「気まぐれ猫はどこにでも」
私は今、雑魚が大量に湧くダンジョンに来ている。
蜘蛛やアンデッドが主に出てくるのだがこれがまた気持ちが悪い。ここはループする毎に愛用しているダンジョンだが本当にキツイ。もっと効率がいい場所はあるにはあるが、今の私のレベルじゃあ厳しい。つまりは仕方がなくここに居るということだ。
「はぁ……」
いっその事経験値のランダム値を最大にしてくれればいいのに。なんてこと言ったって変わらないし、さっさとモンスター狩りをするか。
「よっ……って、ん?」
見たことない足跡だ。人の靴……誰かが最近ここを訪れたのか?珍しい、ここは穴場で今までのループでは誰とも合わなかったのに。もしかしてウィルフレッド様が私の跡をつけてきたとか?ありそう、周りを警戒して歩かないと。
「……誰かいる……」
目の前の暗闇からザクザクと土を踏みしめるような音が鳴る。リズムを刻むような足音に体が凍りつく。嫌な予感がする。
「おやぁ〜?こんな洞窟に1匹の蝶が紛れ込んでるぞぉ〜?」
暗闇に浮かぶ金色の目と弧を描く口。ゆっくり歩いてきた女の子は私を見て意地悪く笑った。
「蜘蛛に食べられちゃうよぉ?いいのかなぁ?」
「……(なんで)」
なんで、主人公のチェルシーがここに居るんだ?よく分からないが警戒は解いて良さそうだ。
「あれぇ……?アリスちゃん!?ウッソ!?」
「んん……??」
きゃあっと声を上げて後退る姿と反応が妙にオタクっぽいな。と言うより何故私の事を知っているんだ?この頃のチェルシーとは認識ないはずだが。
「えー……貴方は?」
「喋った!?ひー可愛い、あっこほん。僕はアンジェラ、しがない農民さ」
また適当なこと言ってる。チェルシーはこういう風に虚言を吐く時がある、普通の人ならば困るだろうが私は彼女の事を知っているし理解している。なので適当に流して次に行くことにした。
「…チェルシーさんはなんでここに?」
「うーん?なんとなくかな〜」
まあそうでしょうね、彼女が気分でしか動かないのは決まっていた事だ。
「あえ?チェルシー……名前、言ってないのになんで知ってるのぉ?もしかしてぇ……?」
ヤバい、口を滑らせてしまった。このままだとバレてしまうのではないか?私がループしているということが。
「……私と友達になりたいのぉ!?」
「え?」
「アリスちゃんと友達になれるなんてラッキーにも程がある!さあさあ友好の印だ、握手したまえ!」
あれ?チェルシーってこんな喋り方だったか?私が知らないだけで幼少期はこの喋り方とか?それともこれも単なる気まぐれか?よく分からないが出された手を拒む理由も無く、そろ〜っと手を握る。
「これで僕とはもう友達だね、じゃあまたここで会えたら会おうぞ〜」
軽快なステップで洞窟の奥へと消えていく彼女を私はぼーっとみていた。うん、やはり攻略キャラ達がチェルシーに惹かれる理由も分かる気がする。