九十四話
クロードは暇を持て余しミシリウス義兄様と模擬戦をしたり軍略勝負をしたりして過ごしていた。
「模擬戦もそうだけど軍略でも負けるとは自信を失くしてしまうね」
「ミシリウス義兄様は正統派ですよね。それが悪いというわけではないですがもう少し柔軟性が増すとよいのではないでしょうか」
「うん。師にもよく言われていたことだね」
「自覚があるならなんとかなりますよ」
雑談に興じていると一台の馬車が入ってくる。
馬車に刻まれた家紋はプロミネンス侯爵家のものだ。
ミシリウス義兄様と馬車を出迎えに行く。
「クラウス兄様。アイリス姉様。おかえりなさい」
「クロード。ただいま。ミシリウス義兄様お越しになられていたのですね」
「うん。お邪魔しているよ」
「皆。居間にいると思いますし行きましょう」
クロードは先導するように居間へと向かう。
予想通り居間に家族が揃っており出迎えられる。
「よく帰ってきたね。元気な姿を見れて嬉しいよ」
「クラウス。王宮騎士団で活躍しているようだね。おめでとう」
クラウスは学生の身ながら18歳の若さで王宮第一騎士団で模擬戦や雑務の手伝いをするようになっていた。
事実上の内示であり将来を約束されたのである。
「ありがとうございます」
「クラウス兄様。おめでとうございます。実はプレゼントがあるんですよ」
クロードは用意しておいた剣をアイテムボックスから取り出す。
鎧は騎士団で統一された物を使うため難しかったが武器は自前の物の使用が認められている。
「この剣をどうぞ」
「見事な装飾の剣だな。抜いてみても」
「どうぞ」
クラウス兄様は恐る恐る剣を鞘から抜き刃を確かめる。
「装飾もそうだが刃も素晴らしい。こんな剣を本当に貰ってよいのか」
「クラウス兄様の為に作らせた物ですから」
「ありがとう」
「見たところ普通の剣じゃなさそうだけど素材は何なんだい」
「ミスリルとオリハルコンの合金にグリーンドラゴンの牙を溶かし込んだ特別品です」
「ミスリルとオリハルコンはまだわかるけどドラゴンの牙なんてよく手に入ったね」
「素材集めに行ったときに襲われたので返り討ちにしました」
「ドラゴンを返り討ちにする8歳児。末恐ろしいな。身内でよかったよ」
「母様から話はあると思いますが姉様達にもプレゼントがあるので楽しみにしててくださいね」
「クラウス兄様だけにと思ったけど私達にも何かあるのね」
「ふふ。実物を見たら貴方たちも驚くわよ」
母様の意味深な笑みに期待を寄せる姉様達だった。




