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8話

8話


教室の窓にあたたかい日差しが差し込む。


今日もエビネのいる教室は整然とした空気に包まれている。上品な刺繍が入った制服に身を包んだ生徒たちは

皆それぞれの席に腰掛け真剣な表情で先生の言葉に耳を傾けていた。



「さて、本日の授業を始めましょう。」


先生はそう前置きすると

ゆっくりと教室内を見渡した。


「この学園には、将来“騎士”あるいは“魔法使い”を志している生徒も多いと思います。」


「本日はそれぞれがどういった道を歩めばその職に就けるのか」


「また普段どのような任務を担っているのか。

そのあたりを詳しく解説いたします。」



教室の空気が少し緊張を含んだものに変わる。



「まず“騎士”について。

基本的に騎士団へ所属できるのは、“無属性”すなわち身体強化の魔力を持った者のみです。」


「それに加えて非常に難しい試験に合格する必要があります。これは身体能力、精神力、魔力制御、そして忠誠心。すべてを厳しく問われるものです」



教室の後方で、何人かの男子生徒が小さく息を呑んだ。

貴族ならば知っている人は知っている情報なので

おそらく平民だろう。



「また、騎士団の主な職務は、王都の警護と魔物狩りです。国の安全を守るため、常に危険と隣り合わせの仕事といえるでしょう。」



幼い頃に魔物に襲われたことを思い出し

エビネは思わず背筋を伸ばした。



「次に“魔法使い”ですが、こちらは身体強化以外の属性炎、水、土、風、雷、――いずれの属性でも、相応の実力があれば試験を受ける資格があります。」


 先生は続けた。


「ただし、こちらもやはり難関です。試験内容は、魔力の精度と制御、魔法理論への理解、さらに実技演習など。」


「魔法使いになるには、研鑽と知識、そして才能が必要とされます。」


「そして魔法使いはどのような任務をこなしているか。

主な業務は魔法の研究です。これは、新しい魔法の開発や、既存の魔法の改善などが含まれます。」



「次に魔力の提供です。王都の下水道の維持や、街灯の点灯、あるいは医療施設への供給など。日常生活に密接した任務が多いのです。」



 エビネは「へぇ……」と心の中で声を漏らした。



王都以外では魔力持ちが少ないため、

魔力を補充せずに魔物から取れる使い捨ての魔石で

街灯や下水道の維持をしているからだ。


「そして、年に1度の騎士団との共同魔物狩りです。

騎士と同じように危険な任務も存在します。

ただし、魔法使いは基本的には後方支援や遠距離攻撃が役目となります。」


 先生は黒板に図を描きながら、年に一度の“騎士団と魔法使いの共同討伐”についても説明した。国全体の安全保障の一環として行われる、重要なイベントだという。




――――――――――――――――――――――――




 授業が終わり、生徒たちが次々と教室を後にしていく中、エビネも静かに席を立った。


 廊下の上を靴音が小さく響く。


扉を開けて食堂へ入り、少し目立たない

いつもの席へ向かう。


そこには既に2名分の食事と共にビデンスが待っていた。


「お疲れ様です。 エビネ様。」


「ありがとう!お待たせ。」


「ビデンスといるとなんだか、ようやくひと息つけたって感じがするよ〜。」


 エビネは笑顔でそう言いながらテーブルについた。


食堂の中は暖かな照明に包まれ、外の夜風がカーテンを静かに揺らしている。


 テーブルには上品な陶器の皿が並び、香ばしいハーブの香りが漂っていた。


「今日は騎士や魔法使いについての授業でしたか。」


「うん。知ってるつもりだったけど、実は全然知らなかったみたい。王都では街の灯りや下水まで魔法使いが支えてるんだって。」


「王族や学園に入学するにあたり多くの貴族が王都に集中していますからね。安全性を考えると有り難いですね。」


 ビデンスはそう言って静かにスープを口に運んだ。

その様子にエビネもつられてスプーンを手に取る。


学園にきて夕食は2人で食べるようになった。

エビネに頼み込まれビデンスが押し負けたのだ。


「だよね!私は将来どんなやり方かは決まっていないけど、魔物に襲われる人が減らせるようにしたい。」


「それは私もそう思います。

……あの時、エビネ様のお兄様であるエヴィル様に助けられていなかったらエビネ様はどうなったいたか…。

そう思うだけで恐ろしいです。」


「私もあの時は怖かったなぁ…。でも、

2人で抜け出して街へ行って、とっても楽しかったよね!」


エビネがあの時を思い出しながら

楽しそうな表情をすると、

ビデンスは呆れているような怒ったような表情を

してエビネを見つめる。


「…そうですね。でも、もう2度とこっそり出掛けるなんてしないで下さいね。」


 「はぁ〜い。出掛ける時はビデンスに護衛を頼むから

よろしくね!」


エビネがそう言うと、ビデンスは微笑みを浮かべる。


「勿論です。エビネ様を命に変えてもお守りすると

誓います。」


「えー。命には変えないで守ってほしいなぁ」


そうすこし拗ねたような顔でビデンスを見つめると

微笑みながら呆れたような顔でため息をつく。


「えぇ。わかりました。」


「ふふ!頼りにしてるね!」


 食堂の隅でふたりだけの穏やかな夕餉の時間が流れていく。


密室で2人っきりはよくないとビデンスが断固拒否したので食堂の目立たない隅で食べてます。

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