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一夜開けても和彦の目は見えないままだった。
地元の病院で診察を受けた。視神経に永久的な支障はないとのことで、当の和彦よりもフォウが安堵に胸わ撫でおろした。ただ、強い刺激を受けた影響は、数日は続くだろうという診断だった。
和彦が無事だったのとは別に、帰りのバスの運転手がいなくなってしまったので、一同は途方に暮れた。
バスなら俺も運転できるとフォウは言うが、いくらなんでも無免許の外国人に長距離の運転をさせるのは恐ろしすぎる。
幸い、地元民の中に大型二種免許を持っている人がいて、快くピンチヒッターを引き受けてくれた。
あのチンピラどもにさんざん迷惑をかけられていたとのことで、警察に引き渡してくれたお礼とのことだった。
同じく地元の好意によって、和彦は視力が回復するまで、病院で無料の精密検査と治療を受けることになった。バスに乗って帰ったところで和彦たちの村に目医者はいないので、ありがたい申し出ではあった。
フォウも当然、そのつきそいで残留である。フォウの滞在費も町が負担してくれるという話なので、和彦も遠慮なく好意を受けることにした。
「珊瑚ちゃん、ずいぶんしょげてたな」
「巻き込んでしまったと思ってるんだろう。お医者さんの話では視力も徐々に戻ってくるそうだから、気にしないようにとは言っておいたんだけどね」
氷浦教授にも電話で連絡は入れておいた。いっそ休暇をもらったと思って、二人でのんびり温泉に浸かってくるようにという太っ腹のお言葉であった。
「けど、目が見えなかったら、一人で湯に入るのは危ねえだろう。俺が一緒に入ってやるよ」
いいのかい、と言いかけて気がついた。
和彦が何も見えなければ、フォウも自分の火傷に怯える必要はないわけだ。
そういう意味では、目が見えなくなってよかった。
などと言ったらフォウにがみがみ叱られそうなので、和彦は黙って微笑みを返すだけにしておいた。
「珊瑚ちゃんの受け売りだけど、なんでもこのあたりの湯は、弱った神経に効くらしいぜ。和彦さんの視神経にもいいんじゃねえかな。あーあ。これが本当の意味の湯治ってやつになっちゃったな」
大きく伸びをして、フォウがぼやいた。




