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ハンバーグ革命

「レティ、来週は三歳の誕生日だね。どんなスキルが貰えるのか楽しみだね」

「あい! 楽しみれち」


 この世界では三歳になるとスキルが得られる。この時にレティシアは最強になれるレアスキルが貰えるのだ。


 あれから半年がたった。この小さな体にもだいぶ慣れてきた。

 初めは体を動かすことさえかなり難しかった。

 小さな体って、何をするにもこんなにも大変だったんだと、改めて理解する。

 

 今日は目標であった、美味しいご飯の改革を決行しようと思っている。


「にちちっ! 料理ちょにつくて貰うんだ」


 何を作ってもらのかは決めている。

 そ、れ、は、大人も子供も大好きなハンバーグ。


 こっそり調理場に行って調味料などを確認したら、塩、胡椒、醤油、砂糖、お酢などの基本調味料は揃っていた。あとは少しの香草。

 この世界の料理は良い言い方をすると、基本素材の味を生かした料理。

 だけど、それだと飽きるんだよねー。


 前世で色んな美味しい料理を食べていたから。


 ケチャップやマヨネーズなんかは簡単に作れるから、それらも増やしたいところ。

 とりあえず今日はハンバーグと、あとはケチャップを作って美味しいソースも作るんだ。にしし、楽しみー!


「レティどうしたの? ニコニコしながら歩いて」

「ジュエルにいしゃま!」


 調理場に向かう途中、四男のジュエルお兄様とすれ違った。

 他のお兄様たちは剣と魔法のお稽古中なんだけど、ジュエルお兄様はまだ六歳なので稽古中は自由時間なのだ。

 七歳から始まる稽古をジュエルお兄様は心待ちにしているようで、お兄様たちの稽古をよく一緒に覗きに行っている。


 前世大人だった自分からしたら、兄たち全員小さな子供、それをお兄様と呼ぶのにも初めは抵抗があった。

 まぁ流石に慣れたけれど。


 お兄様たちは私を溺愛してくれ可愛がってくれるし。

 前世で無条件に愛されるなんてことなかったから、嬉しい反面むず痒い。


「ええちょ、今から調理場に向かいまち」

「え? 調理場に? 何しに行くの?」

「料理ちょに用事があって、やくしょくしてるの」

「ええ? 料理長と約束? 気になるなぁ、僕も一緒に行く」


 なんとジュエルお兄様がついてくる事になった。


 二人で仲良く調理場に向かうと、料理長がすでに待機して待ってくれていた。


「おお、ジュエル様もご一緒で」

「うん。そこで偶然レティに会ってね。僕もついてきたんだ。二人で何をするの?」

「レティシア様から料理の相談があると言われまして」

「料理の? そうなのレティ?」

「あい! 新しゃく料理をちゅくってもらいたいんれす」

「「新作料理!?」」


 私がそう言うと二人が声を合わせて驚いている。


「あい、料理ちょは私が言うとうりに料理をちゅくって欲しいんれす」

「レティシア様の言う通りにですか……」


 料理長が複雑な表情で私を見つめる。まぁそうなるよね。

 二歳の子供の言う通りに作れって、令嬢のおままごとに付き合わされるようなもんだもの。


「まぁ、料理長。作ってみてあげてよ、レティに何か思いつきがあるんだよね?」

「もちろんでち!」

「ジュエル様までおっしゃるなら……分かりました。作ってみましょう!」


 ジュエルお兄様が後押ししてくれるなんて! グッジョブです。


 まずはトマトケチャップから先に作ってもらおうかな。煮詰めたりしないとだし。


 私は奥に並べられている野菜から必要なものをとりテーブルに並べる。

 スパイスが欲しいところだけれど、ないからそれは諦めよう。


「料理ちょ、このトマトを細かく切っちぇお鍋でにちぇ、このニンニクと玉ねぎはスリおろちてくだちゃい!」

「はぇ!? すりおろす!? レレッ、レティシア様。そんな料理の工程をどこで……!?」

「閃いちゃんでち。そのあとザルでこしてくだちゃい」


 驚きつつも言われた通りに料理長は工程をこなしていく。


「トマトの中にニンニクと玉ねぎも、ちゃらに砂糖と塩も入れて煮詰めてくだちゃい」

「ははっはい!」


 ジュエルお兄様はワクワクしながらその一連の作業をみている。


 あとはお酢を入れたら完成。


「完成でち!」

 

 真っ赤に煌めくトマトケチャップが目の前に! どれどれ味み。


 料理長からスプーンを受け取り、三人同時にトマトケチャップを口に入れる。


「うんまぁぁぁぁぁい」

「おっ美味しい!」

「ここっ、これはなんて旨味!トマトの味に奥行きがこれは味の革命!」


 料理長……スプーンを握り締めて、なんか大興奮している。


「レティシア様は天才ですか!? こんな料理を思いつくなんて」


 瞳を輝かせ料理長は私を大絶賛してくる。

 だけど本番はこれからですよ?


「料理ちょ。次はメインのおにきゅ」

「はい! お任せあれ」

「このおにきゅを細かくミンチにしてくだちゃい」


 初めは半信半疑だった料理長も、さっきのトマトケチャップで信頼を得たのであっという間にハンバーグが完成した。


「こんな肉料理初めてみたよ……」

「ジュエル様、私も同感です。早く味見がしたいです」

「まだまだでちよ! 仕上げのソース作りまち」

「あの赤いソースはまだ完成じゃない!?」

「あれを使って仕上げを作るんでち」

「なんと!」


 バターを溶かしてそこにトマトケチャップと醤油を投入し混ぜあわせるそこに赤ワイン入れて少し煮詰めたらソースの完成!


「これをさっきのおにきゅにかけてかんちぇ」

「なっなんて食欲を誘う香り! 早く食べましょう」

「うん。こんな美味しそうな香りたまんないね」


 フォークをとり再び三人一斉に口にハンバーグを頬張る。


「うんまぁぁぁぁい! こりぇこりぇ」

「美味しっ、僕こんなに美味しい料理初めて食べたよ」

「私もです。私は感動して涙が溢れて止まりません」


 ジュエルお兄様は美味しい美味しいとハンバーグを口に入れている。

 なんだか嬉しいな。美味しいの共有は、幸せをわけあっているみたい。


「レティシア様この料理は一体」

「これぇはハンバーグでち」

「ハンバーグ……レティシア様が考えた名前なのですね! 全てメモりました」


 私が考えた名前ではないんだけれど、言っても仕方ないのでそうしとこう。


「では今日の夕食はハンバーグをだしちぇくだしゃいね」

「かしこまりました! お任せください」


 この後、夕食にハンバーグが出されると。

 家族から大絶賛。


「なんだこの美味さは! もう毎日これでいい」

「本当ですわ! 口の中が幸せで飲み込むのが惜しい」

「かかってるソースも美味しいね」

「うん最高においしー」

「うまい」

「ふふっ、僕は一番初めにレティと食べたんだ」


 この後、料理長がいかに私が凄いかを熱く語るもんだから、家族からの賞賛の嵐が止まなかった。


 のちにこれはハンバーグ革命と言われ、ドンバッセル領で大人気のレシピとなるのだった。

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