八十九話
「今回は貴族の坊ちゃまの気まぐれで事なきを得たが今後は食べる物に困ってもこの辺をうろつかないことだ」
衛兵さん達は事件解決ということで注意をしてから去っていく。
「ありがとう。助かったぜ」
助けた少年はフレンドリーに接してくる。
「困っているならお互い様だよ」
「俺はレックって言うんだ」
「レック達は食べ物に困ってるのかい」
「貧民街に住んでるやつは大抵困ってるさ。大人達も労働に賃金が見合ってないってよく言ってるぜ」
「僕王都は不案内なんだ。よかったら案内してくれるかな」
「おやすいご用だぜ」
レックは様々な場所を知っており詳しく解説しながら王都を案内してくれる。
おかげで王都の貧民街のことも理解することができた。
最後にここが住みかだと今にも板が飛んでいきそうな家に連れてこられた。
「ボロボロだけど雨風を少しでも和らげてくれる立派な家なんだぜ」
「案内してくれたお礼をしないとね」
アイテムボックスから携行食とお金を取り出してレックに渡す。
「こんなにいいのか。それに食べ物まで」
「構わないよ。それじゃ。僕はそろそろ帰らないといけないからいくよ」
クロードは颯爽と去っていく。
クロードが去っていったレック達の住処に一人の男がきていた。
貧民街を根城にする闇ギルドの構成員の一人である。
闇ギルドは根城に入ってきた異物であるクロードに気づかれないようにこっそりと監視をしていた。
「レック。騒ぎは聞いたぞ。あの辺りには近づくなって言ってあっただろ」
「だけどあんちゃん食べる物なくてちび達もお腹空かせて困ってたんだよ」
「気前のいい貴族の坊ちゃんが助けてくれなかったら今頃牢屋だぞ」
「クロードの兄ちゃんいい人だったなぁ」
「あの坊ちゃんの名前はクロードっていうのか。それにしてもずいぶん色々貰ったみたいだな」
「うん。当分の間は食べ物に困らないしお金ももらったから何とかなりそうだよ」
「見たことないタイプのも混じってるがこれは最近流行ってる携行食だな」
「お腹すいたよー」
そこにちびと呼ばれた子供たちがやってくる。
「わかった。説教は後にして準備してやるからちょっと待ってろ」
闇ギルドは金次第で何でもすると思われているがあんちゃんと言われた男の所属する組織は貧民街の人々を守るために活動しているのである。
手際よくお湯を沸かしてそこに携行食の野菜と干し肉が一緒に入っている粉を入れる。
「肉に野菜か。俺達が普段くってるものよりよほど贅沢だな」
溜息をつきつつ椀によそってちび達に渡してやるのだった。




