006_元社畜、修復ビジネスの第一歩を踏み出す
初売上の興奮でテンションが上がっていた俺だが、
現実は静かに、しかし確実に牙をむいてきた。
スマホに新着通知が飛び込む。
【質問があります】
【質問があります】
【値下げできますか?】
【即決したいのですが状態を詳しく教えてください】
【購入検討してます!写真追加できますか?】
俺「め、めんどくせぇーーーー!!」
社畜時代より通知が多い気がする。
■ ■ ■ “新品とどう違うんですか?”
電子レンジを買った人から、一言。
【これ新品みたいですけど、本当に中古?】
(うわ来た一番めんどい質問!)
魔法で修復しました、なんて言えるわけない。
俺(落ち着け考えろ)
丁寧な文章をひねり出す。
「動作確認・整備・クリーニングを徹底的に行い、
できる限り良い状態に仕上げています。
そのため見た目や動作が新品に近い場合があります。」
すごい!
詐欺でも嘘でもない!
でも魔法って単語は一文字もない!
(俺、天才では?)
■ ■ ■ 初梱包 → 初発送
荷物が溢れた部屋の中で、俺は
プチプチを巻き、ダンボールを組み立て、
ガムテープを貼り、
完全に“出荷作業員”になっていた。
社畜時代の俺が聞いたら泣きそうな台詞が口から出る。
「仕事楽しいな」
魔法で修復 → 売れる → 発送
このサイクルが“俺の仕事”になるとは
先週までの俺は思ってもいなかった。
■ ■ ■ 売れた! 売れた! さらに売れた!
ポーン!
ポーン!
ポポポポポポーン!!!
スマホがバグったみたいに震える。
(えなに?)
売れた。
売れた。
また売れた。
朝に出した商品、夕方にはほとんどが売れていた。
俺「やっべぇぇぇぇぇぇ!!!
これ、月収軽く会社超えてる!!」
社畜退職から三日目。
収入がすでに会社員時代の月給を超えるとは。
(これもう、勝ったんじゃない?)
調子に乗った俺は、夕食のカップ麺に
卵を追加した。
※贅沢の象徴。
■ ■ ■ しかし、嵐の前触れ
その夜。
大量の荷物に囲まれたまま、
俺は一つの重要な事実に気付いた。
(あれこの調子で売れたら
俺、在庫足りなくね?)
そして
ピンポーン。
「只野さーん! 今日も荷物二十件です!」
部屋はすでに倉庫どころか
異世界のダンジョンみたいになっていた。
(やるしかねぇ。)
俺は覚悟を決めた。
次の段階は決まっている。
“仕入れ → 修復 → 販売”の完全ループ。
だがまだ知らなかった。
この翌日に、とんでもない事件が発生することを。




