ラスボスにはなりません!
なぜレティシアがラスボスになるのか。
トリガーは婚約破棄。
第二王子であるエリックの事が大好きだったレティシアは、婚約破棄されて闇堕ちし。身勝手に婚約破棄した第二王子に対し、レティシアを溺愛する家族も激怒。
ドンバッセル領の精鋭達VSエンディバン王国の戦いが始まる。
この戦いが始まらなければ、私はラスボスにもならないんだけれど……う〜ん、どうしたら。
「あっ!」
これって、婚約破棄されても私が闇おちしなければ良いわけで……あれ?
もう問題解決!?
確か設定では、第二王子との婚約は六歳って書いていた。
よし、私は第二王子の事を好きになんてならないし、さっさと断罪されてそれからの自分の楽しみを見つけたら良いんだ。
断罪後のやりたい事リスト作らなきゃ。
ラスボス転生。最悪かもと思ったけれど、うまくやれば最高かもしれない。
前世では仕事に追われて、何も好きなことができないまま終わった人生だった。
今世ではラスボスだけど、好きに生きるんだ。
食べることが大好きだったから、お美味しいものを食べ歩きしたいし。
色んな国にも行ってみたい。好きな野菜を育てて自給自足もいいなぁ。
「ふふっ」
考えたらワクワクしてきた。
ゲームのスタート前のレティシアのことは全く分からないけれど。
いける気がする。
★★★
扉がノックされた。
私は急いで寝台にもどる。
メイドが扉を開くと。
「レティ、夕食の時間なのだけれど。体調はどうかしら?」
「いししっ、今日はねーお肉スペシャルだよ」
「食べよ」
お母様と双子の兄リンネ様とネイト様が部屋に入ってきた。
次男リンネ様の髪色は金色をしていて、三男ネイト様は蒼い髪色をしている。お母様と同じ
蒼なんだけれど、お母様の髪色は水色に近い。
二人の性格は真逆なようだ。リンネ様は陽気な感じで、ネイト様は寡黙で口数が少なく表情が読めない。
「げんきになちゃ!」
次の瞬間。ギュルルルルルルッっと私のお腹の音が盛大に鳴り響く。
「あうっ」
恥ずかしくて顔が火照る。
このタイミングでお腹の音が鳴るとか……神がかってる。
「あはははっ。レティお腹が空いたんだね」
「良かったわレティ。さ、美味しいご飯を食べましょう。みんなが待っているわ」
「行こ」
二歳児でよかった。恥ずかしすぎるこの状況、全く気にしてない様子でお母様が私を寝台から抱き上げると、そのまま夕食会場へと連れて行ってくれた。
私たちが到着すると、席にみんな座っていた。
「レティの席は僕の隣だよ」
私の席は一番末のお兄さま、四男ジュエル様の隣のようだ。大きな瞳に癖っ毛の緑色の髪色が愛らしい。
少し高めの子供用の椅子に着席すると「元気そうな顔が見れて良かったよ。弱った体にいきなり肉は無理だろうから、スープを用意したよ」とお父様が言うと私の前にスープが運ばれてきた。
「今日も美味い飯が食べれることを軍神様に感謝し飯を食べよう」
お父様の言葉を皮切りに、皆が一斉に食事を始める。
目の前にどんどん大きな肉塊が運ばれてくる。
なななっ? この料理は一体……。
お父様もお母様、それにお兄様たちみんなも、大きな漫画肉に齧り付いている。
一応フォークとナイフを使っているけれども……。
すごい食事だな。海賊飯みたいだ。みんなの食欲の凄さに呆気に取られててスープを飲むのを忘れていた。
とりあえず、目の前のスープを飲みますか。
ゴクッと口に入れると……。
う〜ん……なんだこの味。ものすごく微妙。
味つけは塩と胡椒? 小さく切った肉と野菜……野菜や肉からいい出汁が取れていない。脂ぎっている。灰汁もとってない。
なんでこんなに食のレベルが低いの?
「あっ!」
そうだったこの世界って料理レベルをわざと低くしてるんだった。
「うん? どうしたのレティ?」
急に叫んだから隣のジュエル様が不思議そうに私を見る。
危ない危ない。気をつけないと。
「シュプおいちい」
「ふふっ、なら良かった」
戦闘無双だけじゃなく、料理無双したり薬草無双したりと、色々と楽しめるように料理があまり美味しくない。
ポーションだってレベルの高いのは販売していなく。ダンジョンにしかハイポーションなどはないので、高クオリティのポーション作って稼いでいる人だって大勢いる。
色々な香草を駆使し美味しいカレーを作って人気カレー店を経営している人もいるし。
よし、私も食事の改革をする!
早くしたいけれどまだ二歳。自分で作るなんてまず無理、ちゃんと喋れないから料理長に作ってもらおうにも、上手く伝える自信がない。
えーん。当分はこの料理で我慢するかぁ。