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第一話「始まり」

カタカタカタ、夜に何やら響く音が聞こえる。

時刻は0時過ぎといったところだ。

その音はボールペンの音でも鉛筆の音でもない。

乾いた音だ。


「この人良さそう! まずは挨拶のメッセージ送ってと…」


その声を上げたのは由美という23歳の女性だ。

由美は自分の部屋で机に向かってノートパソコンとにらめっこしている。

何を見ているのかというと。

婚活サイトだ。

由美は農家の娘であった。

一人娘で父から跡継ぎのために結婚しろと言われていた。

友達もいなく一人孤独で由美はいつもネットだけが頼りであった。

仕方なく父のために婚活サイトで婚活を始めていた。


「私からいいねを待っていてもダメだよね。自分から積極的にいいねを押して発展に繋げないと」


パソコンには色々な年齢の男性の写真が並んであった。

25歳、38歳、44歳、高齢でいくと50代、中には80代もいた。


「うげっ、80代で婚活している人いるんだ。さすがに高齢すぎて私には無理だ」


そう思っているとピコンと音が鳴った。

スマホの通知だ。

何だろうと思い由美はスマホを見た。

するとそこには、あげおさんからいいねをもらいましたという通知だった。

これは今見てる婚活サイトの通知だ。

しかも男性からいいねをもらえてる。

由美は嬉しくていいねをもらった男性をどんな人かなと思い、いいね欄を見てみた。

するとそこには。

あげお72歳無職と書かれてあった。


「うわっ、72歳とかもうおじいちゃんじゃん…しかも白髪だし。お金はそこそこ持ってるけどまず年齢からダメだわ」


由美はそう呟くと他の男性を探し始めた。

それから何時間経ったであろう、もう夜遅くなってしまったので、由美は寝ることにした。

翌日。

スマホを見てみるとたくさんの通知がきていた。

由美はどうせまた高齢者なんだろうなと思いしぶしぶパソコンへと向かった。

パソコンを立ち上げ婚活サイトを開く。

いいね欄を見てみるとそうでもなかった。


「お、21歳、27歳、33歳、40歳、52歳がいるな。まず21歳から見てみるか」


ヒロと書かれた21歳の写真を開きプロフィールを見てみる。

写真はどこにでもいるような普通の男性だ。

かっこよくもぶさいくでもない一般人。

プロフィールはというと。

趣味、ゴルフ、映画、ジョギング、遊園地と書かれてあった。

かなりアウトドアな人だ。


「アウトドアか、私、インドアだから趣味が合いそうにないな。しかも結婚条件厳しい、将来引っ越しできないって書いてあるし」


これはダメだと思い由美はごめんなさいのボタンをクリックしその人と関係を終わらせる。

由美は将来引っ越し可能な人じゃないとダメなのだ。

年齢も若い人が望ましい。


「よし、次々」


27歳ぴのさん。

ぴのさんの写真をクリックする。

するとそこにはちゃらけた人であった。

髪は金髪、ピアスもしていて、不良っぽく見えた。


「うーん、良いと思うけど私に合わない気がする」


由美は真面目で地味でインドアな子だ。

そんな子がちゃらけた人とお付き合いできるのだろうか。


「ダメだわ、次いこう」


またもや「ごめんなさいのボタンをクリックする。

次は33歳だ。

名前はりょうと書かれていた。

ふっくらしていて何故か男性なのに髪型が長かった。


「えー。髪の毛長い男性とか無理だわ。女装かよ」


ごめんなさいボタンをクリックしパソコンのいいね欄を眺め続けた。

他にも夜中の間にいいねをもらった男性たちがいたが、見る気も起きなかった。

何故かというと、年収1000万、高齢者、25歳以下、怪しそうなぼやけた顔写真。


「これはダメだわ」


由美はパソコンを閉じ、犬の散歩に行こうとする。

朝恒例の日課だ。

犬は柴犬。

ブリーダーの家から子犬をもらい大人になるまで育てた。

名前はリクだ。


「わんっ」


リクは嬉しそうに鳴き尻尾を振り散らかせ前へと歩く。

そんな中由美は。


「やっぱネットでの出会いはそう簡単にいかないものなのかな」


はぁ、とため息をつき空を見上げる。

青くて澄んだ青空が太陽とリンクして広がっていた。


「でも、この空の下には私の運命の人がいるんだよな」


「よし、頑張ろう!」


何かと前向きな気持ちを強く持ち由美は散歩をさっさと終わらせる。

そして、今日もおじいちゃんとおばあちゃんの元で農家の仕事が始まるのだった。

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