六百七十一話
クロードは兵士の先導の元、無事、生家に戻ってきた。
「クロード様。ご無事でよかった・・・」
領主館を守る衛士はそう言って泣いている。
「こうしてはいられません。お館様に知らせなければ」
そう言って走って行ってしまった。
「お前。好かれてるんだな」
「えぇ・・・。皆さんには随分と心配をかけてしまったようですね」
それも無理はない。
クロードの消息が絶たれて数か月経っているのだ。
口の悪い貴族の中には死亡説を唱える者もいたのだ。
「とにかく中に入りましょうか」
「そうだな」
クロードと建御雷神は屋敷の中に足を踏み入れる。
玄関に着くころには屋敷中の使用人が勢ぞろいしていた。
「クロード様。本当にご無事でよかったです」
「心配をおかけしました。父上は執務室かな?」
そこに足音を荒くかけてくる人がいた。
母であるリーシアだった。
「あぁ・・・。本当にクロードだわ。よかった無事で・・・」
リーシアはそう言ってクロードを抱きしめてくる。
「お母様・・・」
「ごめんなさいね。無事だとは思っていたけれど本当に心配したのよ」
「すみませんでした」
「それで、そちらの方は?」
「戦友の建御雷神です」
「建御雷神だ。世話になる」
「恥ずかしいところをお見せしました。うちの子がお世話になって・・・」
「いやいや。どちらかというとこちらが助けられましたので」
「あらあら。クロードらしいわね」
「お母様。そろそろ」
「そうね。遊びに帰ってきたわけではないのでしょう?貴方の成すことを成してきなさい」
「はい」
クロードと建御雷神は皆に見送られファイネルの執務室に向かった。
「父上。クロードです」
「入りなさい」
流石、侯爵というべきかファイネルは落ち着いていた。
「ご心配をおかけしました」
「いや。お前のことだ。必要なことだったのだろう?」
ロキを討伐することだけを考えた結果、世界から放逐された。
現状のこの世界のことを考えると本当にロキを討伐することが必要なことだったのかと言われると疑問が残る。
「いえ。自分の考え不足による起こるべくして起こったことです」
「そうか・・・。まぁ、反省しているようだし怒るのはやめておこう」
「それで、現状はどうなっていますか?」
「魔物の発生が多くなっている。騎士団をフル稼働させ新規に兵士を雇って対応しているがこれがいつまでも続くと破綻するだろう」
「根本をどうにかしなければならないですね」
「可能なのか?」
「その為に帰ってきたのです」
クロードと建御雷神は目線を交わし頷きあった。




