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2-10 川の精霊さんの重大発表、そしてマラマちゃんのこと

 「長老、荒野の調査というのは?」


 「うむ、それはな…」


 長老の言うのはこういうことだった。荒野は、村の周辺の狭い地域を除き、あまり調べられていない。人手も少ないし、危険な魔物も多しね。そこで、僕が村人と一緒に数日かけて遠くまで調査に行き、荒野脱出の道筋を調べるとともに荒野でのサバイバル体験を積むのはどうかということだった。


 なるほど。これはいいかもしれない。荒野で大変なのは魔物だけではない。というか、フウコが助けてくれるなら、魔物は割と怖くない。むしろ、長い間荒野にいるなら、戦闘以外のサバイバル能力の方が僕にとって問題かもしれない。野外での料理とか、寝る時どうするとか、わからないことがたくさんある。


 それを、村の人たちに教えてもらいつつ、村のための調査をやる。つまり、いわゆるウィンウィンっていうやつだ。


 うん、これは引き受けるべきだな。そして、多分僕のことを思ってこの提案をしてくれたであろう長老には感謝だ。いつかお礼をしようと心に決めた。


--------------------


 という訳で、このところは村の外に出掛けることが多くなっている。そして、僕も村からの移動について真剣に考え始めている。


 色々と村の外を動いてみて思ったが、やっぱり徒歩での移動はちょっと大変すぎるかもしれない。そうすると、海を船での移動かなあ。


 だとすると、課題は2つ。1つは船をどうやって入手するか。せめて、ヨットぐらいの船が欲しいかな。帆があれば、フウコに追い風を吹かせてもらうということもできそうだ。


 もう1つは、海にいる水の精霊の協力を得られるか。協力が得られれば、索敵や攻撃など魔物対策として有効だ。というか、協力が得られなければ、多分海の移動は無理だ


 早速、川の精霊さんに話を聞きに行ってみた。


 ちなみに、川の精霊さんには土の大精霊さんの村訪問の時に会った以来だ。会ったというか、あの時はフウコとエインさんとガールズトークしてて気付いたらいなくなってたから、その時に見掛けた以来だ。川には毎日のように行くんだけど、別に会いに来てはくれないんだよな。でもフウコがどっか行っちゃうことがあるから、フウコは会いに行ってるっぽい。


 いつもの水を汲む川のほとりに来て、フウコに川の精霊さんを呼びに行ってくれるように頼んでみると、フウコが飛んで行った。


 でも、飛んで行く時に変なことを言ってたんだよな。「おっけー、行ってくるよ。今日は重大発表もあるから楽しみにしていてねー」とか言っていた。


 重大発表? 精霊の重大発表とか心臓に悪いから止めてほしい。また川に危機が訪れるとかか? 精霊さんたちは気軽に危機的状況を告げてくるから油断が出来ないんだよな。


 僕が色々と悪い想像をしていると、フウコが飛んで戻ってきた。そして、川の精霊さんが川の中から現れた。


 「じゃあ、あなた、早速発表して!」


 フウコがそう言うと、川の精霊さんがおもむろに咳払いをする。な、なんだ、そんなふうに思わせぶりな言い方、精霊らしくないじゃないか。そんなに重要な発表ってなんだ!? また村が危機に陥っちゃうの!?


 「これから、私はマカナって名乗ることにしたから、あなたもそう呼びなさい」


 な、なんだってー! な、なんだマカナって!? あ、あだ名? あだ名なのか。重大発表って、村の危機とかじゃなくて、それだけ!?


 あ、フウコも川の精霊さん、じゃなくてマカナか、とにかく2人も「感想は? 早く褒めなさい!」みたいな顔をしている。ここは3年間の社会人経験を生かす時だ。


 遅ればせながら、感心したような顔を作り、拍手をして言う。


 「いいね! かわいいあだ名だね!」


 フウコが「でしょー」と本人よりも先に胸を張る。ごまかせたみたいだ。ちょろくてよかった。


 でもマカナには「そんなにわざとらしく褒めなくていいわよ。あなたがどう思おうと、私は気に入っているから」と、ちょっとばれてるっぽい。ごめんて、ちょっとこっちの想像と違う発表でびっくりしたんだ。だから思わせぶりなことを言ったフウコが悪いんだよ。


 でも、ここは全力でごまかすしかない。


 「いやいや、本当にかわいいあだ名だと思うよ! マカナって、マカナラ川っていうこの川の名前からとったんだよね。そういうあだ名の付け方は、由来もいいし、響きは今風だし、すごくいいんじゃないかな!」


 なんか意味が分からないことを言ってる気もする。社会人経験3年、大したスキルは身に付けていなかったかも。お世辞を言うとか、あんまり得意じゃなかったかもなあ。


 まあでも、なんとなくマカナも機嫌が直ってきたかもしれない。「いいわよ、お世辞を言わなくても。まあ、由来があるあだ名の方が私には合ってるとは思っていたけど」とか言っているし、まあ何とかなったと思おう。


 そんなわけで、その後もあだ名を考える2人の苦労話とか他の案とか色々聞いたりして、時間がたったけど、今日の本題はあだ名じゃない。


 「ところで、マカナに聞きたいことがあるんだけど…」


 そして、海の移動について聞いてみた。結論を言うと、一応なんとかなりそうだ。マカナが海にいる精霊に頼んでくれるらしい。


 「ちゃんと私に感謝しなさいよ」


 と言っていたけど、もちろんです! どんなお礼が出来るかは全然分からないけど、このご恩は忘れないようにしよう。


--------------------


 そんな風にして、僕は荒野脱出に向けての行動を進めていった。船についても、エインさんに聞いてみたらこころよく木材を救出してくれることになった。


 ちなみに、木の精霊であるエインさんに木材をくれって言うのは、かなり勇気がいった。もし、「あなたも自然を破壊する者だったのですね」とか言われてエインさんに敵視されるようになってたら、多分僕は泣いちゃってたと思う。


 でも、「大丈夫ですよ。適切な木を間引くことで林全体がより健康になりますから」ということらしくて、切っていい木をエインさんが教えてくれることになった。


 船の製造も、村人の中に木の細工が得意な人がいて、その人と相談している。船の職人という訳ではないので、ちょっと心配なところはあるけど、まあ、人里の方まで移動できれば使い捨てでいいわけだし、最悪、いかだに毛の生えたようなものでいいかなと思っている。


 そんなわけで、着々と荒野脱出の準備は進めていっている。そんな中、ちょっとだけ気になっていることがある。


 この間、エインさんと話しているとき、ふと視線を感じてそちらに目を向けると、トゥハンの妹のマラマちゃんがこちらを見ているということが何度かあった。


 何か用でもあるのかなと思って笑いかけてみたりしたんだけど、目をそらされたり、マラマちゃんの方に視線を向けると後ろを向いて小走りで行ってしまったりだった。


 え、何か警戒されてる? それか、僕が嫌われているとかじゃないよな。


 実際、マラマちゃんとの距離はあんまり縮まっていない。マラマちゃんの年齢は知らないけど、多分、日本で言うと中学生ぐらいじゃないかと思う。そんな思春期の女の子との接し方なんて全然分からないんだよね。


 ちなみに、マラマちゃんはもしかしたら精霊が見えているんじゃないかという振る舞いをしていたけど、それについては以前に確認している。どうも、エインさんの存在は、なんとなく感じることが出来るらしい。でも、他の精霊は分からないらしい。また、エインさんの声は聞こえないらしい。


 エインさんの存在を感じているということは、エインさんの協力のもと確認できた。エインさんの場所はどこでしょうゲームをしてみたけど、百発百中だったので、エインさんの位置は認識できているのは確実なようだ。ただ、どうしてマラマちゃんだけがエインさんの存在を感じられるのか、なんでエインさんだけ感じられてフウコの存在は感じられないのか、その理由はエインさんにも分からなかった。精霊と人間の関係って、なんか分からないことだらけだよな。


 というわけで、精霊と仲良くしている僕としては、マラマちゃんは気になる存在というか、せっかくならもうちょっと仲良くなりたいところもある。なんか、マラマちゃんも精霊のこととか気になっているようだしね


 だけど、思春期の女の子との接し方がなあ… あと、最近けっこういろいろやるべきことがあるのもあって、マラマちゃんとの交流は後回しになっている。


 でも、マラマちゃんがなぜエインさんの存在を感じられるのか、そのあたりが分かったら、もしかしたら精霊と人間との関係ももっと良くなるかもしれない。やっぱりもうちょっとマラマちゃんと仲良くなったほうがいいのかなあ。


 ちょうどそんなことを考えていたところ、そのマラマちゃんから話しかけられた。


 「ケースケが村から出ていくって本当?」


 お、マラマちゃんが僕に話しかけるなんて珍しいな。あと、上目遣いで耳がピンと立って、ちょっと緊張している感じがすごく可愛い。ん? え、これってまさか、僕にずっと村にいて欲しい的なこと? それとも!? え、どきどきするんだけど、そういうこと? というかどういうこと?

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