六百五十話
「お前さん。神の頃の記憶を取り戻してるんだろ」
「一部ですけどね」
「一部ねぇ。まぁ、それはいい。戦の準備をしているのに何故、俺に声をかけない」
声をかけなかったのには理由がある。
配下達を巻き込んだとはいえ、個人的な理由で最高神を巻き込むわけにはいかなかった。
「貴方程の人物を巻き込むわけにはいきませんよ」
「水臭いねぇ。同じ釜の飯を食った仲だろ」
それは事実である。
ダグザの好物は粥だ。
彼が戦場で作った粥を食べた回数は1度や2度ではない。
当時のクロードは食べられれば何でもいいという人物であり食にこだわりはなかった。
だが、今のクロードは料理が趣味であり食べるのも大好きである。
「はぁ・・・。なら、せめて遅れてこないでくださいね」
ダグザは戦場に遅れて参戦することも多かった。
その理由が粥を食べていた為、というのだから味方としては非常に迷惑な話だ。
だがその強さは折り紙付きだ。
「それで話は終わりですか」
「噂程度なんだがお前が料理にはまってるって話を聞いてな」
あぁ。
メインはそっちだったか。
「粥でいいんですよね」
「流石わかってるなぁ」
クロードは米を素早く研ぎそこに事前に入れて置いた緑茶を加えて煮込んでいく。
所謂、茶粥である。
漬物や梅干し、鮭などの付け合わせもつけておく。
「おぉ。はじめてみる粥だな」
イギリスというかヨーロッパで米を使った粥は珍しいだろう。
ましてや緑茶など日本特有のお茶だ。
ダグザはスプーンで粥を食べ始める。
「おぉ。新鮮な味だ。それにしょっぱいこれとかが味をリフレッシュさせてくれて美味い」
どうやら漬物や梅干しなども受け入れられたようだ。
しばらくおっさんが粥を食べる姿を見せられたわけだが・・・。
「ふぅ。美味かった」
「それはよかった」
「よかったらまた作ってくれ」
「わかりました」
レパートリーを増やすためにも食料集めをしなければ・・・。
まぁ、それは日本に帰ってからでも間に合うか。
「それではまた会いましょう」
「うむ。次は戦場でだな」
そう言ってクロードの意識は白に塗りつぶされていった。
「ぬぅ・・・。なんだか寝た気がしない」
軽く疲労を覚えながらもクロードが起床する。
オーディンの支配地域も近いため相当無理な呼び出しのされ方をしたのだろう。
「ふむ。軽く走ってくるか」
そう言ってクロードは着替えてホテルを後にした。




