(2-2)
「おいしそうに食べるねえ」と、おばちゃんがにっこりしながら丸いパンをどさっと置く。
表面はカリッカリ、小麦の香ばしい焦げ目。
手でちぎるとパリッと音が立ち、中はふわふわ。
シチューに浸すと、じゅわっと吸いこみ、香ばしさとクリームの甘みが倍増する感じだ。
このパンだけで腹いっぱいだなと思ってるうちに、今度はステーキが運ばれてきた。
「ラザミア名物ドラゴンステーキだよ」
ジュウウウウッと音が鳴る鉄板の上には岩かというくらいの巨大リブ。
表面は炭火でカリッカリ、ナイフを入れると、ドバッとあふれた肉汁がシュワワッと軽やかに弾ける。
炭火の焦げ目となんかのハーブと岩塩の三重奏。
一口目は外がカリッで中はジューシー。
肉の繊維がほろりとくずれ、旨味が爆発。
喉を通る瞬間、体が震える。
「……生きてるって感じ、最高だ」
全部あっという間に食い終わると、おばちゃんが小さな器をテーブルに置いた。
「これ、おまけね」
シャリシャリの黄色いかき氷だ。
早速一口。
レモンの酸味が舌を刺激し、ハチミツの甘さが追いかけてくる。
ハチミツレモンシャーベットか。
肉の脂をさっぱりリセット。
「これは完璧なデザートだな」
味わっていると、隣の席から冒険者っぽい男たちの話が聞こえてきた。
「おい、明日のコロッセウムの賭け、どうするよ」
「三百勝達成のリアナだろ。鉄板過ぎて掛け率がな」
「負けるわけねえからしょうがねえよな」
――へえ、そんなやつがいるのか。
思わずニヤリ。
ま、俺なら負けねえけどな。
ちょいと指を鳴らせば秒で決着だろう。
明日なら、行ってみるかな。
飯を食い終わると、頭の中に女神の声が聞こえた。
「ふふ、次は何を改変するの!?」
「めんどくせぇけど、大会に出るには冒険者にならなくちゃならないんだよな。ギルド行ってみるか」
外へ出るとすぐに看板が見える。
冒険者ギルドは木と石を組み合わせた大きな建物だ。
入口扉の上で、厳めしい剣と盾の彫刻が俺を見下ろしている。
「登録とかめんどくせぇな」
でも、入ってみる。
カウンターにいる茶髪ポニテの可愛い受付嬢が声をかけてきた。
「初めての方ですか? 登録をお願いしますね。登録料百ゴールドです!」
やっぱり、めんどい
(思考改変)
ギルド制度は俺には無意味。
パッチンと鳴らした瞬間、その指に光るカードがはさまれていた。
スーパーレア!
キラキラのホログラムが虹色に輝き、表面には∞マークの浮き彫り、それを撫でるとビリビリ電気が走るみたいだ。
裏面は金箔で《アルス・エターナル》と刻まれてる。
周囲の空気が歪むほどの魔力を放ち、受付嬢の目が点になる。
「ひぃぃ!? 無限ランク!? こんなキラキラカード、伝説級ですよ!」
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