七十六話
「クロードです。本日はよろしくお願いします」
「クロード様。本日は冒険者として登録にきたとのことですが間違いありませんか」
「僕のことをご存じなんですか」
様づけで対応に困っていないことでマッカランは確信する。
「クロード・フォン・プロミネンス様。侯爵家の三男で男爵に任じられておりますな」
「よくご存じで」
「神童として名高いですからな。冒険者組合は情報が命ですのでご容赦ください」
「貴族であることはできれば隠しておきたいのでここだけの話でお願いしますね」
「心得ました。能力値のことを考えればSランクですが規則でいきなり任命はできません。王都の支部に報告する必要はありますがAランクとして登録させていただこうと考えております」
低ランクでは受けられる依頼に制限がかかり入れるダンジョンも限られてくる。
目的地のダンジョンは難易度が高いのでこれはありがたい話だった。
「ありがとうございます」
「冒険者組合としては歓迎ですがどうしてまた登録に」
「素材の回収で他国のダンジョンや資源地に行く予定がありまして貴族の証明書以外に身分証が欲しかったんですよ」
「確かに友好国家ならまだしもそれ以外の国ではトラブルになる可能性もありますな」
「冒険者としてはあまり活躍できないかもしれませんがよろしくお願いしますね」
「いえ。いままでもプロミネンス家からの発注でかなりの利益をあげさせていただいておりますので」
クロードやネツァルが作った回復薬や処理に困った素材などで冒険者達は大いに助けられていた。
最近はクロードが大量に卸した素材の安全確保のために鍛冶屋の護衛として雇われたりアポロニアの建設のために大勢の冒険者が投入されている。
「それではカードを用意しますのでしばらくお待ちください」
マッカランは金庫にしまわれているAランク用のギルドカードを持って加工を行う魔道具の元まで出向き自ら加工を行うとすぐに組合長室に戻った。
「お待たせしました。こちらがギルドカードとなります」
金色に輝くカードにクロードの名前が入っている。
「ありがとうございます」
クロードは受け取ったギルドカードを懐にしまう。
「またのお越しをお待ちしております」
組合長には身分がバレてしまったが無事に身分証明書を手に入れてクロードは冒険者組合を後にした。
ギルドカードには特殊な加工が施されており冒険者組合に置かれた特殊な魔道具で詳細が確認できるようになっているのだがこれは役職持ちの組合員しか知らないことである。




