皆が幸せならそれでいい ~異世界にて写真屋さん~
写真で皆を幸せにしたい少年の話。
「オレたち卒業したからさ、シャシン撮ってくれよ!」
「いいね、卒業か」
勇者見習い、いや、卒業したから勇者か。笑顔のその人に、僕は微笑んで返す。
メンバーは、いつものメンバー。
勇者に、魔法使いに、ギルドの受け付けを目指していた少年。ギルドに就職できていたら、いいな。
テストで良い点を取った記念、初めてダンジョンに潜った記念、よく僕の店を利用してくれていた。
卒業、か。いいね、うん。
「笑顔?」
「私は真面目な顔、偉大な魔法使いになるんだから!」
「ぼくは微笑んで、かな。受け付けらしく。何に使われるかわからないし」
「~っ、決めた! オレら皆笑顔!」
「「えー!」」
「今のオレらを撮るんだよ! それに、撮ったシャシンは皆が持って大切にするんだ、誰にも見せない!」
「「はー!?」」
「いいから! 勇者見習い、いや、勇者命令!」
「「仕方ないなあ、もう」」
僕は、微笑んでそのやりとりを見る。
いいなあ、本当に。
そして、撮る。
3枚。
「今回のお金は、いつもよりも多いぜ!」
笑顔で勇者は渡してくる。
お代は気持ちで、僕は指定しない。
皆が幸せなら、それでいい。
金額を見て、僕は目を丸くする。
「今までの感謝もこめて」
「いいの? 本当に」
「いいんだって!」
魔法使いも、ギルドの受け付けの少年も、笑顔で見てくる。
「じゃあな! 偉大な魔法使いにギルド長!」
「あんまり無茶しないでね、勇者だからって。挑戦することは怖くないだろうけど」
「ギルド長にぼくはなるから、偉大な魔法使いと真の勇者になったら自慢してあげるね、皆に」
バイバイ、と手を振りながら別れていく。
「さて、暗くなったし帰るか」
店の隣にある、僕の家。
「卒業、卒業か」
歩きながら、呟く。
つい、ポケットに手を入れてしまう。
けど、すぐに手を出す。
涙も、我慢する。
「皆に会いたいなあ」
家に入り、口にする。
そして、ポケットの中にある写真を取り出す。
「異世界に来ちゃったし、皆も卒業しただろうし。もう会えないんだよな」
思い返す。
異世界に来て、約1年。
元の世界の思い出を全て思い出す。
楽しかった、学校生活。
忘れたくないから。
『高校卒業の前日に撮った、クラスの集合写真』
僕は卒業できなかった、撮ったその日に、こっちに来てしまったから。
皆は、卒業したのだろう。今、元の世界に戻れても、皆バラバラだから、誰にも会えないのだろう。
元の世界も大切だ。
けど、それでも、僕はこちらの世界も大切にして、皆を写真で幸せにしたい。
涙をぬぐいながら、僕はうなずいた。
読んで頂き、ありがとうございました。




