2-16 ケースケやっちゃえ! そして戦いの行方
うわああああーーー! 化け物の口に飲み込まれたあああ!
助けて! フウコ、何とかして! え、さっきフウコが「ケースケ、やっちゃえ!」って言っていたっけ!? え、やるの? フウコじゃなくて僕が何かやるの?
あ、なんか体の中によくわからない力がある気がするけど、これを使えってことなの? 「フウコこの力どうやって使うのあぁっ!?」だめか、フウコに聞こえないか?
あああ、迷ってる暇は無い。僕の胴体がでかいベロに巻き付かれていく。潰される? 消化される? どちらにしても死んじゃうって!?
ああああ、だめだああーー! もうだめだああ! 僕は泣きながら腕を振り回した。ズバアアアアーー! え、カエルの口の中が切り裂かれた!? あ、体の中の力が腕に集まっているか!? あ、この力はこういうことか?
うわ、ベロが締まってくる! 腕に力を集めて、その力で切り裂くイメージでえぇぇ。ズバアァ。よし、切れた! 僕の手から、フウコが使うようなカマイタチみたいな風が出た!
ベロは完全に千切れてはいないみたいだけど、締まる力は抜けた感じだ。いける。なんとなく何が出来るか分かるぞ。次はこのベロを弾き飛ばすイメージでぇ。うおおおお! 僕の上半身から四方八方に風が吹き出していくうぅ! ベロが体から離れたあ! あ、やばい、服も千切れちゃってない? いや、とりあえずそれどころじゃないな。
とりあえずは、ベロからは脱出できた。あとは口から逃げ出せればだ。さっき切り裂いたところはどうだ? うわ、なんか傷跡が治っていってる。気持ちわるっ!
いや、気持ち悪くてもそれどころじゃない。この傷跡のところに向けて、右手に力を集めるようにして、風を放出するイメージで右手を振り下ろす。「えいっ!」 ズバッ! よし、外が見える。だんだんコツが分かってきたぞ。
「ケースケー、そこから飛び出してぇー」
フウコの声が聞こえた。よし、切れた所に手を突っ込んで…
「そんなんじゃなくて、飛んでえ!」
飛ぶ? 僕、飛べるの? ええい! 飛べ!! 力を足に集めて、思い切って噴出する。
「うぉおおおおおぉぉぉ!」
すごい勢いで飛び出したあぁー! う゛お゛おおおぉ! 飛び上がったああ! うわ、これ着地はどうすれば!? 下向けに風をぉぉ!?
ん? 腕を掴まれた?
「うわあああ、そんなに強く風を出さなくてもおおおー」
フウコ! 魔力が吸われる! 下から風が吹いてくるうう!
「あぶなああいい! ケースケが死んじゃううう!」
下向きに風をおおお! うわあああ、地面に叩きつけられるうう!
地面に叩きつけられたああぁ! 地面を転がるうう! うわ、僕、どうなった? まだ生きてはいるけど!?
腕は? 動く。足は? 動くぞ。痛みは? ん? あんまり痛くないか? 逆噴射みたいな風でなんとか着地のショックをやわらげられたか?
「うわあああ、ケースケー、生きてるうぅぅ」
「生きてる。あ、大丈夫かも。僕、大丈夫だ!」
気付くとフウコが泣きながら僕の首筋に抱き着いている。うわあ、やばかった、この10秒ぐらいで2,3回死にかけた気がする。だけど生きてる、生きてるぞぉー!
「大丈夫だった。フウコ、ありがとう!」
「う゛わ゛あああ、ケースケが大丈夫だったあー、あんなにすごい勢いで魔法を使うから、飛んで行って死んじゃうかと思ったあああ」
「大丈夫だったよ。心配かけてごめんね」
安心させたくて、フウコの背中に手を回して軽く抱きしめる。でも、僕も初めて魔法を使うし、正直フウコの説明不足… いや、今回はギリギリだったし仕方がないか。フウコも一生懸命だったんだろうな。
「ケースケ、大丈夫なのか!?」
トゥハンの叫び声が聞こえた。
「大丈夫。トゥハン、こいつは僕がやる。下がって!」
そう、戦いはまだ終わっていない。化け物はびっくりしたのか、頭を下げてこちらを睨んでいる。
だけど、今の僕ならやれるはずだ。少なくともダメージは与えられるようになった。せっかく寿命まで捧げてフウコと契約したんだ。何としても生き残ってやる。
「フウコ、あいつを倒したい。協力して」
「え゛、でも私の魔法じゃあいつに傷もつけられないよ」
「攻撃は僕がする。まだ魔法の事よくわかってないから、アドバイスお願い」
「分かった! 私たちであいつを倒そう!」
フウコが僕の後ろに回って僕の首のあたりに手を回した。僕がフウコをおんぶしているみたいな体勢だ。
そして、あらためて化け物と向かい合う。正面から攻撃しても勝てるのか? 一撃で倒せなかったら? 僕の魔法もどれだけ回数が撃てるのか分からない。すでにけっこう魔力を使っている気がするし、魔力切れが怖い。
やるなら急所か。なら首筋? さっきフウコが攻撃して無傷だったけど、どうだろう。それか腹? たいがい動物は腹が急所だけど、ぶっとい脚が怖い。あんなので蹴られたら一撃でお陀仏だよな。遠距離から狙うか? それか…
「フウコ、飛んでから最大威力の攻撃って、僕に出来るかな?」
「できる! あと、飛ぶのも攻撃も制御は私が手伝えるかも」
それなら…
化け物が体を起こして、体を後ろに引いた。多分、攻撃態勢だ。
「フウコ、あいつの視界を遮れる?」
「できるよ!」
魔力が吸われる。そして突風が吹いて砂埃が舞い上がる。よし、勝負だ!
右前にジャンプして、風を後ろに噴射する。
「低空飛行で回り込んでっ」
よし、化け物の体の横の方に行けた。一瞬風を体の前に出してブレーキ。そして…
「うああああああ!」
力を右手に集めてえええ、切り裂けえええ! 腕を振り下ろしながら強く力を放出する。
カマイタチみたいな風が飛び出していく。狙いは…
「フウコ、喉だああ!」
「はあああああ」
化け物の首の下に抜けそうなかまいたちが、急上昇して喉に向かっていった。そして、シュパアァァという音とともに化け物のぶっとい首の下半分が切り裂かれ、緑色の血液が吹き出してきた。
やったか? いや、魔物の生命力を舐めるな。僕は着地できずに転がってしまったけど、すぐに起き上がって化け物を見て追撃の準備をした。
だけど、化け物はかすれたような唸り声を上げて、そのまま横向きに倒れた。
「やった、みたいだ」
「う゛ん゛、ケースケ、やっだね」
フウコが涙声で言った。そしておんぶの格好のまま、僕の首に抱きついている腕が優しく締まった。
「ケースケ、倒したのか? 無事か?」
トゥハンが駆け寄ってきた。やべ、涙とか鼻水とかよく割らない粘液とかですごい気持ち悪くなってる。服もビリビリに切り裂かれているし。まあいっか。全員生き残って村も破壊されず被害は軽微だ。エインさんの林がちょっと心配だけど、とりあえず、一旦は全員無事なのを喜んでもいい感じかな。はああ、疲れたあ。
というわけで、序盤のハイライトの戦いでした。
自分なりに楽しんで書くことができましたが、皆さんは楽しんでいただけましたでしょうか?




