八十七話
「さらりと他国に行ってきてボスモンスターを討伐してきたとか言わないでくれ」
「すみません」
「怒っているわけではないが国によっては大ごとになるから気を付けてくれ」
「間違っても敵対国にはいかないですよ」
「魔石の件はわかった。こちらは王国の方へ引き取ってもらえるよう手配しよう」
「お願いします」
「それでしばらくは家にいるのか」
「もうじきクラウス兄様とアイリス姉様も学園から帰ってきますしその予定ですよ」
「そうか。アリシアも婿殿と戻ってくると言っているし久しぶりに全員そろうな」
「そうなのですね。それは楽しみです」
「それでは下がっていいぞ」
「はい。失礼します」
父様の書斎を後にして自室に下がり今回のことを考える。
予定外にスケルトンワーカーキングというボスモンスターを討伐することになったが結果としてはスタンピード直前のスケルトンワーカーを大量に倒すことができたのでミスリルとオリハルコンの量は使う分以上の数を確保することができた。
白桜のディーンさん達はいい人だったし何よりアダマンタイトの加工をできるドワーフ爺と出会えたのは大きなプラスだ。
リザードマンの皮も余裕を見積もっているので足りなくなることはないだろうし気軽に狩りにいけばいい。
「そうだった。携行食を実際食べた報告書を書かないと」
良かった点や改良箇所を紙にまとめていく。
「こんなものかな」
窓の外を見れば夕方である。
少し早いけど食堂でお茶を飲むことにして部屋を後にする。
食堂ではファールハイト兄様がお茶を飲んでいた。
「クロードか。出かけてたみたいだね」
「必要な素材があったので」
「前にリストを確認したときはずいぶんな数だったけど追加発注を受けたのかい」
「王国へ納める分とミッシア辺境伯に納める分が必要だったので」
「ミッシア辺境伯の目にも留まったのか」
「ファールハイト兄様も忙しそうでしたけどどうなのですか」
「アポロニアの建築は順調だよ。後の細かい部分は部下に任せて戻ってきたんだ」
ファールハイト兄様とたわい無い会話を続けていると父様と母様もやってきて夕食がはじまる。
プロミネンス家の抱える料理長の腕は確かなので楽しみの一つなのである。
「いつ食べても料理長の料理は美味しいですね」
「ありがとうございます」
食事の後はお茶の時間となりゆったりとした家族団らんの時間を過ごした。
プロミネンス侯爵領が繁栄する一方で不満の積もった貴族達は極秘に集まりある計画を立てていた。




