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100年の恋〜君に捧げる永遠  作者: 愛龍


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16

撮影を終えた夜、その日ピエトロのお店は貸し切りだった。


イタリアンのオリーブオイルの香り。窓の外にはライトアップされた桜並木が見えていた。

丸いテーブルの上には白い皿と、春野菜の彩りが美しい前菜。

穏やかな音楽が流れ、グラスの中のワインがゆらりと揺れる。


俊和がグラスを持ちながら、しみじみと笑った。

「……まさか、本当に三ヶ月で結婚するなんてな。」

「まだ言ってる」

と京香が呆れたように肩を竦める。

俊和はため息をひとつ。

「俺も父親だから、娘が幸せそうなのは嬉しいさ。

けどな、やっぱり少しは複雑なんだ。」


そこへ雪絵がワインを注ぎながら微笑む。

「おじさん。お久しぶりです。」

「おお、雪絵。元気そうだな。」

「はい。……

大丈夫ですよ、あの二人は絆が強いから。」


俊和が目を細める。

「そうなのか。」

「ええ。」雪絵は穏やかにうなずいた。


やがて、スーツ姿の高瀬が立ち上がり、俊和に名刺を差し出す。

「はじめまして。藤宮大地の上司の高瀬隼人たかせはやとと申します。」

俊和が受け取り、軽く会釈する。


「藤宮は優秀です。責任感が強く、約束を違えない。

……きっと、お嬢さんを死んでも守ります。」


俊和は一瞬、言葉を失った。

やがて、ゆっくりとグラスを掲げる。

「そうか……安心した。新しい息子は、上司にも恵まれてるみたいだな。」


高瀬が微笑み、雪絵も静かにうなずく。

そのやりとりを見ながら、京香がグラスを掲げた。

「じゃあ、改めて――千沙と大地さんの門出に。」


乾杯の音が響く。

グラスが触れ合う音が、まるで桜の花弁が落ちるように優しく広がった。


テーブルの下で、千沙の手をそっと包む大地。

「……これからも、よろしくな。」

小さな声に、千沙は微笑んでうなずいた。

「こちらこそ……ずっと、ずっと側に…」


賑やかな笑い声と風と桜のハーモニーが二人を祝福する夜だった。

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