7話
学園に入学して今日でちょうど一ヶ月が経った。
ようやく本格的な魔力の授業が始まる。
朝の身支度を終えたエビネは、少しだけ浮き足立つ心を胸に、教室へと向かった。
「……楽しみだなぁ。」
心の中でそっと呟く。
もちろん魔法を使うのは初めてではない。
けれど、正式な場で他の生徒たちと一緒に
同じ課題に取り組むのは初めてだ。
貴族としての務めに必要な学問のひとつとして
魔法は習得できなければならないものだが、
貴族だけが使える魔法という特別な力に
憧れを抱く者は少なくなかった。
土属性の教室に入るとすでに何人かの生徒たちが着席していた。全員、土属性を持つこの学園の生徒達だ。
エビネも定められた席につき、背筋を伸ばして先生を待つ。
やがて入室した教師――グレイム先生は、黒板に向かって大きな文字で属性の名前を書き出す。
「本日から、ようやく魔力に関する授業が始まります。まずは各属性について説明しましょう。」
先生が黒板に書いたのは以下の7つ。
『炎・水・土・風・雷・氷・無(身体強化)』
「基本的に、属性は生まれ持った資質で決まりますが、水属性に限っては鍛錬によって氷属性へと変化する可能性があります。そして、どの属性であっても鍛錬を積めば魔力量は増加しますが、個々に成長の幅が異なるため、自身の特性を理解しておくことが重要です」
エビネは真剣な表情で話を聞いていた。先生の話は簡潔で、どこか厳格だったが、内容は非常に分かりやすかった。
「では、これより土属性の初歩的な魔力の発動練習を行います。初めての試みなので、うまくいかなくても問題ありません。焦らず、丁寧に取り組むように。」
――――――――――――――――――――――――
各属性の教室には、学園に入学して初めて魔法を本格的に
学ぶ生徒のために魔法を練習する道具が揃えられている。
土属性の教室には、教室の中央に大きな木箱が設置されている。中には黒褐色の土がぎっしりと詰まっており、ふかふかとして湿り気を含んでいる。
「土属性の皆さんには、この土を動かす練習をしてもらいます。手のひらを向けて、意識を土に向け、押し出すように魔力を流す。体の芯から土と繋がるイメージを持ちなさい」
教師の言葉を受け、生徒たちは順番に箱の前に立ち、魔力を放とうと試みる。最初はなかなか反応がなく、苦戦する声も聞こえてきた。
やがてエビネの番が来た。
(うまくできるかな……)
エビネは深く息を吸い両手を箱の土の上にかざす。
そして静かに目を閉じ意識を集中させた。
――押し出すように、魔力を流すように。
( 体の芯から土と繋がるイメージ…… )
心の中でコツを確認しながら魔力を込めると、
ほんのわずかだが土がぴくりと動いた。
「……!」
手のひらから確かに魔力が流れている感覚。再び意識を集中させると、今度は小さな波紋のように、土が表面を滑るように揺れた。
成功だった。
「よくできました。初めてでこれほど動かせるのは、素質がある証拠ですよ。」
グレイム先生の言葉にエビネは期待に胸を膨らませた。
――――――――――――――――――――――――――
――昼食の時間。
リリィから事前に指定されていた
食堂の一角にエビネは一足早く着いた。
間もなく リリィ レオ ユリウスが順にやってくる。
「お疲れ様です。みなさん。魔力の授業どうでした?」
微笑みながら尋ねると、真っ先に返したのはリリィだった。淡い金色の髪を揺らしながら、彼女は嬉しそうに言った。
「私は水属性でした。大きな桶に魔力を流して水を溜める方法だったのだけど、ちょっとずつ形になるのが面白くて……
なんだか魔法って生き物みたい。」
「水属性の魔法は見ていてとても、綺麗ですよね。
それに、水属性ってなんだがリリィらしくて素敵だわ!」
エビネが笑うと、
「ありがとうございます。」
とリリィは少し照れたように微笑む。
隣に座ったレオが自分の手を握ったり開いたり
しながら少し疲れた様子で口を開いた。
「俺は無属性だ。いつものトレーニングよりはるかに重いダンベルを持ち上げれたんだから身体強化って魔法はやっぱり、あるのとないのでは段違いだと改めて実感したよ。」
「無属性は、やはり騎士を目指す上では必須なのですね。
お身体を壊しませんように、お気をつけてくださいね。」
そう言葉にするとレオ様は
「ありがとう。気をつけるよ。」
と微笑んだ。だがその瞳の奥はやる気に満ち溢れているようだった。
( ……本当に無理をし過ぎないと良いのだけど。)
最後にユリウスが一言。
「俺は雷属性だったな。最初はうまくいかなかったが、
学園の用意してくれた道具のおかげで何とか形にはなった。」
「雷……なんだか難しそうですが、ユリウス様なら扱えそうですね!」
「そうだといいが。」
「よし!ユリウス!どっちが先に魔法を扱えるか勝負だ!」
そうレオがユリウスに向かって拳を突き出しながら
言うと、ユリウスはため息を吐く。
「あのなぁ。お前と俺では属性が違うだろう。
扱える扱えないの判断はどうするんだ。」
「た、たしかにそうか!盲点だった…。」
そうレオが言うとユリウスは呆れたように笑う。
この2人のやり取りはいつもこうだ。
そんな2人を見てリリィとエビネが笑い合う。
書き方が定まっていないというかなんというか…。
読みにくいかもしれません。申し訳ないです。
これからも頑張ります!
読んで下さってありがとうございます。