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13 駄目なコンサル的説明、そしてコメントを頂戴しました

 「ご安心ください。木の精霊さんはこの力を皆さんに向けるつもりはありません」


 村人たちが僕に目を向ける。ある人は明らかに恐怖の表情だし、疑わし気な目線を僕に向ける人もいる。


 「木の精霊さんは、優しく穏やかな性格です。そして、皆様の助けになれればと考えています」


 「ケースケ殿、精霊が強力な力を持っていることは分かった。いや、正直に言って、さきほど目にした出来事がケースケ殿の力によるものか、それとも精霊という存在が実在しておりその力によるものか、未だに分からんが、ケースケ殿の働きによりすざまじい結果が生まれるのは理解した」


 あれ? 長老の評価は上がった気がするけど、思ってた感じと違うぞ? 精霊の評価が上がらなきゃいけなんじゃなかったっけ? 僕の評価が上がるのでこのデモンストレーションは成功なんだっけ?


 「だが、ケースケ殿の意図は今一つ分からん。聞かせてもらえないか。ケースケ殿は何がしたいのだ? 何を目的としている?」


 駄目だ、全然うまくいっていない。なんだろう、警戒心が半端ない。今思ったけど、もしかして僕は、力を見せつけて言うことを聞かせようとしているみたいに思われてないか? いや、僕は村のためになる提案を持ってきたはずだ。何とか立て直せ。


 「長老、それからシバ族の村の皆さん、聞いてください。僕は精霊の力を借りることによる村の状況の改善を提案します!」


 長老たちの頭にハテナマークが浮かんだ気がする。なんか、我ながら駄目なコンサルみたいなことを言っているよな。でも、もうこのままいくしかない。


 「僕の提案は、この木の精霊さんの力を使って村を魔物から守ることです!」


 僕の声がむなしく響き渡る。そしてみんなノーリアクション。沈黙が気まずい。なんか、風がヒューという擬音とともに吹いた気がしたけど、フウコがやったんじゃないよね?


 やばい、汗が出てきた。なんとかしなきゃと思うけど、いいアイデアは思いつかない。


 僕が固まっていると、長老がにらむようにこちらを見て話し出した。また厳しいご意見を頂戴するのか? だが、どんな厳しい言葉でも、気まずい沈黙よりもましだ。


 「それはつまり、儂らにも今のようなことが出来るということか?」


 「そう、そうなんです! 精霊と仲良くすれば、皆様も強力な精霊の力の恩恵を受けられるんです。そして、精霊と良い関係を築く機会なんてそうはない。つまり、これはチャンスなんです!」


 思わず力が入ってしまって、「今がチャンスです」とか通信販売の宣伝みたいなことを言ってしまった。きっと、こうやって誇大広告とかが生まれていくんだろうな。


 「たしかに、先ほどのようなことが儂らにも出来るのであれば、大きな力が得られるが…」


 「長老! そうは言いきれん! 何ができるのかしっかり調べるべきだ!」


 トゥハンが長老の言葉をさえぎる。くそ、ちょっといい方向に行きかけたのに! でもトゥハンのいうことはもっともだ。人が言ったことを鵜呑みにせず、ちゃんと確認することは大事だ。トゥハンはきっと日本に生まれていても誇大広告に騙されにくいタイプだな。


 「ケースケよ、答えろ! 先ほどお前がやって見せたことの全てが俺たちに出来るというのは本当か?」


 「まず、先ほどのことは精霊が行ったことで、僕は魔力を使ってもらったに過ぎません。まあ、その前に精霊と打ち合わせをして、何をするかは相談しましたが」


 「相談だと! お前は精霊と話せるのか?」


 「はい、僕は精霊と話すことが出来ます」


 「えっ」という声が聞こえた気がした。言ったのはトゥハンの妹(仮)かな。でも、そちらに目を向けたら、彼女はトゥハンの後ろに隠れてしまった。


 「それでは、我らも精霊と話すようになれるということか?」


 トゥハンの質問が続く。ちょっとトゥハンのにらむような顔が怖いのだけど、質問が沢山出るのは良いプレゼンの証拠だと聞いたこともあるし、少しずつでもいい方向に進んでいると思いたい。


 「残念ですが、それは簡単ではないでしょう」


 そうなんだよね。フウコやエインさんと相談してた時に確認してみたけど、精霊と話せるのは相当レアな能力みたいだ。ちなみに、なんで僕が精霊と話せるのかは2人にも分からなかった。


 「ならば、我らには精霊の力は使えないということではないのか?」


 「いえ、皆様と約束を交わすことで、木の精霊さんは魔物から皆様を守ると言っています」


 このことは、エインさんと事前に相談してある。ちなみに、約束ではなく契約という言葉を使った方が分かりやすいと思ったのだが、どうも契約という言葉は精霊にとってかなり特別な事らしく、約束という言葉を使うことに落ち着いた。僕がフウコに魔法を使ってもらうのも、別に契約をしているわけではないらしい。


 「それはつまり…」


 トゥハンの眉間のしわが深くなる。これは、村を守るというイメージがわいていないのかもな。他の人たちもピンと来ていない気がする。


 「つまり、先ほど見ていただいたように、林に入った魔物は精霊が狩ります。このあたりの魔物であれば、問題なく仕留められるとのことです。また、仕留めた魔物は皆様に提供可能です」


 「精霊は…精霊様は、我らを襲うことはないのだろうか?」「このような小さな林に入った魔物を仕留めるだけでは、とても村が安全になったなどと言えん!」


 長老とトゥハンから矢継ぎ早にコメントを頂戴した。


 「まず、木の精霊が皆様を襲うことがあるかということですが、精霊との約束を守る限り、皆様を守ると言っております。ただ、もし不安でしたら、木の精霊が攻撃できるのは林の中とその周りぐらいですので、林に近寄らなければ大丈夫です」


 「約束? それはどのようなものだ?」


 「それは、もう一つのご意見とも関係しますので、併せて説明させていただきます」


 うんうん、ちょっとずつ調子がよくなってきた気がするぞ。冷静にコメントをさばけている気がする。気が付くと、フウコが村人の後ろの方から顔を覗かせていて、僕を応援するようにこぶしを握った。


 フウコの心強い応援ももらったし、この調子で頑張ろう。きっと、ちゃんと説明をすればみんな分かってくれるはずだ。そう信じよう。

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