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「猫と転生者」

「ねぇねぇアリスちゃん、僕と付き合おうぜ〜」

「チェルシー?冗談は程々にしなさい」


あの日から毎日のようにチェルシーに会う。まるでここに滞在しているかのようだ。まさか本当に?なんて考えるが彼女の気まぐれさは私が1番分かっている。そんなことは絶対無い。それに彼女も貴族であるわけで、両親はある程度関心があった筈だ。心配しないわけがない。


「アリスちゃんはさぁ、ウィルフレッドとか言うやつのどこがいいの?顔?頭の良さ?それとも金?あっ身体目的!?」

「下品な事を言うのをやめなさい。そうね……」


ウィルフレッドの顔を思い浮かべる。確かに彼は全てにおいて良いところしかない。けども私はその答えをこのループ中に出していた。


「……運命、かしら…」

「運命〜〜??あんな男とぉ?絶対僕と居た方が楽しいよぉ、お願いお願いおねがぁーい!婚約破棄して僕と一緒に逃げちゃおうよー!」

「はいはい、口よりも手を動かしてちょうだい」


本当に適当なことしか言わないなこの子は。こんな時は無視しかない。それにこの子に興味を持たれると後々面倒臭いことに巻き込まれる可能性があるんだよな、まあ…もうこの状況なので手遅れだが。


「あー?信じてないねぇ〜?君も私の事調べたんだから知ってくる癖にぃ〜」

「……」


流石にバレてしまったか。彼女はそういう設定が最初期の頃あったのか知らないが、何故か女好きとして噂がされている。いやいや、そんな訳なくないか?どう考えてもチェルシーの虚言にしか思えない。


「……うーん?アリスちゃんなんで原作と違う性格なんだろ?この時点ではまだウィルフレッドのこと好きじゃないよね?」

「へ?」


原作?そんな言葉知ってるのなんてこの世界に私しかいない筈。しかも私が全く知らない情報…もしかして外伝か!確か猫学は小説版としてウィルフレッドとアリスの幼少期の時代があった筈。私はあくまでクソゲーマーで小説が苦手なので読んではいなかった。

いや、そんな事言ってる場合じゃない。問題はこのチェルシーが何故そのことを知っているのかって話だ。


「原作って…」

「あっ違う!原産!アリスちゃんの原産地が違うって話!」


私の原産ってなによ、出身地…親が違うって言いたいの?誤魔化しきれてないじゃない。あまりにも慌て過ぎているチェルシーにクスッと笑いが零れた。すると彼女は少し止まった後にショックを受けた顔をした。


「え、え……もしかして先越された?えっウィルフレッド……私と同じ転生者!?だからアリスちゃんを先に攻略して……だって幼少期の頃のアリスちゃんは無表情で愛を知らないって書いてあったのに!?ウィルフレッドめ……許さないぞ……こうなったら私が消してやる……」

「チェルシー…違うわよ」


とんでもない飛躍した考えが盛れ始めてきたので慌てて彼女の肩を掴んだ。これ以上その考えを許すとウィルフレッドの命が危ない。


「私が転生者なの」

「え?アリスちゃんが?」

「おかしいと思わない?原作のアリスはこんなダンジョンに来るかしら?」

「確かに……えっじゃあウィルフレッドの事は好きじゃない?」

「それはめちゃくちゃ好きだけども」

「あぁー!私の女侍らせ計画がーー!!」


なんて事考えていたんだこの女。私以外に転生者がいるとは思わなかったがこんなに癖が強いとは。それよりも何故今更転生者が増えたんだ?このループの中で転生者が増えた事なんて1度もなかった。


「貴方、転生してきた理由とかは分かるの?」

「さあ?現実で狙ってた子が死んじゃってショックで家で寝込んでたらこの姿になってたなぁ」

「それにしては、随分と平気なのね」

「平気じゃないよぉ、未練たらったら!それに僕はあの子の無念を晴らす為にこの世界を変えるって決意したんだから」

「それは関係があるの?」

「大あり!あの子はウィルフレッドが大好きだったから、その子のためにも魔王になるのを阻止して……今のうちにアリスちゃんを僕のものにしちゃえば僕も可愛い女の子が手に入ってウハウハだし、2人とも死なずにも済む!ウヘヘヘ」


気持ちが悪いが考え方はまともだ。

この子と私は利害の一致をしている。それに原作小説まで読んでいるコアファンなことから私よりも情報を知っている可能性が高い。


「そう……なら、私がウィルフレッド様と幸せな未来を歩く為に協力してくれない?」

「どうしてもウィルフレッドの事が好きって言うなら仕方がないな〜、じゃあ早速だけどウィルフレッドと仲良くなってきて!はいこれ決定!僕帰る!」


彼女はそう言って高速でダンジョンの入口へと駆けていった。そんな事よりも仲良くなるって、今更なんだか恥ずかしい。どうやったら仲良くなれるんだろうか。彼は攻略キャラじゃないのでその方法が分からない。チェルシーは私に幼少期の彼の事を教えてくれても良かったのに。なんてボソッと口に出した言葉はダンジョンの土の中に消えていった。


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