六百五十四話
「久しいな。クロード」
「お久しぶりです」
「異世界の状況が気になってるだろうと思って呼び出した」
「あちらはどうなっているんですか」
「端的に言うならオーディンの馬鹿が暴走した」
「えっ・・・」
「もう一度いうぞ。馬鹿が暴走した」
「いやいや、暴走って何をやらかしたんですか」
「神力を各地にばら撒き魔力を異常発生させて魔物の発生を促している」
「うわぁ・・・。迷惑な奴」
「既に力の弱い小国では滅んだ国もある」
「戦いが好きだとは知っていましたがそこまでするのか」
「奴にとって人も魔物も関係ないのだろう」
「おかげで俺らは大忙しさ」
「そうそう。少しでも被害を減らすために精霊達の割り振りとか大変なんだよ」
精霊達は魔力を運ぶ。
ただでさえ立て直しの最中だったのに今回の過剰供給で馬車馬のように働いているのだろう。
「どれぐらい持ちそうなんですか」
「正直、わからん。出来る限りのことはするが・・・」
「わかりました」
どうやら修行のペースを早めなければならないようだ。
「無理をするなといっても無理をするのだろうな」
「あはは。わかりますか」
「神であった頃からお主の根本は変わっておらん。どこまでも真面目で正義感の強さも」
確かに神の頃もそうだった。
他の神々の負担を少しでも軽くしたくて。
自分に出来ることがあるならと頑張りすぎてしまった。
その結果が休息の為の転生だ。
「あまり背負い込むものではない。我々もそうだが他の神々もお前が思っているほど弱くはないのだから」
「そうですね・・・」
クロードが転生して負担は増えたのだろうがそれでも世界はまわっていた。
クロードが考えていたよりも神々は強い存在だった。
「異世界に行く準備が出来たらここに来い。送り届けるぐらいはしてやろう」
「ありがとうございます」
正直、それが問題だった。
オーディンが張った結界をどうにかしなければならなかったが強引に押し通ればどのような被害を及ぼすか予想がつかなかった。
「それではそろそろ行くといい」
「はい」
クロードとフランソワは気が付けば迷いの森の外にいた。
精霊王が外まで運んでくれたのだろう。
クロードは狩りを続けていた精霊達を呼び戻して帰路についた。
道中、伝説の存在に出会えたとフランソワは上機嫌だった。
ロンドンに戻ったクロード達はホテルに戻ったのだがそれが新たな事件の幕開けだった。




