「忠誠を誓う騎士」
さて、今日も天気が良くてとてもお茶会日和である。そんな中私は今、ウィルフレッド様と2人でお茶を啜っている。このゲームの攻略的には最悪な状況である。
「……ウィルフレッド様?私言いましたよね、貴方と婚約するつもりはないですって」
「でも決定権は俺にあるよ、それとも照れ隠し?」
「そんな訳ないでしょう」
何度否定しても何故か私に執着してくる。
しかも高確率で出会ってしまう。これも乱数のせい?クソ乱数め、このままではあまりの遭遇確率に台パンしてしまうではないか。
「そう言えば今日は君に人を紹介したくて来たんだ」
彼はすっと扉の近くにいたメイドに指示を出す。すると扉がゆっくり開いて1人の少年が入ってきた。オレンジ色の髪と瞳で、手や顔に傷が沢山ある。ただのわんぱく小僧か剣術を学んでいるのかどっちかだな。
「アリス様初めまして、俺……あっ、私はアレッド・オークウッドと申します。普段はウィルフレッド様の護衛をしております!よろしくお願いします!」
鼓膜が破れそうな程の声量で耳が限界だが今はそんな事考えてる暇がない。無くなってしまった。
その理由はこのわんぱく小僧のせいだ、まずアレッド・オークウッドとは猫学の攻略キャラクターである。基本的にはアリスとウィルフレッドの言う事ならなんでも聞く主に忠誠を誓う騎士ポジション。魔王になったウィルフレッドと主人公のチェルシーのどっちにつけばいいのか最後まで迷う程の忠誠心を持っている。そうだ忘れていた、そもそもウィルフレッドの護衛ならば私と出会うのも時間の問題だった訳だ。クソ、余計な乱数のせいで頭が混乱している。こんなのクソゲーハンターの名が廃るではないか。
「私はアリス・エヴァンス。よろしくお願いしますわ」
簡単な挨拶を済ませてニコりと笑う。彼は少し照れくさそうに笑って頭を少しかいた。そうそう、アレッドの魅力的な所は恥ずかしがり屋さんな所なのよね。
「アレッド?」
「はっ、もっ申し訳ありません!出過ぎた真似をしてしまいましたっ……!」
「いや、そこまで謝らなくてもいいよ」
さて、アレッドをどう使うかによって生存確率はグッと高くなる。53回目のループでは確か3回も襲撃から身を守ってくれた。人の好意は有効に使わないと、今までは彼に悪いと思いやってこなかった事だが、今回は思いきって実行してもありかもしれない。
「ふふ、アレッド様は照れ屋なんですね」
「そ、そんなこと……あっアリス様!様は要らないですよ!気軽にアレッドと呼んでください!」
「ならそう呼ばせてもらおうかしら」
こうしてアレッドと知り合えた翌日、私は秘密基地でいつも通りに上級ポーション作りに励んでいた。しかし…。
「……なんで」
何故か上級ポーションが完成しないのだ。おかしい、レベルも足りているし材料も作り方もループ前から変えていないのに何も出来上がらない。何度やり直してもクソ不味いポーションしか出来上がらないのだ。
どうしてだ?まさか乱数要素!?いや、何度もやり直しても出来ない訳だしそんな筈が無い。誰か得意な人間に相談したいが私は内緒で作っているので相談も出来ない。
「…そういえば、1人居るじゃない」
この世界では同じ年頃で凄腕の薬師が存在する。しかし彼とどうやって会えばいいのだろうか。というのは昔の私の考えであり、今であれば方法は何個もある。そして今回はそのうちの一つであるアレッドに紹介してもらうを選択することにした。
早速行動をしなければ、という事でアレッドを誘う口実としてウィルフレッドを呼ぶ事で違和感を無くすことにした。
「まさか君から誘ってくれるだなんて、嬉しいよ」
「ほほほ」
取り敢えず心苦しいがウィルフレッドの言葉は流して、普段通りのお茶会を過ごす。そして話がちょうど盛り上がったところで本題の話を切り出すことにした。
「そういえばアレッド、良ければ私に剣術を教えて下さらない?」
「えっ?お…私ですか!?あっえっと…ウィルフレッド様、宜しいですか…?」
「ふふ、私に許可を取らなくても別に好きにしてくれて構わないよ?」
アレッドと交友を深めるついでに紹介してもらえば一石二鳥、私に得しかない。
「……アリスは本当に興味無いんだね」