九十話
プロミネンス侯爵家に不満を募らせる貴族達はどうやったらこの状況を脱することができるのか話し合いを続けていた。
「このまま民の流出が続けば我々の領地は終わりだ。何か解決策はないのか」
「そんなことを言われても手腕は見事なものだ。つけ入る隙なんてないぞ」
「クロードとかいう小僧を王宮は重用しているがそこからなんとかならんのか」
「儂がつかんだ情報では軍需品の調達を任されて成果をあげているらしい」
「それなら軍需品を調達できないように妨害すればいけるのではないか」
「それが何度調べてもどこから調達してるのかわからんのだ」
「調達先不明で成果を上げるなどおかしいではないか」
「儂に考えがある。違法に先住先を抜け出した違法民をプロミネンス家が保護しているとして王宮に苦情を申し入れるのだ」
「それでは今までと変わらんのではないですか」
「今までは民の流出が止まらなくて困っていると泣きついていただけだ。違法にという部分が大事なんじゃよ」
「それではその線で攻めてみようではないか」
ゲルマン王国宰相のリッチマンと国王ポセイドスは複数の諸侯から寄せられた嘆願書に溜息をついていた。
「プロミネンス侯爵家が違法に流出した民をかくまっているか。そもそも民が元々住んでいた場所を離れるのは簡単ではない。それを考慮しても流出するのはその貴族に問題があるのだがな」
「ですが。放置もできないのも事実です」
「プロミネンス侯爵家を罰するわけにもいかんしな。仮に罰したなら健全な経営をしている諸侯からの信頼を失うことになる」
「陛下。乱暴な方法になりますが嘆願書を出しているのは税の猶予を申し込んでいる者ばかりです。このまま放置して税を支払えなかったとして爵位を取り上げてはどうでしょうか」
「そうはいっても治める者がいなくなった領地は荒れるぞ」
「取り上げるのはもう少し先なので今から準備して取り上げると同時に代官を派遣すれば何とかなるでしょう」
「苦情を言ってきている貴族にはどう対応する」
「そちらはプロミネンス侯爵家の違法性は認められず鋭意努力せよとでもいっておけばよいかと」
「うむ。ではそのように取り計らってくれ」
王家からの声明に嘆願書を出した貴族達は悲鳴をあげていた。
「どうしてこうなったのだ」
「王家は我々を見捨てたということか」
「こうなれば最後の手段です。兵を挙げましょう」
「王家に歯向かっても勝ち目はないぞ」
「プロミネンス家に対して挙げるのです。いくら精強な騎士団を持っているとしても数の暴力の前には無力でしょう」
「よし。やるぞ。やってやる」
こうして反プロミネンス侯爵同盟が結成された。




