六十四話
ファールハイトは親方から詳細を説明されて難しい顔をしていた。
買い集めてくるのは不可能だろう。
ということは全てクロードが狩ってきたものということだ。
「そんなに難しい顔をされて何か不手際がありましたか」
「いや。そちらは問題ない。作業を続けてくれ」
鍛冶屋を後にしたファールハイトは考え事をしながら屋敷に戻る。
クロードが強いのは知っている。
与えられた職務を果たそうとしているのもわかる。
だが兄として働きすぎな弟に何も思わないわけではない。
屋敷に戻ってきたファールハイトは使用人に父の場所を聞いて書斎にやってきていた。
「父様。また仕事ですか」
「話し合った結果を忘れないうちにまとめておこうと思ってな。で。何かわかったか」
「こちらがクロードが鍛冶屋に依頼を出したリストです」
ファイネルがリストを読みこんでいく。
「リザードマンの皮鎧に鉄製の武器とミスリルとオリハルコンの武器制作依頼か。集めるのが大変な物ばかりなのにこの数は凄いな」
「父様。感心してばかりもいられませんよ。どう見ても働きすぎです」
「誰に似たのやら」
「どうみても父様に似たとしか思えませんよ」
「親子だからなぁ。あははは」
「笑っている場合ですか。装備の搬入を手伝うために色々計画を立てていたのに台無しです」
「すまんすまん。だがこれは結果論だが悪いことではないだろう」
「これだけの品質でこの数があれば王宮からの覚えはめでたいでしょうね」
「短期間でこれだけの貢献をすれば陞爵も見えてくるだろう」
「ですがプロミネンス家が外聞を気にせず金を投入したと思われるでしょう」
「思いたい者には思わせておけばいい。冷静に考えて物流などを調べればうちがそんなことをしていないのは誰にでもわかる」
「それはそうですが」
「クロードは頑張っているのに素直に称賛されないのがそんなに悔しいか」
「悔しいですよ」
「クロードは強いし賢いが一人で生きていけるわけではないよ。困っていたり悪意にさらされたりすることもあるだろう。そんな時に寄り添ってやればいい。私達は家族なんだから」
「はい。父様。冷静さを欠きました」
「しばらくは仕事は私一人でやるからクロードに付き合ってやるといい」
「父様も忙しいのによろしいのですか」
「今までも一人だったからね。それに新しい街づくりが本格的に動き出したら嫌でも仕事をしてもらうことになる」
「そういうことでしたら。父様。ありがとうございます」
「うん。クロードのことを任せたよ」




