008_荷物が雪崩のように届く
翌朝。
俺はまだ布団の中でゴロゴロしていた。会社という呪縛から解放された人間の朝は、こんなにも軽いのかと感動してしまう。
ピンポーン。
ん? この時間に?
時計を見る。朝の9時。
「お荷物でーす!」
え、はやっ!?
順次発送とは?
玄関を開けると、爽やか系の配達員さんが、爽やかでは済まない“数”のダンボールを積んでいた。
「只野さんですね? あの追加あります」
「えっ追加?」
彼の背後から、さらに別業者のトラックが到着。
ゴロゴロゴロッ。
台車で大量のダンボールが運ばれてくる。
「こちらにも只野様宛てでーす!」
「すいませーん! 只野さーん! こっちもー!」
なんだこのカオス。
アパートの廊下が塞がるレベルで、俺宛ての“壊れた家電”が到着していく。
「え、順次じゃないの?」
完全に俺の想定を超えた。
最終的に
トラック3台分の荷物がすべて“本日お届け”にされたらしい。
「全部こちらでーす。サインお願いします」
「は、はい」
俺は震える手でサインした。
配達員3人がかりで、ダンボールの山を俺の部屋へ押し込んでいく。
「これ全部直すんですか?」
「すごい数ですね転売ですか?」
痛いところを突かれる。
「ま、まあそんな感じです」
「頑張ってくださいねー!」
去り際に応援までされてしまった。
ドアを閉めて、部屋を見渡す。
そこには、もはや“家電倉庫”と呼ぶべき光景が広がっていた。
「ちょっと待て。これ全部直すのか?」
リペアは壊れてる度合いを問わず、一瞬で直る。
問題は量がエグいこと。
冷蔵庫、電子レンジ、掃除機、ロボット掃除機、スマホ、タブレット、ゲーム機
そして何より“クーラー3台”は何なんだ。
「これもう倉庫借りるべきでは?」
完全に一個人の趣味の範囲を超えた。
俺は軽く深呼吸する。
「まあやるか。仕事辞めたんだ。これが俺の仕事だ」
壊れた家電の山に向けて、右手を掲げる。
リペア。
淡い光が広がり、そこら中から“直った音”が連鎖的に響く。
パキッ
チリッ
ウィィィン!
部屋中が修復のエフェクトで満たされ、ダンボールの山が“新品の家電展示会”のような輝きを放ち始めた。
「やば。これ、マジで商売成立するわ」
部屋は狭い。
でも心は広い。
俺は確信した。
ここが俺の新しいスタート地点だ。
そう思った瞬間、スマホが鳴った。
【メルカリ:出品中の商品にコメントがあります】
「は?」
出品してない。
コメントの内容を見ると
『只野さん、家電大量に仕入れてません?』
「こええよ!」
どこから情報漏れたんだ!?
いや、もしかして
配達員か
もしくはアパート住人がTwitterで実況でもしたのかもしれない。
背筋がゾワッとした。
「倉庫か事務所、マジで必要かもな」
俺のリペア能力、もう“趣味”では済まされないレベルに突入していた。




