2話
「ビデンス!着いたわよ!!」
「ここがエビネ様が仰っていたお店ですね!」
スイーツなどが立ち並ぶお店の一角に位置したそのお店には唯一列ができており、2名ほど並んでいるようだ。
「たしかにこのお店にしか並んでる人はいないですね。
とっても人気なんですね!僕もスイーツが好きだからワクワクします!」
ビデンスが嬉しそうに微笑んでいる。
それを見てエビネも嬉しくなった。
お父様やお母様には今日のことを怒られるだろうが
今は忘れることにしよう。
「でもヘンね。いつもは最低でも5人は並んでいるそうよ。」
ここ最近は毎日大人気でいつ行っても5人は並んでいて買うのに苦労するが、その分美味しくて見た目も綺麗なのだとメイドが力説していたのを思い出す。
「そうなんですか?今日は運が良かったですね。」
ビデンスが少し嬉しそうに言う。
「まぁそれもそうね!壁にメニュー表があるみたい。
見て見ましょう!」
壁にはメニュー表があり、
1番の人気はいちご飴!と大きく書かれていた。
フルーツの種類は
・いちご・マスカット・キウイの3つしかないようだ。
なんでも季節によってメニューが変わるらしい。
「う〜ん、どれも美味しそうで迷っちゃいますね…。
エビネ様はもうお決まりになりましたか?」
「そうね……難しいわね…。」
ビデンスがエビネの方を見ると、いちご飴とマスカット飴で頭を悩ませていた。
「僕は1番人気のいちごにします!もし良ければ半分こしませんか?」
「え!いいの??ていうか貴方お金は持っているの?」
そう怪しむエビネ。
「僕は念のためにお小遣いを持ち歩いているんです。」
「そうなのね。あ!ビデンスがいちご飴にするなら
私はマスカット飴にするわ!」
「勿論です!」
そうこう話している内に順番がきたようだ。
「お待たせしました。お席へ案内しますね」
そう笑顔で店員が声を掛けてくる。
店内はカウンターとテーブルが4つほどある。広くはないが、白を基調とした可愛らしい雰囲気のお店だ。
「早速ですがご注文はお決まりですか?」
「マスカット飴といちご飴を1つずつでお願いします。」
「かしこまりました。少々お待ち下さい。」
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「お待たせしました。マスカット飴といちご飴でございます。」
店員さんが持ってきたお皿には
大きないちごとマスカットが5粒ずつ乗っていて
薄く飴でコーティングされており
艶々としており、まるで宝石の様で
尚且つとても美味しそうだ。
「美味しそうですね。エビネ様」
ビデンスは嬉しそうに微笑む。
ビデンスは甘党なのだ。
「本当ね!早速いただきましょう。」
「はい!」
2人はそれぞれ頼んだフルーツ飴を口に運ぶと
噛み締めた瞬間、美味しさに驚きお互いが目を合わせ
頷き合う。
「想像してたより美味しいわね!」
「僕もそう思います!連れてきてくれて、ありがとうございます。」
「べ、別にいいわよ。私か貴方と食べたかっただけだから。」少し頬を染めながら、照れ臭そうに笑うエビネ
エビネの屈託のない笑顔にいつもビデンスは見惚れて
頭が空っぽになってしまう。
「ビデンス?いちご飴貰うわよ?」
「は、はい!どうぞ!僕も、マスカット飴頂きますね」
「えぇ。どうぞ」
ビデンスはたまにこうなる。
いつもの事だ。放っておこう。
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「ありがとうございました!
またのご来店お待ちしてます。」
「どちらのフルーツ飴も美味しかったわね!」
「本当にそう思います!!
………エビネ様そろそろ」
「うん。分かってるわ。もう帰らなくちゃね。」
もっとビデンスと街を見て周りたかったから少し退屈だ。
でも今日はいつもと比べるなら何百倍も楽しかったし、
満足しなくちゃ。
2人は街を出てコーデマリー家の庭に向かい少しゆっくりとした足並みで歩き始める。
「…また、絶対に食べに来ましょう。」
こんなことをビデンスが言う日がくるなんて!
思わず笑ってしまった。
「ビデンス 貴方はいつも私の従者であろうとしてるのにそんなこと言って、いいの?」
「……やっぱり前言撤回です。聞かなかったことにしてください…。」
「何よそれ!嫌よ!絶対死ぬまで覚えてるわ!」
「何言ってるんですか。流石に死ぬまでは覚えてる訳ないですよ」
2人が軽口の叩き合い笑っていると、
茂みからホーンウルフと呼ばれる魔物が飛び出してきた。いまにでも噛み付いてきそうな相手で
一歩でも動けば襲う。とでも言うかのように目を離さずにこちらを威嚇している。
ホーンウルフはどこの森にでも生息している角が生えた狼の魔物だ。基本的に群れで行動をするが
たまにはぐれのホーンウルフが現れる。
私たちじゃ勝てない。冒険者にとっては楽な相手だろう。
だが私達はまだ魔法なんて学んでいないし
武器だってない。勝てる筈がない。
一か八かの賭けにでるしかない……
「っビデンス!!逃げるわよ!」
そう言ってビデンスの手を取ると全速力で走り出す。