無事に村に帰ってきたし、みんな大丈夫」
「そうか、よかった」
はあ、一安心だ。そう、昨日は化け物を倒した後、すぐに部屋に戻って倒れるように眠りについたんだよな。
本当は、化け物の事、村の外に逃げたマラマちゃんたちの事、契約の事、気になることがいっぱいあった。でも、もうどうしようも無く疲れて限界だったので、後のことはトゥハンに任せて休むことにした。
精霊関係だけはやっておかなきゃと思って、エインさんと話して無事を確認したのと、一応、フウコに夜の間の警戒を頼んだけど、もうそれが精一杯だった。
いやあ、でも、本当に昨日は危なかったなあ。全員生存ルートの可能性はほとんど無かったんじゃないだろうか。あらためて考えてみても、うん、昨日の僕は頑張った。我ながら、偉かったんじゃないだろうか。
もちろん、精霊の皆さんの協力あってのことだ。フウコやエインさんはもちろん、マカナが知らせてくれなかったら、今ごろ村は壊滅してただろうな。あとでマカナにお礼をしておこう。
でも、その前にまずお礼を言わなきゃいけない精霊がいるよな。
「フウコ、昨日はありがとうね。フウコのおかげでみんな助かったよ」
「え、え、ちょっと、ケースケがそんなに素直にお礼を言うなんて、熱でもあるんじゃないの?」
「え? お礼ぐらい言うけど?」
僕ってお礼も言わない冷たいキャラだと思われてたっけ?
「あ、いや、気にしないで。思ってた感じと違ったから、びっくりしちゃってさ」
「思ってた感じ?」
「いやいや、別に何でもないけど。それより、村の人間たちもケースケにお礼を言いたいと思うよ。顔を見せてあげたら?」
ん? ちょっと気になるけど、村の様子も気になるから、とりあえず外に出てみようか。
そうして家から出たら、すぐに村人たちに取り囲まれた。お礼を言われたり、体調を心配されたり、色々大変だったけど、ひとつ間違ってればこの人たちの誰かは死んでたのかも知れないんだよな。そして、僕が死んでいた未来もあったかもしれない。そう思うと、本当に良かったなという気持ちが湧いてくる。
そんな感じでみんなとお話ししていたら、騒ぎを聞きつけたのかトゥハンまでやってきた。
「ケースケ、体は大丈夫か!」
「あ、トゥハン、おはよう。うん、多少だるいけど別にたいした痛みもないし、大丈夫みたい」
「そうか。だがお前は魔物に喰われかけたのだ。もし少しでも体に異常があれば言うのだぞ」
「うん、ありがとう」
「ケースケ、改めて言うが、お前は俺の命の恩人で村にとっても大恩人だ。本当にありがとう」
「いやいや、僕もいろいろ助けてもらっているし、お互い様ってことでね」
そう言って笑いかけたら、トゥハンも笑顔になった。うん、これは友情だ。いいものだな、互いの命を守ろうとした心から信頼できる友。元の世界ではなかなか得られないものだよな。特に「互いの命を守ろうとした」のところがレア度が高い。
「そうか。助けてもらったのがお前で本当に良かった。ところで、起きたばかりですまんが、少し来てもらえるか。昨日の化け物の死骸だが、不審な所があってな」
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朝食の干し肉をかじりながら、フウコとトゥハンと一緒に化け物の死骸のところまで歩いて行った。そこには長老が待ってくれていた。
それにしても、魔物を改めて見ると、本当にでかくて気持ちの悪いやつだな。ちなみに、村人たちもこいつが怖かったみたいで、夜通し交代でこいつを見張っていたらしい。
長老にはすごく丁寧に大げさなお礼を言われた。もうほとんど聞いてるふりをして聞いてなかったし、フウコはさっさとエインさんの方に逃げて行っちゃったけど、「救世主」とか「英雄」とかいう言葉にはむず痒い気分がしてニヤニヤしてしまった。まさか人生で救世主と呼ばれる事があるとはね。いやまあ、この世界に来た時からまさかの出来事ばっかりだったんだけどね。
そして、ようやく長老のお話しが終わったので、化け物のことに話を移す。
「それで、不審なところって?」
「うむ、それなのだが…」
トゥハンたちは、薄暗いうちから化け物の解体を始めていたらしい。朝早くから勤勉だなあと思うけど、とにかく早く死骸を処理しちゃいたいということみたいだ。
それで分かったのだけど、この化け物から4つの魔石が取れたのだった。
「ケースケは魔物の事に詳しくないだろうが、1匹の魔物から取れる魔石は1つと決まっている。複数の魔石が取れる魔物など聞いたことも無い」
「それだけではない」
長老が口を挟む。
「このような特徴の魔物は聞いたことも無い。荒野の魔物については国を出るときに調べられるだけ調べたし、そうでなくてもこのような奇妙な魔物がいるなら、一度ぐらいは耳にしたはずだ」
「新種の魔物ということですか?」
「もちろん、その可能性もある。だが、頭や胴体は儂の知る魔物に似ておる。尻尾などイザドにそっくりではないか」
イザドか。荒野で出会った巨大なトカゲみたいな魔物だよな。確かにあいつみたいなしっぽだ。
いろんな魔物の特徴があり複数の魔石を持つ存在、それってキメラってこと?
「長老、国はよくわからん魔物の研究をしているとも聞く。国の差し金ということは無いのか?」
「ううむ、考えすぎとも思うが、あるいはそういうこともあり得るのか」
国の差し金? きな臭い話になってきたな。そう思っていたら、長老が弁解するように言った。
「ケースケ、儂らと国との関係については近いうちに話そう。それより、ケースケに頼みがある。この化け物について、精霊の皆様方のお考えを聞きたいのだ」
なるほどね。長老が聞きたいのは、主に、この化け物は何なのということと、その処理についてだった。僕も精霊さん達に聞きたいことがあったし、ちょうどよかった。早速、エインさんに話を聞きにいってみよう。




