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起きてしまったクーデター

説明回です!本日二回目の更新…。

私の技術不足で読者様に苦労を強いてしまい申し訳ございませんが、お付き合いくださいますと幸いです。

今より3年前、目障りだった末の妹をとうとう追い出したデロイ王は、大層機嫌がよかった。

あのすべてを見透かすような忌々しい金色の目の女を、恐ろしい皇帝にくれてやった。その見返りに得た不可侵条約も彼を喜ばせた。なぜあの女ひとりにそんなに価値を見出しているのかなど知ったことではないが、帝国と戦争などたまったものではないと思っていた彼にとっては好都合だった。

他の王子王女も同様に追い出すことができ、残るは病弱で王位継承権も持たない愚鈍な兄のみ。

自身の立場が盤石になったことを悟った王の、傍若無人ぶりはさらに加速していった。


連夜続く宴、増える税金、悪くなる治安…自身が「権力を持っていること」のみにしか関心のなかった王の治世で、国民はどんどん疲弊していった。

そしてとうとう、国の財産ともいえる「技術」をもった職人たちですら、暮らしに困るようになってきたのである。いくら良い品とはいえ、あまり値段を高くしては買い手はつかない。商人たちもみな頭を抱えた。


表向きには病気で療養していることになっていたディートリヒの元にも、身分を隠して交流を持っていた商人たちから、苦しみの声が届いていた。しかし、継承権を放棄した自分にできることは少ない、と諦めていた。


ある日、そんなディートリヒを訪ねてきた男がいた。国の「英雄騎士」ジークである。

ジークはディートリヒに、この国の王になってくれと頼みに来たのだ。2人は直接相対したことはなかったが、お互いにアリアを通してその人となりを知っていた。


始めはにべもなく断り続けたディートリヒだったが、必死に頼み込むジークの向こうに見え隠れする、末の妹の陰に心を揺らした。

小さな体に不釣り合いなほど分厚い本を、きらきらとした瞳で読み進める、幼く、かわいい妹…

全てを見通すような、少女の金色の瞳を思い出すと、不思議と気持ちが奮い立った。


そして、ジークのもつ圧倒的な強さも、ディートリヒを後押しした。

何より彼はこの戦争時代における自国の「英雄」である。市井に寄り添い続けているディートリヒも含め、国民や善良な貴族からの支持は厚い。


――――ディートリヒは、決意した。


とはいえ、この国の権力はほぼすべてデロイ王が握っているような状況である。

兵を集めることすら生半可なことではない。そもそも自分は今、王族ですらないような状態だ。


彼らがたどり着いたのは「内側がダメなら、外から攻める」という考えだった。

グレタナ王国同様に、イルヴィア皇国に姫を人質に取られた国と密かに同盟を結ぶことにしたのだ。


大陸は依然として、イフリード帝の脅威にさらされていた。

いまやかの国の後宮に入れられた姫君の数は100に届くといわれていた。中にはすでにあの恐ろしい皇帝によって亡き者にされてしまった姫もいるという。


戦争は盤上のゲームではない。勝った負けた、では解決できない鬱屈としたものが、大陸中にたまっていたのである。

とはいえ、各国の思惑を一つにすることも決して簡単ではなかった。

むしろできないと思われていたからこそ、皇国の躍進は止まらなかったのである。


しかし、ディートリヒには自信があった。

その理由は彼が商人として仮の姿で過ごすうちに培った交渉力と、それに足るだけの材料---すなわち、グレタナ王国の輝かしき技術力である。


ディートリヒがまず行ったのは、つながりのある商会を通じたさらなる「技術の開発」である。

それは日常を豊かにする小さな発明品から、服飾品、そして武器まで…様々な分野にわたって行われた。

そしてそれを、デロイ王に気づかれないように発表もせず、ひたすら貯め、各国との交渉の材料にした。


砂漠に覆われた国には海水を真水に変える道具を、不作に悩む国には新種の種を、芸術を愛する国には極上の絹や美しい菓子を…

そうして各国と意思を一つにまとめあげることに成功したのである。


そして、ジークも王国内の騎士団を陰ながら掌握していった。

元々、騎士は半数が庶民の出である。デロイ王への反感は強まっていたので、こちらはそれほど苦も無く進めることができた。時々入る邪魔は、ジークが効率的かつ「特別なお願い(主に物理)」をして黙らせた。そのせいで、騎士団は元いた数よりほんの少しだけ人員が減ってしまったが、ご愛敬である。


大陸中の国々は、打倒皇国へ向けて動き出した。

ディートリヒにとっても、もはやデロイを打ち倒すことなどモノのついでである。


――――そして、その日は訪れた。


ジーク率いる他国との連合軍は、一斉に皇国へと奇襲を仕掛けた。

イフリード帝の眠る本宮を攻め、あっという間に陥落させたのである。


そして、時を同じくして、ディートリヒも兄デロイの寝室へと忍び込み、切った。

王国内の騎士団はすでに掌握済みだったので、デロイはろくな抵抗もできずにその命を散らした。



こうして、大陸全土をゆるがすクーデターは、成功を遂げたのである。

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