八十五話
目指していたドワーフの鍛冶場は街はずれにあった。
今は仕事をしていないのか辺りは静寂に満ちている。
「ドワーフの爺さんいるか」
「なんじゃ。ディーンの坊主じゃないか。金は溜まったのか」
「目標までもうちょいってところだな。今日は客人を連れてきたぜ」
「クロードと申します。これは冒険者組合のサイクスさんからの紹介状です」
ドワーフの爺さんは紹介状を手に取り目を通していく。
「坊主よくきたな。アダマンタイトの武器に興味があるようだがあいにく肝心の素材がなくてな」
「素材があれば仕事を受けてくださるのですか」
「鍛冶師は武器を打ってこそだからな」
「そういうことでしたらこれでお願いします」
クロードはアダマンタイトのインゴットをアイテムボックスから取り出す。
「わははは。アダマンタイトがこんなにいっぱい。面白い坊主じゃの。して欲しい武器はなんじゃ」
「剣と槍でお願いします」
「確かに引き受けたぞ。加工代はこんなもんじゃが大丈夫か」
「問題ないです」
加工代を支払う。
「しかし受け取りはどうするんだ。ゲルマン王国まで運ぼうとしてもシルフィード皇国が許さないだろ」
「ディーンさん達に指名依頼を出しますよ。依頼料はこれぐらいでいいですか」
「ありがたいがこんなにいいのか」
「構いませんよ」
「爺さんこれで剣の代金は溜まった。剣を見せてもらってもいいか」
「うむ。お主の剣を持ってくる。少し待っててくれ」
ドワーフの爺さんは工房に入っていきすぐに戻ってくる。
「これじゃ」
「これがアダマンタイトの武器か」
ディーンさんは剣を鞘から抜き出来を確かめている。
「さすが爺さんだな。いい出来だ。これでどんな魔物がきても問題ないぜ」
「それはよかった。儂は早速仕事に入らせてもらうぞ」
「よろしくお願いします」
邪魔にならないように鍛冶場を後にする。
「これからクロードはどうするんだ」
「欲しい素材があるのでそれを確保したら国に戻る予定です」
「そうか。依頼は確かに引き受けたから安心してくれ」
「それでは僕は失礼しますね」
ディーンと別れたクロードは街を出てグリフォンを呼び出して空の人となる。
目指すのは龍神湖と呼ばれる湖だ。
多くの龍と周辺には多数のリザードマンが生息している。
強力な龍とリザードマンの数があまりにも多く龍神湖の領有を主張している国家はなく何の気兼ねもなく素材集めに励めるというものだ。
龍神湖近くの湿地帯に降り立ったクロードは獲物を求めて足を進めていくのだった。




