005_只野、初めてのショップ開設へ
水曜日。
第二陣の荷物が玄関を埋め尽くし、
部屋が“高度な積み木パズル”みたいになった頃。
俺は気付いた。
(オークションだけじゃ回らねぇ)
家電の山を前に、膝を抱えて考える。
1個1個オークションに出す?
説明文を書く?
梱包する?
発送する?
(え、俺いま社畜時代より忙しくない?)
思わず天井を見上げた。
そのとき、頭の中に
昨日までの俺の声が聞こえた。
独立するんだろ?
稼ぐんだろ?
もう社畜には戻りたくないんだろ?
「やるか。」
俺はノートPCを開き、キーボードを叩いた。
■ ■ ■ まずは“店名”を決める
(せっかくだし店名つけたいよな)
思いついた案を並べてみた。
・激安!家電再生所
・リペアハウスただの
・奇跡の再生屋
・新品堂
・奇跡のフリマ社長
「全部ダサいな」
悩みに悩んだ末、シンプルに決めた。
【ただの修復店】
(由来:名字が只野だから)
まあ、わかりやすいし良いだろ。
■ ■ ■ ネットショップ開設
某ハンドメイドサイト、某フリマアプリ、
それからECショップ作成サービス。
よく分からんけど全部登録した。
写真も撮りまくる。
電子レンジを美しい角度で撮影しながら
俺はふと思った。
(これ、まさか人生逆転では?)
壊れたジャンク品を買っては
新品同様にリペアして売る。
在庫は山ほどある。
スキルはチート。
ライバルは皆無。
完全に“時代が俺に追いついた”感。
■ ■ ■ 出品ボタン、ポチッ!
電子レンジ(ほぼ新品)
炊飯器(新品レベル)
扇風機
掃除機(むしろ新品よりきれい)
徐々に出品ページが増えていく。
そしてついに
俺「うおおおおおおお!!!
売れたあああああああ!!」
初めての“売れました”通知が届いた瞬間、
俺は叫ばずにはいられなかった。
スマホを握りしめ、思わず立ち上がる。
(ヤベぇ脳汁出る!)
社畜時代。
上司にいくら頑張っても怒られていた日々。
それに比べて今は
自分のスキルで稼げている。
数字が全て俺のものだ。
(これだ! 俺はこの瞬間のために!)
■ ■ ■ だが、現実は甘くない
ピンポーン。
「お届け物でーす!」
俺「まだ届くの!?」
荷物はまだまだ来る。
玄関はすでに段ボールの壁。
そして次の通知。
【電子レンジ:購入者から質問があります】
「これ新品ですか?」
(ぐっ!)
“魔法の存在を説明するわけにはいかない”
という新たな問題が発生した。




