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5話


あれから5年の月日が流れ、

エビネとビデンスは王都にあるセントアル学園に

無事入学を果たしたのだった。



 そして


セントアル学園に入学して半年が経った。

 この学園は貴族の子供達が学ぶ場所であり、剣術、魔法、礼儀作法など、貴族としての必須科目が並んでいる。

 貴族たちが学ぶ校舎の一角には、少人数の平民クラスも存在した。


 ただし、そこに通うのは、一定以上の魔力量を持つ者のみ。

 魔力を持つ平民は奨学金を借り、貴族とともに学ばなければならない。

その代わり卒業後は普通の平民の十倍の収入を得られる職に就くことができた。

 つまりこの学園で学ぶ平民たちは選ばれし才能あるほんのごく一部の人間なのだ。


 一方で、そんな才能ある平民と貴族とは別に

従者やメイドとして仕える者たちは別の校舎に分けられ、貴族に仕えながら学問を修めていた。

 従者には仕事がある分、学ぶ時間は少なくなるが、それでも貴族としての最低限の教育を受けられる環境は整っている。


 ビデンスもまた、その校舎で勉強をしながら、エビネの従者兼護衛を務めていた。


⸻⸻⸻⸻⸻



「ビデンス、最近冷たくない?」


 昼休み。

 エビネは自室で一緒にお茶をしているビデンスをじっと見つめた。


「……別にそんなことはないと思いますが。」


「いや、ある! 昔はもっと私のこと構ってくれたし、いろいろお話してくれたのに!」


「もうあの時みたいに子供ではありませんので。

もちろんエビネ様も。それに、人の目がないとはいえ従者とお茶をするなんて他の貴族が知れば仲が良いと驚かれると思いますよ。」


 淡々とした口調で返され、エビネはむっと頬を膨らませる。


 確かに、ビデンスはこの五年間で大きく変わった。

 背も伸び、表情は落ち着き、従者や護衛としての技術も格段に向上した。

そしてあの可愛かったビデンスは

切れ長の目が印象的な美男子へと成長していた。


そしてビデンスのいつだって冷静沈着な態度は、

今やお父様とお母様には

とっても頼もしく見えているみたいだ。


 だが――


(なんだか、つまんないわ。

子供の時みたいに仲良くしたいのに。

それに、お茶くらいきっと他の方達もしているはずだわ。)


 昔はもっと感情を出してくれていたのに、今はどこか一歩引いているように感じる。

 それが少しだけ寂しかった。


「ビデンス!今日は放課後 一緒に街に行きましょう!」


「学園の規則で、貴族の外出には許可が必要です。」


「それは知っているわ!許可申請をしましょう!」


「……そんなに外出したいのですか?」


「だって、学園に入ってからずっと忙しくて、全然自由に出かけられないんだもの。」


 エビネは寂しげにそうぽつりと呟いた。


 学園に入る前は護衛さえつければ、

彼女はいつでもビデンスと街を散策することができた。


 しかし、今は貴族としての務めを果たせるように、

と学園の生徒はみな勉学で忙しく、

入学したての慣れない内は特に自由な時間が限られている。それが少し窮屈だった。


 すると、ビデンスは少し考え込むように視線を落とし、静かに言った。


「……エビネ様が望むなら、許可を頂き同行します。」


「えっ、本当!?」


「ただし、危ない道は避けて通ります。そして絶対に私から離れないでください。」


「えぇ!嬉しい。とっても楽しみだわ!」


 エビネはぱっと笑顔を咲かせた。

 やはり、どれだけ冷静になったとはいえ、ビデンスは自分のお願いを聞いてくれるのだ。


嬉しそうにしているエビネを眉にシワを寄せ、ジト目で

頬を赤らめながら不満そうな顔で見つめるビデンス。


ビデンスはやはり幼い頃からエビネには弱い。


⸻コーデマリー家の人間で気付いていないのはエビネだけなのだ。


そしてまた、ビデンスも気付かれていないと思っている。




⸻⸻⸻⸻⸻



 放課後、許可を得て学園の門を出ると、エビネは嬉しそうにビデンスの腕を引いた。


「久しぶりの街だわ!どこに行こうかしら!」


「エビネ様!まずは落ち着いてください。」


「もう!せっかくの王都の城下街なんだから楽しみましょう!」


そんなやり取りをしながら、二人は街の通りを歩いていく。


しかし、ふとエビネは気づいた。


いや、以前から知っていた。


ビデンスの視線が、ときどき魔法道具を売る店に向いていることを。


「……ビデンス?」


「……何でもありません。」


「もしかして、魔法の道具に興味ある?」


「……。」


 ビデンスは一瞬、言葉に詰まる。


 エビネは彼のその態度を見て、ふっと微笑んだ。


「ビデンスってさ、昔から魔法に憧れてたわよね?」


「……。」


「私、知ってるわよ!お兄様の魔法を見て、すごく目を輝かせてたの。」


 ビデンスはわずかに目を伏せた。


「……確かに、憧れていました。」


「今でも?」


「……ええ。」


 その言葉を聞いて、エビネは嬉しくなった。


「だったら、魔法の道具、見に行きましょうよ!」


「いえ、私には必要ありません。」


「いいの! ビデンスが何に興味があるのか、ちゃんと知りたいから!」


 エビネが無邪気に笑うと、ビデンスは少しだけ困ったような顔をして――

 それでも、静かに頷いた。


⸻⸻⸻⸻


 店の中には、さまざまな魔法道具が並んでいた。

魔石がキラキラと太陽の光に反射しており、とても幻想的でまるで装飾品店のような店内は2人は目を輝かせる。


初めて入るお店に2人は色々なものを見てまわったが、

 中でも、ビデンスの目を引いたのは、小さな魔石が埋め込まれた短剣だった。


「それが気になるの?」


「……いえ。ただ、実戦での使い勝手を考えると

興味深い造りをしていると思っただけです。」


「そうなのね…。じゃあ、私がプレゼントするわ!」


そう少し得意げな顔をするエビネ

そんなエビネにビデンスが驚いたように目を見開く。


「はい…?」


「いつも護衛してくれてるお礼よ!」


「……。」


 しばらく沈黙したあと、ビデンスは小さく息をついて、静かに微笑んだ。


こうなるとエビネ様は頑固なのを一番よく分かっていたからだ。


「ありがとうございます。」


 その表情は、ほんの少しだけ、昔の彼を思い出させた。


 エビネは満足そうに微笑み、こう思った。


やっぱりビデンスにはもっと笑ってほしい。

それとももう昔のようには戻れない…?


いや、彼が昔のように感情を出す日はきっとそう遠くないはずだ。


 そんな予感を抱きながら、エビネはビデンスとともに店を後にした。

まだ執筆が不慣れで不自然な場面が多いかもしれませんが、温かい目で見守って頂けると幸いですm(_ _)m


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