攻められる姫
押せ押せジーク回!
こちらも少しアリアの内心を掘り下げるため加筆しました(2022.11.7.)
「当然だろ。俺はあんたのことが好きだ。愛してる。結婚してほしい。いや、どっちにしろするけど」
一息に放たれた言葉の意味がわからず、アリアはしばし逡巡し――――顔を真っ赤に染めた。
(突然何を言い出したの、この男は...!?)
火を吹きそうなほど熱くなった顔を見られたくなくて、ものすごい勢いで顔を反らすと、すかさず両頬を、ジークの大きな手に包み込まれ、引き戻される。
銀色の瞳が鋭く自分を捉え、見つめる。
「な、な、な...」
「悪いけど、もう俺だって誤魔化す気も、逃げる気もねぇから。俺が必死で戦争から生き残ったのも、イフリードを切ったのも、全部......俺があんたを手に入れるためだ」
力強く告げられた言葉が染み込んで、アリアの胸に最初に沸き上がったのは、大きな喜びだった。
――――が、すぐに浮かんだ、イフリードの亡霊のイメージが、鋭く刃を立ててくる。
アリアがくしゃりと顔を歪ませると、ジークはいぶかしげに眉をあげた。
「......またその顔だ」
「え?」
「姫さんは、昨日からよくその顔をしやがる。......なんか怖いもんがあるのか?」
まっすぐに問いかけられても、アリアは答えることができなかった。
怖いものなんて、たくさんある。
昔は、そんなものひとつもなかったけれど、この3年でアリアも大きく変わってしまった。いや、変えられてしまった。
口を閉ざしたアリアにため息をついたジークは、「まぁ、いいけど」と話を切った。
「よくわかんねぇけど、あんたが怖いと思うものは、全部俺が切ってやる。だから......」
言いながら、ジークはぐぐっと顔を寄せてきた。
アリアは再び、頬に熱が集まるのを感じる。
「あんたはとりあえず、俺からの愛を素直に受け取れるようになろうな」
ニヤリと笑ったジークは蠱惑的で、美しく......
(な、なんだか既に色々と手遅れな気がする...)
とアリアは冷や汗をかいた。
***
それからアリアの苦悩?の日々が始まった。
朝から晩まで、とにかくジークの凄まじい猛攻にあったのである。
朝
「おはよう姫さん、寝ぼけた顔も可愛いな」
「…!?」
どういうわけかアリアが起きると、毎度ぴったりのタイミングで入室してきて、いきなり甘い言葉をかけてくる。
昼
「うーん…ずっと眺めていられる…かわいい…しかもなんかいいにおいがする…」
「…!!??」
ジークがプレゼントしてくれた図書室(大好きな本であふれている!)で読書にいそしむアリアを、ずっと後ろから抱きしめて、甘い言葉をかけてくる。(しかも匂いを嗅ぐ)
夜
「離れたくねえけど…まあ今は我慢してやる。おやすみ、愛してるぜ…あんたの気持ちが追い付いてきたら夜も離れねえから、覚悟しておけよ」
「…!!!???」
そして、アリアの頬やら額やらにキスをして去っていく。
「私にどうしろと!?」
ある日、耐えかねたアリアが叫ぶと、ジークは真顔で返した。
「結婚してくれ」
今、二人はティータイムに興じるべく、アリアの部屋にいた。
ナニーにお茶を運ばせるまでは普通に向かい合って座っていたのだが、準備が追わり、2人きりになったとたんにジークがアリアを抱きしめようと移動してきたせいで、逃げようと暴れるアリアとの攻防が始まっていた。
「きゅ、急すぎる!」
「急なもんか!3年も我慢を強いられたんだぞ、俺は!」
「そ、そんなの知らない!それに…、物事には…順序ってものがあるでしょう!?」
「順序だぁ?」
引っ付いて来ようとするジークを、必死で腕を伸ばして引き離しながら、アリアは首を縦に振った。
この数日、アリアはとにかく混乱していた。
この結婚は政治的なもので、ジークからしたら押し付けられたに等しいと考えていた彼女にとって、いまのジークの行動は本当に予想外のものばかりだからだ。
アリアが帝国に嫁ぐ前の二人の関係は、とても微妙なものだった。
アリアがジークを想っていたことは、誰から見ても明らかだったと考えてはいるが、ジークのほうはあくまで騎士や専属護衛であるというスタンスを崩そうともしなかった。
だからこそ、叶わぬ恋から逃げるようにアリアは国を出たのだ。
(それなのに今更…好きだなんて…!?)
アリアはかっと身体が燃え上がるような感覚がして、思わず叫んだ。
「私からしたら、もう終わったはずの物語に急に続編が出て、しかもその主人公が自分、みたいな状況なの!わかる!?」
「わからん」
「いや、確かに混乱してるから例えが変になったかもしれないけど、言い方!」
にべもなく言い放つジークにがっくりと肩を落とす。
「大体、俺が本当に順序を無視してたら、姫さんなんか今頃無事じゃすまねえぞ」
「どういうことよ…?」
「わからないってことは、まだまだ子供だな」
にやりと笑ったジークの瞳に怪しい色が宿った気がして、アリアは慌てて立ち上がり、距離をとった。
「と、とにかくいきなり結婚とか……好きだとか、言われても……追いつかないの。いろいろと」
真っ赤な顔で俯くと、ジークが「ぐう」っと変な唸り声をあげたので、アリアはきょとんする。
ジークはしばらく顔を手で覆ってそっぽを向いていたが、気を取り直したようにアリアに向き合った。
「なら、その『順序』とやらの通りにやってみようぜ」
「え?」
「姫さんの思う結婚までに必要な『順序』ってなんだよ」
「え、えーっとそんなこと急に言われても…」
「結婚の前っていうと…恋人か?」
「こっ…恋人!?」
「じゃあ、デートでもするか」
「デート!?」
混乱するアリアをよそに、ジークは彼女の手をつかむと、部屋を出た。
「早速行こうぜ」
「ええ…!?」
そうして、アリアはあっという間にジークの馬に乗せられ、街へと向かうことになったのだった。
次回、デート編です。
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