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皆が幸せならそれでいい ~異世界にて写真屋さん~

作者: 前世KIZUNA
掲載日:2025/11/12

写真で皆を幸せにしたい少年の話。

「オレたち卒業したからさ、シャシン撮ってくれよ!」

「いいね、卒業か」


勇者見習い、いや、卒業したから勇者か。笑顔のその人に、僕は微笑んで返す。

メンバーは、いつものメンバー。

勇者に、魔法使いに、ギルドの受け付けを目指していた少年。ギルドに就職できていたら、いいな。


テストで良い点を取った記念、初めてダンジョンに潜った記念、よく僕の店を利用してくれていた。


卒業、か。いいね、うん。




「笑顔?」

「私は真面目な顔、偉大な魔法使いになるんだから!」

「ぼくは微笑んで、かな。受け付けらしく。何に使われるかわからないし」

「~っ、決めた! オレら皆笑顔!」

「「えー!」」

「今のオレらを撮るんだよ! それに、撮ったシャシンは皆が持って大切にするんだ、誰にも見せない!」

「「はー!?」」

「いいから! 勇者見習い、いや、勇者命令!」

「「仕方ないなあ、もう」」


僕は、微笑んでそのやりとりを見る。

いいなあ、本当に。


そして、撮る。

3枚。


「今回のお金は、いつもよりも多いぜ!」

笑顔で勇者は渡してくる。

お代は気持ちで、僕は指定しない。

皆が幸せなら、それでいい。

金額を見て、僕は目を丸くする。

「今までの感謝もこめて」

「いいの? 本当に」

「いいんだって!」

魔法使いも、ギルドの受け付けの少年も、笑顔で見てくる。


「じゃあな! 偉大な魔法使いにギルド長!」

「あんまり無茶しないでね、勇者だからって。挑戦することは怖くないだろうけど」

「ギルド長にぼくはなるから、偉大な魔法使いと真の勇者になったら自慢してあげるね、皆に」

バイバイ、と手を振りながら別れていく。




「さて、暗くなったし帰るか」

店の隣にある、僕の家。

「卒業、卒業か」

歩きながら、呟く。

つい、ポケットに手を入れてしまう。

けど、すぐに手を出す。

涙も、我慢する。




「皆に会いたいなあ」

家に入り、口にする。

そして、ポケットの中にある写真を取り出す。

「異世界に来ちゃったし、皆も卒業しただろうし。もう会えないんだよな」

思い返す。


異世界に来て、約1年。

元の世界の思い出を全て思い出す。

楽しかった、学校生活。

忘れたくないから。


『高校卒業の前日に撮った、クラスの集合写真』


僕は卒業できなかった、撮ったその日に、こっちに来てしまったから。

皆は、卒業したのだろう。今、元の世界に戻れても、皆バラバラだから、誰にも会えないのだろう。


元の世界も大切だ。

けど、それでも、僕はこちらの世界も大切にして、皆を写真で幸せにしたい。


涙をぬぐいながら、僕はうなずいた。

読んで頂き、ありがとうございました。


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