プロローグ
お読みいただき、ありがとうございます。
楽しんでいただければ幸いです。
今日も残業を終え、時計の針は日付を跨ぐ直前。
心も体も、残業代みたいにギットギトにすり減った俺
只野 仁は、ふらふらと駅前を歩いていた。
そんな俺の目に、不意に派手なネオンが飛び込んできた。
《再起! ライセンスアップアカデミー》
(資格か資格さえあれば、このクソみたいな会社から脱出できる!
もう上司のために死ぬのはゴメンだ!!)
気づけば、俺は雑居ビルの4階、怪しすぎる光を放つ受付カウンターの前に立っていた。
疲れ切った俺は、受付の女性に、つい心のダムを決壊させた。
「すみません何でもいいんで、この会社を今すぐ辞めて独立できる資格
どれですか?」
受付の女性は満面の笑顔を浮かべた。
しかし、目は一ミリも笑っていない。
「只野さんの“人生を変えたい”という熱意ビシビシ伝わってます!」
妙に圧のある声とともに、彼女はパンフレットをビュッ!と滑らせてきた。
「この時代に必要な資格を厳選して3つこちらです!」
指差した先には、物騒な肩書きが並んでいた。
■1つ目:ヒットマン
“依頼に応じて悪しき組織の癌細胞、つまり誰でも始末できる究極の浄化役!”
■2つ目:クリーンマン
“どんな汚れも瞬時に消し去る清掃スペシャリスト!”
■3つ目:リペアマン
“壊れたものを何でも直す万能修復士!”
(いや選択肢の意味どうなってんだこれ!?
ヒットマンだけ明らかに社会に出てきちゃいけないだろ!)
目の前のパンフの一番上に踊る文字に、俺はゴクリと喉を鳴らした。
「え? この『ヒットマン』って映画とかに出てくるあれ?」
「はい。依頼に応じて誰でも始末できます」
即答かよ。
その瞬間、俺の脳内には
パワハラ上司、無能役員、毎日残業を押しつけてくる社長
複数の顔が順番にスーッと浮かんだ。
(ああこれさえ取ればすべてが終わる!)
震える声で言った。
「じゃあ、俺はヒッ」
「分かりました! リペアマンですね!!」
食い気味に遮られた。
「はぁ!?」
「ですよねー! リペアマン一択ですよね!」
「いや今“ヒットマン”って」
「だってほら、リサイクル市場右肩上がりですし!」
「話聞いてました!? 完全にヒットマンの“ヒ”まで言ってたよね!?」
「ブラック企業で壊れた備品と人間関係を見続けた只野さんこそ、再生の象徴!」
「俺は壊れてない!!」
俺の抗議など一切聞く気なし。
受付嬢は高速で用紙を用意した。
「はい、リペアマン講座申込書です!
お支払いはカードか現金でーす!」
「いやカード出してないよね!? 出してないって絶対!」
「はいカードですねー!」
俺の手にカードを握らせた記憶がない。
というか、気づいたらもう支払いが終わっていた。
控えを見て、俺は白目を剥いた。
講座代金:30万円(一括)
(俺、催眠でもかけられてる?)
「では只野さん! 今から講座に入りまーす!」
「今から!? 週末の22時だよ!?」
「大丈夫です!うちは“本気の方”だけを育てていますので!」
腕をつかまれ、強制的に薄暗い講義室へ連れて行かれた。
30分ほどの謎の講義を受け、最後に
“リペアマン資格認定証”
なるものにサインさせられて講座は終了した。
認定証の中央には、見たこともない奇妙なエンブレム。
そして裏面には細かい文字でびっしりと説明が書かれていた。
俺はこの出会いの意味を理解してはいなかった。
最後までお付き合いいただき、ありがとうございました!
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