六百三十七話
休暇3日目。
クロードは周囲に誘われて山に来ていた。
周囲には子供達が多く集まり大人達の様子をうかがっている。
大人達は炭を起こしたり持ち込んだ肉が野菜の下準備をしている。
今日は普段仕事に忙しく構ってもらえない子供達を楽しませようとバーベキューの日なのだ。
子供達はいくつかのグループに別れて遊んでいる。
虫採りに夢中な子もいれば鬼ごっこに興じている子など実に様々だ。
クロードも準備を手伝おうとしたのだが遊んでていいと言われて現在に至る。
見た目は子供だが精神年齢は大人である為、遊んでていいと言われても実に困るのだが・・・。
そんなことを考えているとよく修行をしていたメンバーが周囲に集まっていた。
クロードは鬼ごっこに誘われた。
しかし、この鬼ごっこただの鬼ごっこではなかった。
持てる技術を総動員して対処しなければすぐに鬼になってしまう。
高度な駆け引き。
騙し合い。
そんなこともありクロードはいつの間にかこの鬼ごっこに夢中になっていた。
大人げないと思いつつも彼等と動き回るこの一時が楽しい。
熱が入りはじめたころ鬼ごっこの時間は終わってしまった。
バーベキューの準備が整ったのだ。
散々動き回った体に肉が美味しい。
肉ばかりを食べていたら野菜もねとサラダのたっぷり乗った皿を渡される。
次々に焼かれては消えていく肉。
大量にあった野菜と肉は全て子供達のお腹の中に納まった。
食後の最後に串にささったマシュマロが手渡される。
炭で焼いて食べるらしい。
焼くのはかなり難しいらしく失敗をしている子もいる。
クロードも挑戦してみたがこれが中々に難しい。
だが、熱々になったマシュマロはとても美味しかった。
楽しい宴はあっという間に終わり片づけをして撤収する。
確かな活力を得て明日からも頑張ろう。
そう思えた。
本社に戻ったクロードを出迎えてくれたのは見かけない美女だった。
艶やかな黒髪を後ろでまとめ神々しい雰囲気を感じる。
「うむ。元気そうでなによりじゃ」
「貴方は・・・」
「我が名は月詠。そなたを虚無空間からこの世界に導いたといえばわかるか」
クロ達から話は聞いていた。
虚無空間で精霊達に道を示し助けてくれた神がいたことを。
「貴方のおかげで助かりました。ありがとうございます」
「よいよい。わらわの頼みを1つ聞いてくれればの」
そういって月詠は笑うのだった。




