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スキル【封印】の出番

 なんだかんだで私は六歳になった。


 身長も伸び、料理をお手伝い出来るようになったので、料理長と一緒に、毎日新しいレシピ開発に励んでいる。


 そう。この世界に来て、ただ料理を作ったりお勉強をしているだけで、強くなる事は一切していない。


 得たスキルを使った事がないのだ。


 これって良いのかな? このままだと最強のラスボスになれない気がするんだけれど……。


 新淵の森に行き、魔獣や魔物のスキルを封印したりして、強くなった方がいいのでは? と思った時にお父様に相談したら、『レティは小さいのに、そんなことしなくていい』と言われ今に至る。


 まぁ、ラスボスになりたいわけではないので、このままスキルを使わずお料理したり、お勉強したりして過ごすのでもいいのかもしれない。


「料理長! 今日は家族に大人気の【ビーフカツ】を使ったアレンジ料理を作りますよ」

「あの最強レシピ! ビーフカツのアレンジ!? 食の女神様に愛されているレティシア様のアイデアは、本当に素晴らしいですね!」

「えへへ……褒めすぎだよ」

「何をおっしゃいますやら! 【レティ食堂】は毎日行列で、今やドンバッセル領で一番人気の食堂じゃないですか! 観光客の名物ですよ」


 そうなのだ。色んなレシピを料理長と作っているうちに、お父様が『こんなに美味しい料理を、領民にも食べさせてあげたい。そうだ! レティのお店を出したら良いんじゃないか?』などど言い出し。


 あれやあれやという間に【レティ食堂】が完成した。


 レティ食堂は瞬く間に人気を博し、今五号店を建設中だ。


 そう、まさに今の私は食の無双をしている。


 食に乏しいゲームの設定を知っているから、ちょっとズルをしているような気分。まぁ、ゲームではなく、この世界は現実世界なので、ズルではないのだけれど。


 


「レティ今日の料理はなあに?」



 ジュエルお兄様が調理場にやってきて、料理の作業をのぞく。


「ふふふっ、今日はこのビーフカツを使った新メニュー、特製カツ丼です」

「カツ丼!? また新しいメニューだね。ビーフカツだけでも美味しいのに、今日の夕食が楽しみだよ」

「楽しみにしてくださいね」

「じゃあ僕は剣の稽古に行ってくるね」


 十歳になった四男のジュエルお兄様は、以前の愛らしい姿を残しつつ成長した。剣と魔法のどちらにも実力があるらしく、この前もお父様から絶賛されていた。


 長男のアレクサンダーお兄様は、十四歳という若さで剣聖と言わしめるほどの剣の頭角を表している。


 双子のリンネお兄様やネイトお兄様はまだ十二歳なのに、魔法師団に来ないかと勧誘されている。

 お兄様たちの強さがやばい。もちろんドンバッセル領の騎士団の人たちの強さもやばい。

 分かってはいたけれど、ドンバッセル領にいる人たちみんなが強すぎる。


 さてとカツ丼作るぞー!



★★★




 新メニューであるカツ丼は、大盛況で終わったのだけど。

 なんだろうこの空気。

 夕食後。大事な話があるとお父様が言い、私たちは席に座りお父様の発言を待っているのだけれど、そのお父様が中々口を開かない。


 どうしたというのだ。


 眉間に皺を寄せ、いつもの優しい表情はどこにいったのかと。


「……マーガレットには話したんだが、魔王が復活した」


 え!? 魔王!? この世界に魔王とかいるの?

 ゲームではそんな話知らない。

 そもそもスタート時が十六歳からなので、この六歳の時期に起こるイベントなんて知らないから当たり前か。


「え!? 魔王復活!? 早くないですか」

「そうですよ! 前回に魔王が現れたのは百年前ですよね」

「魔王の復活って三百年周期だと文献に書いてました」

「魔王早い」


 お父様の言葉を皮切りに、お兄様たちが次々に声を上げる。


「お前たち落ち着け! 今回の魔王はさらに厄介なんだ」


 お父様が声を荒げお兄様たちが黙る。

 さらに厄介ってどういうこと!?


「今回現れた魔王は、数千年に現れると言われている厄災の魔王だ」

「ちょっと待って! 嘘でしょ!? ダクネル、その話は聞いてないわよ!」


 お父様の話を聞いてお母様が声をあげる。


「厄災の魔王が現れると全ての国が滅びるって……」

「前回現れたのは三千年前……」

「そんな最強の厄災の魔王にどうやって戦えばっ」


 お兄様たちが顔を青ざめ動揺している。


 ちょっと待って、そんなやべぇ魔王復活って……あれ?

 私、断罪後にスローライフ楽しむどころか、六歳で人生終わりそうなんだが。


 嘘でしょー!?


「その厄災の魔王討伐を、我がドンバッセル領に王命で依頼が来た」


 王様ご指名!? 確かにドンバッセル領は、最強武装集団だとは思うけれど。

 

「どうしてですか!?」

「なぜドンバッセル領を!?」

「確かに我がドンバッセル領は、最強の武勲があると思ってますが」

「さすがに我が領だけで厄災の魔王を討伐するのは無理かと」

「うん」


 お兄様たちがさすがに無理だとお父様に詰め寄る。

 さすがに私も同感です。王様無茶振りすぎ。


「これには理由があるんだよ」

「え? 理由ですか?」


 一番先に長男のアレクサンダーお兄様が声を上げた。

 私も理由が知りたいです。


「レティのスキル【封印】が理由だ。過去に魔王のスキルを、封印で封じて討伐した文献が残っていたんだ。今この国でその封印を持っているのはレティだけ、だから我が領に魔王討伐の王命が来たんだ」


 えっ……ちょっと待って!?

 てことはだよ? 封印の力を魔王に使うってことは。

 レティシアが最強になるのって、厄災の魔王の力を得たからじゃ……。


「ですがお父様! レティはまだ六歳ですよ!?」


 四男のジュエルお兄様が私の肩をだき心配してくれる。


「そうですよ! 普通の魔王なら封印できるかもですが、今回現れたのは厄災の魔王ですよ? 封印できなかったらどうするんですか」


 アレクサンダーお兄様も私のところに来て不安そうに私を見る。

 大丈夫ですよ。


「そんな危険な場所にレティを連れて行くのは反対です」

「うん、同意」


 双子のリンネお兄様とネイトお兄様がお父様のところに詰め寄る。


 お兄様たちが心配してくれる。

 でも大丈夫ですよ。私、そこで最強になるんです。


「私、厄災の魔王のところに行きます!」


 ずっと沈黙していた私が発言すると。


「「「「「ファ!?」」」」」


 私のこの一言に、家族全員が口をあんぐりと開け固まった。

 

 だけど、安心してください。私、魔王のスキル奪うので。

読んで頂きありがとうございます。少しでも面白いと思って頂けたなら、ブクマや★評価レビューなど頂けると嬉しいです!執筆のやる気に繋がります。何卒m(*_ _)m

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