1-17 村に受け入れられました、そして今後はもうちょっとのんびりしたいな
結局、僕たちは村の総意を持って村に迎え入れられた。まあ、総意といっても、長老と長老の奥さんがみんなを説得してくれた感じなんだけど、特に反対意見なんかも出なかったので、村人全員が僕を迎え入れるのに賛成したといってもいいだろう。
ただ、あの話し合いの後は大変だった。長老をはじめ、いろんな人からは質問攻めにされるし、それが食事中も続くし、結局深夜まで入れ代わり立ち代わり誰かに話しかけられた。
それで深夜ようやく解放されたのだが、次の日も、エインさんとの話し合いに参加していない村人たちへの説明が続いた。なにしろ、村人が別の村人を連れてくる。話し合いの場にいた人が、その場になかった人に話し、それで疑問が浮かんだり納得できなかったりしたら僕のところに連れてくるという塩梅だ。
これが商売だったらどんどんお客さんが増えて幸せなんだろうけど。いや、僕もある意味精霊の売り込みをしているようなもんか。
ともかく、村人の質問には誠実に答え、僕に分からないことはフウコやエインさんに聞いて答え、結局朝から晩までそれをやっていた。
まあ、そういうわけで、僕の頑張りもあり、もちろん長老たちが一生懸命村人を説得した効果もあり、村人全員の同意が取れた。そして、僕やフウコが見守る中、エインさんとシバ族の村との間で約定が交わされた。
約定の交わされた次の日、僕は基本的には林のそばにいた。何かエインさんと村人との間でトラブルでもあったら、せっかくの頑張りが無駄になりかねないからね。前の上司からもアフターケアはしっかりやるように言われていたしね。
朝ご飯を食べた後すぐに林に向かったら、もうすでに林の前で祈りをささげている村人がいた。その後も、入れ替わり立ち代わり、村人たちが祈りに来てくれた。まあ、さすがに初日だしね。これで誰も来なければ、シバ族不信に陥る所だ。
なかには、何度も来てくれる村人もいた。トゥハンの妹のマラマちゃんもその1人だ。そういう人には、何度も来なくても大丈夫ですよ、無理なく続けてくださいね、そんな感じの声掛けもしている。最初に張り切りすぎて継続できないとか、あるあるだしね。英会話も筋トレも続かなかった僕が言うんだから間違いない。
それから、祈っているポーズをとる必要はなくて、ただ魔力が吸い出されるのに抵抗しないだけでいいんだけど、みんな祈りのポーズを取っている。これは、別に害があるわけでもないのだから放っておいてある。エレンさんにも分かりやすいだろうしね。
ちなみに、林の中心の方の大木を向いて祈る人たちと、新しく植えられた木を向いて祈る人たちの2つの流派がある。長老とかトゥハンは大木派で、マラマちゃんは新しい木派だ。エインさんにこんな感じで大丈夫なのかは聞いてみたけど「はい、大丈夫です」と笑顔で言われたので、こんな感じでいいんだろう。
フウコも、「ふうん、こういうやり方もあるんだねえ」と関心の声を上げていた。「ひょっとしてうらやましかったりする?」と聞いてみたけど、「うーん、フウコは別にいいかなあ」と言っていた。そうだね、なんかフウコにはこういう真面目っぽいやつは似合わないかもね。
そういう訳で、僕はこの世界に来ての最初の目標を達成した。これからは、飲み水や食べ物が手に入らないかもとパニックになったり、1口の飲み水のために死ぬ気でがんばったりはしなくてもいいだろう。まあ、まだ村の状況を全部理解したわけでも無いので、これからも色々と大変なこともあるだろうけど、とりあえず、次の目標に向けての拠点は手に入れたと言っていいだろう。
まあ、次の目標が何になるかはまだ分からないんだけどね。元の世界に戻る方法が分かっていれば、それに向けてがんばるだけなんだけど、今のところノーヒントだしね。
とりあえずは、この村に住まわせてもらいながら、この世界で生きていく力を身に付ける必要があるかな。フウコが色々と手伝ってくれるとしても、村の外で生きていく能力は足りていないだろうしね。しばらくこの村に滞在して、村の人たちから色んなことを学んだりした方がいいのかもしれない。
まあ、そのあたりはおいおい考えて行けばいいかな。とにかく、この村にいれば安全だろう。そして飲食は出来るだろうし、寝床も確保できた訳だし、一旦ひと休みしてもいいかもしれない。
そういえば、フウコは昨日の夜に村人の皆さんに挨拶している。村人たちも、異質な存在であるフウコが村に居るということで、変に不安に思うことが無いように、長老に頼んで村人を集めてもらったのだ。
フウコはなぜか、すました顔で「フウコでございます。どうぞよろしくお願いいたします」とか言っていた。まあなんか、そういうことを言ってみたかったんだろう。なんというか、フウコのこういう言動についていちいち理由を考えたりしてもしょうがないんだろうなという気がするんだよね。
そのよくわからない挨拶のテンションはともかく、村人の皆さんもフウコを受け入れてくれたみたいだ。今日も、すれ違った村人さんが僕だけじゃなくフウコにも挨拶をしてくれた。僕があいさつを返したあと、「フウコもおはようって言っています」とか付け加えるのがちょっと面倒なんだけど、まあこれくらいなら全然問題ない。
ところで、フウコはこの村まで連れて来てくれる約束だった。これからどうするのかは決まっていなかったので、それも確認してみた。
「フウコ、僕はしばらくこの村にいようと思っているんだけど、フウコはどうするの?」
そう聞いてみると、フウコはいたずらっぽくニヤっと笑ってからかうように言った。
「えー、じゃー、ケースケも寂しがるといけないし、フウコも一緒にいてあげようかなー」
からかわれていることは分かってるんだけど、僕も自然に頬がゆるむのを感じる。フウコの力を借りられたら心強いっていうのもあるけど、正直、フウコと一緒にいるのも気に入っている。まあ、知り合って短いとはいえ、濃厚な時間を過ごしたしね。だから、その気持ちを正直に伝えることにした。
「そうか、まだ一緒にいれてうれしいよ! これからもよろしくね!」
できるだけ笑顔をうかべてそう言うと、フウコは慌てたように言った。
「ちょっとー、ケースケは正直だなー。そんなに嬉しそうな顔をされたらフウコも照れちゃうよー」
「そりゃだって、僕が命拾いしたからさようならっていうのも寂しいじゃない」
「まあそうだよね。まあ、フウコもこんな風に村とかで人と一緒に過ごすのは初めてだし。人の暮らしっていうのを堪能させてもらうよ」
この村の暮らしは、僕の知っている普通の人の暮らしとはずいぶん違うけどな。まあでも、とりあえず、僕もフウコを見習って、とりあえずはこの世界での人の暮らしを楽しむことにしようかな。
そんな風にして、僕はこの世界での居場所を手に入れた。この時、ケースケはその前途に絶望が待ち受けていることをまだ知らなかった、みたいなことが無ければいいな。僕のこの世界でのサバイバル生活も、ここから先はもうちょっとのんびりした展開になってくれることをお祈りしておこうかな。
あけましておめでとうございます!
ちょっと前に掲載を始めた本作品ですが、今年もどんどん書いていこうと思いますので、どうぞよろしくお願いします!
あと、新しい年が始まる妙なタイミングではありますが、ここまでで1章は完結、明日に閑話を掲載した後、明後日から2章となります。引き続き、どうぞよろしくお願いいたします!




