2-7 空気のよごれをぶっとばす、そしてフウコと村の約定
村人たちに、フウコが魔力を使うことを伝える。村人たちがうなずいているのを見て合図すると、フウコが村人たちの周りを飛び回った。
よかった。フウコからは腕が伸びて魔力を集めたりしないんだな。あれはちょっとキモ、いや、あのー、若い女性がやるにはちょっとあれかもだし。
やがて、フウコが村人の周りを飛び回るのをやめ、「じゃ、行ってくるねー」と言って、新しくできた山の方に飛んでいった。お、山の方に向かって風が吹き出したぞ。
吹き出した風は、どんどん強くなっていく。そして、山の方で巨大な竜巻になっていく。うわ、これはすごい。立ってられないぐらいの風になってきた。
だが、やがて風も収まってきた。お、フウコが戻ってきたぞ。そして、「お待たせー。もう大丈夫だよー」と明るく言った。
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フウコが何をやっていたかというと、よごれから放出された空気中の毒を吹き飛ばしてくれていたのだ。
そして僕たちは、新しくできた山の上まで登ってきた。山の上は、ちょうど火山口のように真ん中に大きな穴がある。そして、その穴をのぞき込むようにすると、深い穴の底のほうによごれが見える。
「フウコ、これけっこうよごれに近寄っているけど、空気中の毒は大丈夫なのかな?」
「うん、大丈夫だよ。さっきぶっ飛ばしたし」
空気中の毒をぶっ飛ばしたのか。すごいな風の精霊。あと、ぶっ飛ばした先の地域に迷惑をかけてないのかな。後で確認しておこう。
そうやって、みんなで恐る恐る穴をのぞき込んでいると、また地面がかすかに揺れてきた。そして、また土の大精霊さんが現れる。でも、怖くならないと思ったら、今回は最初っから小さくなってくれているんだな。
「人間達も確認したであろう。爆発などが起こらん限り、よごれが川に流れ込むことは無い。偉大なる大精霊の力である」
そしてドヤ顔をして僕を見る。はいはい、村人に伝えろってことね。
僕が土の大精霊さんの言葉を伝えると、村人さんたちが深くお辞儀し、長老がお礼を言い始めた。うーん、長い。話が長い。逆に、お礼を言うだけでこれだけ長く話せるのもすごいよな。
でも、土の大精霊さんが満足げなので、まあいいことにする。というか、もしかして土の大精霊さんもちょっとチョロいか。あがめたり丁寧なお礼を言ったりしたら、けっこう色んなお願いを聞いてくれるかもしれない。僕も、やっぱり長くお礼を言うスキルとか身に付けた方がいいんだろうか。
そんなことを考えていたら、長老のお話が終わった。土の大精霊さんも満足そうにうなずいて言った。
「うむ、我の偉大さがわかっていればよい。さて、ケースケよ、ここでフウコと村人の約定も交わしてしまったらどうだ?」
そう、よごれへの対処はまだ完了していない。なんでも、よごれから出る毒は、溜まっていくと爆発する可能性があるのだ。
そのため、フウコがさっきやったように、空気中の毒を吹き飛ばすことが必要になる。なんでも、これを何年かに一度やる必要がある。
それを僕が関わってやっていってもいいんだけど、村人のための事をやるのであれば、村人とフウコで約定を交わしておいた方が何かといいらしい。まあ、僕もずっとフウコといるとは限らないしね。
そういうわけで、まあ、せっかく土の精霊さんもいることだし、ここでフウコと村との約定を結んでしまいたい。
「長老、土の大精霊さんは、今ここでフウコと村で約定を交わしてしまってはどうかと言っております」
「む、そうか。確かに土の大精霊様がお立合いいただいているこの場にて約定を交わすのが良いかもしれんな」
「フウコもいいよー」
「それでは、フウコは数年に一度、この場所の毒が爆発する前に、その毒を吹き飛ばして村に影響が行かないようにする。その魔力は、シバ族の村の林でエインさんに祈りを捧げている村人から得る。その際、村人に大きな負担がないように気を付ける。これで大丈夫かな?」
「フウコはオーケー!」
「村人を代表しまして、スフトルが風の精霊フウコ様に申し上げます…」
しまった、また長老の長話が始まってしまった。「フウコちょっとその辺見てこようかなー」って、え、フウコと村人との約定だよ。当事者がいなくなるのはさすがにまずくない? え、土の大精霊さん、ちょっと笑ってるよね。
「くっくっ、風の精霊はやはり仕方のないのお。やむを得ん、我が代わりに聞いておいてやろう」
え、土の大精霊さん!? 約定って代わりに聞くとかありなの? 僕か呆然としていたら、長老のお話が終わった。
ちょっと、フウコはどっか飛んで行っちゃってるよ!? フウコ、戻ってきてよ。呼んだ方がいいのか? でも声を出して呼んだら、長老たちにフウコがいないことがばれちゃうよね…
やばい、長老が不審そうな顔をしてこっちを見ている。どうする、ごまかすか? それとも正直に言うか?
そう思っていたら、フウコが戻ってきた。フウコは、いかにもずっとここに居ましたみたいな顔ですましている。
「ごほん、では長老、先ほどの僕の言葉にシバ族の村も同意するということでよろしいですね?」
いくらなんでも、土の大精霊さんが代わりに聞いていたからいいということはないだろう。フウコに聞かせるために長老に質問する。
「あ、はい。先ほどそう申しましたが…」
「風の精霊フウコも同意しております! これにて約定は締結されました!」
長老は不審そうだが、僕は強引にまとめる。ふー、冷や汗が出るよ。なんというか、人間と精霊のリズムが合ってないんだよなー。これはどっちが悪いんだろう。話が長い長老なのか、それとも飽きっぽい精霊なのか。
まあ、ともあれ、約定は交わされた。林のところで祈りを捧げている村人から魔力を貰うようにしたので、これで完全に僕が関わらなくてもよい約定になる。
フウコの魔法に僕が全く関わらない… これからはそんなこともあるのかな。もしそういうことがあったとしても、僕が見捨てられたからとかじゃなければいいな。うん、見捨てられないように頑張ろう。




