「お祈りB連打」
「はっ!やあ!」
「お!上手いぞアリス様!その調子だ!」
剣術の方も前より格段に上手くなってきて、更にはタメ口になる程アレッドと親交を深める事も出来た。これならばそろそろ話を切り出してもいいかもしれない。
「アレッド、ちょっといい?」
「ん?なんだ?」
「ノーマンって人知ってる?」
彼は不思議そうな顔をして頷いた。ノーマン・パーキンス、後に薬学において天才と呼ばれる青年になる人間だ。勿論猫学にも登場し、攻略も出来る。しかし彼も癖の強いキャラクターで、BADENDでは彼の好奇心が爆発してマッドサイエンティストと化してチェルシーを生き人形にするとか、恐ろしいキャラクターね。
「ノーマンなら知ってるけど……そいつがどうしたんだよ」
「実はね、私薬学も習いたくて……有名な天才薬師だし、同い年だから聞きやすいかなって思ってて…」
「ふぅーん?お前ってさ、結構チャレンジャーなタイプ?」
「そりゃあ、令嬢で剣術習ってるくらいよ?チャレンジャーに決まってるじゃない」
「そっか!確かにそうだよな」
よし、ノーマンに会えると安堵したのも束の間。彼は意地悪そうに笑って剣を構えた。
「紹介してもいいけど条件がある。俺に勝ったら紹介してやるよ」
あまりにも無茶な条件、しかしこれも予想していた。私は剣を取り彼の首にトンっと当てた。
「後悔しても知らないわよ」
お互いに距離を取り、息を飲む。初め、その合図で私達は剣を交えた。右、左と彼は思いっきり剣を振り私を殺すつもりでやっているのだろう、その目は本気だ。ならばこちらも本気を出すしかない。
幼少期のアレッドには分かり易い癖がある。
それは右、左、左の順番で剣を降った後に少しだけ重心が右に傾くところ。つまりそこを狙えば…。
「はぁっ!!」
「ぐっ…あっ!?」
アレッドの剣がふわりと空に浮き、そのまま地面に転がり落ちた。シン…と静寂が辺りを包む。そして、アレッドが降参の合図で手を挙げた。つまり、私の勝ちというわけだ。
「ふふん、私の勝ちね」
「お前……やっぱり才能あるな!おい!薬学なんかやめて剣術やれよ!」
「違うわアレッド、私はなんでもマスターするの」
座り込んだアレッドに手を差し伸べる。
「……はは、お前らしいな!」
そう笑うアレッドは、少し頬を赤らめていた。ちょっと待って?もしかして好感度バグですか?このまま恋に進化するならB連打でキャンセルしたいんですけど。やはり猫学は恐ろしい、好感度も乱数だなんて…!
もうこのクソゲーめ、やりがいがあるじゃないか…!
「ふう、じゃあ約束通り紹介してちょうだいね?」
「当たり前だ、約束は絶対守るに決まってる」
そうして後日、ノーマンと会うことになったのだ。