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2-13 村の発展、そして突然の緊急事態!?

 ザザァー。ある日の夜、僕は砂浜に体育座りして夜の海を眺めていた。


 あー、人はなんで波をずっと見ていられるんだろうなあ。太古の記憶を揺さぶられるような感覚を覚える。ふっ、ちょっとキザだったかな。でも、全ての動物は海から始まったみたいなことも聞いたことがあるし…


 「あ、フウコはその辺散歩してこようかなー」


 ああ、フウコはこういうロマンは分からないタイプだったかー。散歩してもいいけど、呼んだら戻れるところにいてね。万が一、魔物に襲われたら僕1人では何もできないからね。


 そう、僕とフウコは今、海に来ている。長老の言うところの“調査”の一環だ。調査が始まってから2カ月ぐらい経ち、僕も1人でも村の外で行動できるようになった。まあ、1人といっても人間は1人ということで、フウコがついて来てくれなくちゃ怖くてとても無理だけどね。


 でも、テントも1人で張れるようになったし、魔物の解体とか料理も、一応は出来るようになった。


 マラマちゃんがエインさん係に就任した後も、村は順調に発展してきている。まず、井戸が完成した。それは、僕が井戸と聞いて連想するような、いかにも井戸っぽい井戸だった。これで生活もずいぶん楽になったし、植林や畑作りもさらに進むことだろう。


 それから、野菜が収穫できた。とりあえず、すぐに収穫が出来るというカブみたい野菜が食卓に上がった。やっぱり体が求めていたみたいで、こんなに美味しい野菜は初めてというぐらいに感動した。肉食寄りのシバ族の皆さんにはそこまでの感動はなかったみたいで、野菜はけっこう沢山食べさせてもらった。


 精霊関係でいえば、井戸ができたことで川の精霊のマカナが村に来れるようになった。最近はマカナがエインさんとおしゃべりしているのをよく見かける。この間も朝から昼下がりまでお話ししているみたいだったから、暇なのかなと思って見ていたら、マカナから「サボってるって思ってるんじゃないでしょうね。私たちくらいになったらおしゃべりしながらでもやること出来るんだからね」と怒られた。


 まあでも、マカナがよく来るのは、村が気に入っているのかなと好意的に解釈している。


 船も試作品が完成した。でも、ちょっと水漏れがあったので、失敗作ではあったんだけど、村の人が改良してくれている。アイデアはあるみたいだから、次はうまくいくかもしれない。


 それから、マラマちゃんとエインさんの意思疎通の仕組みもうまくいっている。どうも、枝の揺れ方とかで感情というかニュアンスも割と伝わっているみたいだ。他にも、緊急事態の時にどう警告するかとか、色々と決め事ができてきた。林もけっこう大きくなってきたし、このまま村を囲うようにしていけば、村もどんどん安全で豊かになっていくだろう。


 個人的には、マラマちゃんとけっこう仲良くなれたのもうれしい。エインさんとの意思疎通の仕組みを作る時に色々と相談しているうちに、わりと打ち解けられたと思う。


 この間も、調査から帰ってきて一息ついているときに、マラマちゃんが寄ってきてエインさんからお花を貰った話をしてくれた。マラマちゃんは嬉しそうだったし、僕も幸せな気持ちで話を聞いた。まあ、玉に瑕だったのはフウコがニヤニヤしていたことだけど、それは見ないことにした。


 ただ、その直後にトゥハンが寄って来て、「ケースケが良ければずっと村にいてもいいんだぞ」と言われたときには、またドキッとしてしまった。「お兄さん公認」という言葉が頭の中に浮かんだけど、これでまた勘違いをしてフウコに笑われるはめになるのはごめんだし、適当に返事しておいた。ま、どちらにしてもフウコにはからかわれ続ける気がするけどね。


 そんな感じで、村の居心地はどんどん良くなっていっている。そうなんだよなあ。もうちょっとしたら出発できるかもしれないんだけど、もう少し村に居続けてもいいんじゃないかっていう思いもどんどん大きくなってくるんだよなあ。我ながら、本当に優柔不断だなって思う。


 そんな風に寄せては返す波を見ながら、今後の事とかに思いを馳せていた時、ふと、誰かの声が聞こえたような気がした。


 ん? フウコの声かな? でもフウコならもっと近くまで来て話すよな。でも、この辺りには人はいないだろうし、フウコが誰か精霊さんと出会ったのかな?


 気のせいかな? この辺りには僕とフウコぐらいしかいないはずだしな。でも、念のため僕は耳を澄ましてみた。


 「おい、フウコ、ケースケ、いないの!?」


 え、僕たちの名前を呼んでる!? どういうことだ?


 何か危険なことがあるかもしれない。とりあえず、フウコを呼び戻そう。


 「フウコ、聞こえる? 聞こえたら戻って来て!」


 「なーにー、ひとりでさびしくなっちゃったのー」


 フウコがお気楽な声を出しながら戻ってきたけど、今はそれどころじゃないかもだ。


 「フウコ、誰かが僕たちの名前を呼んでる。ついて来て」


 そういって、僕は声の方に走り出した。何か嫌な予感がする。でも、一体どういうことだ?


--------------------


 「フウコ、ケースケ、すぐ私に気付きなさいよ!」


 僕たちが向かった先には、川の精霊マカナがいた。


 「おーす、マカナ。何でここにいるのー?」


 「フウコ、緊張感の無い話し方をしないで! 村がピンチだからわざわざ私が来てあげたのよ!」


 「え、村がピンチ?」とフウコがようやくびっくりした声を出す。僕も焦って聞いた。


 「マカナ、どういうことか詳しく教えて」


 「どうもこうも無いわよ。見たことのない化け物が村を襲ってきたの。エインでもどうにもならなそうだって言うから、私があなたたちに伝えに来てあげたのよ!」


 エインさんでもどうにもならない化け物? そんな存在がいるのか? 今のエインさんなら、かなり強力な魔物でも何とかなるはずだぞ?


 「え、え、どうしよう? どうすればいい?」


 頭の中で考えたつもりだったけど、驚きのあまり声がもれちゃっていたみたいだ。マカナが怒ったように答えた。


 「そんなの決まってるでしょう! 村の人間達を守りたかったら、すぐに村に戻りなさい!」


 そうだ、村に戻らなきゃ。フウコの魔法ならきっとなんとかできるはずだ。


 「わかった。フウコ、ついて来て。マカナもできれば村に戻ってほしい」


 「私が戻っても何もできないわよ。人間の魔力ももらってないし、村には水が少ないし。でも一応戻ってあげるわ」


 「それでも頼む。フウコ、行こう!」


 「うん、わかった!」


 くそ、僕たちが村の外に出ちゃってるときに、なんでそんなことが起こるんだ。いや、今そんなことを考えている場合じゃない。一刻も早く村に帰らなきゃ!

ここから、序盤の山場的なやつです。楽しんでいただければ幸いです。

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