1-16 エインさんはけっこう気さくですよ、そしてデモンストレーション大成功!
「そして、最後に、これまで通りに林の木々や自然を大切にしていただくこと。これらを行ってくださる限りにおいて、私はシバ族の村の方々に力を貸すことをお約束しましょう」
僕が勝手に気合を入れていたら、エインさんの話が終わった。僕が聞いた言葉を繰り返したら、エインさんが僕に目配せしたので、締めの一言を言う。
「以上がエインさんからのお話になります」
村人たちはすごく真剣に聞いていた。話が終わってもその内容を咀嚼しているような感じだ。少したって、長老が僕に言った。
「ケースケ殿、儂らから質問をしてもよいのであろうか?」
「もちろんです」
「儂が話せば、ケースケ殿がエイン様にお伝えしてくれるのだな?」
「いえ、ここで話されることは、エインさんは全て聞いていますよ。エインさんはあの木の左側にいますので、そちらを向いて話せばよいと思います」
「そうか」
そして、長老はエインさんの方を向いて両手を組み頭を下げた。
「この地に宿る木の精霊であらせられますエイン様、儂はシバ族の村の取りまとめをしておりますスフトルと申します。エイン様におかれましては、これまでも我らを見守っていただいていたということで、誠にありがとうございます」
「ご丁寧に恐れ入ります」
エインさんが微笑みながら返事をするから、僕もその言葉を伝える。長老は、一瞬こちらを見たが、またエインさんの方に向き直り、話を続けた。
「エイン様の偉大なるお力、先ほど目にし、大変驚嘆しております。その偉大なるお力、我らのために振るっていただけるならば、確かに村にとっては大きな力となりましょう。しかし、村の取りまとめをしている者として…」
は、話が長いよ、長老。
長老ってもうちょっと気さくな感じじゃなかったっけ。さっきまでちゃんと聞いていたフウコも、そっぽを向いて空だか雲だかを見ている。はー、僕も学生時代、話がつまらない先生の授業では窓の外を見ていたなー。
長老の話は、要するに、魔力を与えてしまって村人に健康被害とかの危険は無いのかという話だった。もっと単刀直入に言えばいいのに。でもエインさんは長老の目を見て話を聞いていた。エインさんは先生に気に入られるタイプだな。僕やフウコとは違うタイプだ。
長老の話を聞き終わり、エインさんがそれに答える。
「私が皆様から貰うのは少しの魔力ですから大丈夫だと思います。でも、心配なら最初は少なめに貰うことにしましょうか。それから、別に全員から毎日魔力を貰ったりしなくても大丈夫ですよ。何日かに一度とか、なんなら口に出して言ってくれれば、その日は少な目にするとかできますよ」
僕がその言葉を長老に伝えると、長老は驚いたような顔をして、「そんな感じでいいのか」と呟いていた。
多分、長老にとって、精霊は神様みたいなもののイメージなんだろうな。だから恐れ敬わなければいけないと思って、あの超絶に長ったらしい話し方と態度になるんだろう。
でも、僕からすると、精霊って普通に話の通じる存在なんだよな。だから、気軽にお願いとかしてもよさそうに思っちゃうんだよな。
エインさんと村人たちの話し合いはその後も長く続いた。トゥハンも長老の奥さんもいろんなことをエインさんに尋ね、エインさんはその全てに丁寧に答えた。エインさん、先生に気に入られるタイプと思ったけど、むしろ先生に向いているタイプかもしれない。よく集中力が持つよな。
というか、この世界って休憩とかないんだろうか。僕はもうへとへとなんだけど。このままでは伝言係の集中力が切れてしまう。甘いものを食べたい。せめて水を飲みたい。
だが、やがて、もう日がだいぶ落ちてきたころ、ようやく質問が途切れた。村人の皆さん、体力がありすぎるよ。まあ、この村の将来がかかっているのだからそれだけ真剣だったのだろうけど。エインさんもお疲れ様です。
フウコなんかはもう、あちこち飛び回ったりしていた。途中、変顔をして僕を笑わそうとしていたのはちょっとひどいと思う。僕は、エインさんの言葉を村人に伝えるという仕事をずっと真面目にやってたんだからね。
「それでは、どうでしょう、今日は一旦このあたりで締めるということでは。皆さんも今すぐは決断できないでしょうし」
さすがに開放されたい。もう結論は次回に持ち越しでいいんじゃないかな。なんかもう、倒れそうだ。
「ケースケ殿の言う通り、全ての村人と相談しなければ結論は出せませぬ。ただ、儂としては、村にとってよいお話しであったと感じておる」
そして長老はその場にひざまずき手を胸の前で組んで言った。
「エイン様に申し上げる。この度のお話、我らシバ族の苦境を救うものとなるのではないかと感じました。必ずや同胞たちを説得しお約束を受け入れますので、どうぞ今しばらくお待ちください」
すると、村人たちも一斉にひざまずいた。
「はい、お待ちしていますね。あと、残ったリュカプは差し上げますので持ち帰ってくださいね」
こうして、僕と精霊たちの必死のデモンストレーションは成功裏に幕を閉じた。必死なのは僕だけだったかもだけど。
あと、気になったのが、帰りがけに、マラマちゃんが振り返って軽くお辞儀をしたこと。あれ、やっぱりエインさんに向かってだったよな。エインさんは笑顔で手を振っていた。
というわけで、僕は疲れ切って村に帰った。頭がぼーっとしているし、ご飯を食べたらさっさと寝よう。リュカプも村に提供しているし、ご飯ぐらいは食べさせてもらえるだろう。
そう思ったら、村の真ん中ぐらいに来た時に、いきなり長老に肩を掴まれた。
「ケースケ殿、ここで話す声はエイン様には聞こえないのだよな?」
「え、ええ、そうだと思いますけど」
「先ほどの話、全て誠なのか!? とても信じられん話が多いのだが!」
えぇぇ、さっきまで納得したような口ぶりだったじゃないか。
「いや、疑うわけではないが、エイン様があまりにもお優しいというか、気さくというか。ケースケ殿、本当にエイン様のお言葉をそのまま我らにお伝えしたのか!?」
そして僕は、長老だけではなく村人たちに取り囲まれた。全員の目が真剣そのものだ。
「頼む、ケースケ殿、もう一度精霊様の事を教えてくれ。ケースケ殿だけが頼りなのだ!」
あ、だめだこれ。デモンストレーション会の振り返りをしなきゃいけない流れだ。それ、後日にはなりませんかね。
「あ、フウコはその辺を散歩してこようかなー」
え、フウコ、それはずるいぞ。おーい、見放さないでくれー!
本投稿が今年最後の投稿となります。投稿を始めてからまだ2週間ほどですが、楽しく執筆を続けています。この調子で、来年も続けていければと思っています。
ところで、先日初めて週別ユニークユーザというのが100を超えました。数字は気にしないようにしようと思ってはいるのですが、少しずつでも読んでくれる人が増えてくるのはうれしいものですね。
これからも読んでくれる人が増えてくれるといいなあ。感想や評価なんかも、もし少しでも面白いと思われたなら、ぜひお願いしますね!




